第110話 召喚獣バトル
コボルトに誘い出されたフリして逆に誘い出してやった訳ですが。
どうしよう。
と、言うのも、この直径10メートルの空間がコボルトで埋め尽くされているからだ。
俺が突然姿をくらませたせいで、コボルトたちがそれを探すためにでてきたんだけど。
いや、分かるけどこんなにぎゅうぎゅうになるまで出てこなくてもよくない?
1つの穴から5匹も6匹もワラワラと出てくるから途中から恐怖だったよ。
ギュウギュウすぎて俺が真ん中に立ってても分かんないでしょ?
すでにもう。
立つスペース無くて地面に降りれなくなって胴上げ状態のコボルトまでいて、さながらライブ会場です。
モッシュコボルトに、ダイブコボルトで盛り上がりも最高潮。
歌っちゃうよ?!アニソン熱唱しちゃうよ?
でも、怪我には気をつけてね。
キャキャキャウ!
天井の方で声がする。
あ、ライブのMC始まるよ!
みんな静かに!
ちがうか。
見上げると一回り大きいコボルトが俺の立っている場所を指さして叫んでいた。
あ、上から見れば一目瞭然だよね、
真ん中に不自然に空いた空間があるもの。
一斉に下からの視線が見えないはずの俺に集まる。
あ、バレた…。
一斉に俺に飛びつき、噛み付く。
あー、生きたまま食べるんだもんね。
全く歯が立ってないけど。
ふぅ…
大きく息を吸い
《グロァァァァアア!》
ドラゴンロア。
そして、一瞬の静寂。
キキィーー!
いきなりの爆音にライブ会場は大パニック。
みんな慌てて穴の中へ…。
しかし、壁が滑って登れない。
それどころか、穴も無くなっていた。
へへ、こっそりストーンウォールで壁を覆っておいたのさー。
成す術の無くなったコボルトたちに残された道はひとつだった。
さよならコボルト…。
おびき出し一網打尽に成功した俺は、気分よく先に進んだ。
そう言えば、コボルト達が出てきた穴の中はどうなってるんだろう。
コボルト1匹がやっと通れる狭さじゃ、
フォレストシーカーでは入れないから、
後でコボルトサイズのクローンを作って
潜ってみよう。
広い空間はここだけのようで、
あとは通路が迷路のように繋がっていた。
所々にコボルトが数匹纏まっていたが
それだけだった。
そして、
「縦穴だ。」
ここを抜けると第二階層だな。
基本的に構造は1階と変わらなかったが、
コボルトナイトコボルトメイジが、
4、5匹のパーティを組んで襲いかかってきた。
コボルトは魔法が得意のようで、
ナイトと名が付いたコボルトも
メインの攻撃は魔法だった。
えっと、まあ、大したこと無かったけど。
難なく第二、第三階層を突破して、最奥。
コボルトキング
…見た目こそコボルトと大差ないが、
比べ物にならないほどの膨大な魔力と
魔法知識を持つ。
だって。
思うんだけどさ。
魔物ってどうやって魔法を覚えるんだろうね。
不思議です。
「ほう、ゴブリン以外の客とは珍しい。
だが、我が巣を荒らして、
タダで済むと思うな!」
わー、ご立腹。
「我が魔道の餌食にしてくれる!
大地の屍の怨嗟を贄とし、
怒りと暴力を司り
我に従い敵を滅ぼせ!」
『タイタン!』
呪文と共に浮かび上がった魔法陣を引き裂き、5メートルを超える巨人が姿を現した。その体には、大地の力がみなぎっていた。
わーっ!召喚魔法だ!
カッケーカッケー!
コボルトキングの怒りをよそに大はしゃぎの俺。
…あれ、
何故か中腰のタイタンさん。
天井低すぎたね。
ダンジョンマスター。
設定ミスです。
今までも何回も召喚してきたはずだよね。
そういうとこ、気にならなかったんだろうか。
召喚された時若干勢い余って天井に頭ぶつけてたしね。
天井からパラパラって、瓦礫落ちてきた。
窮屈そうですね。
なんか白けちゃう…。
そうだ!
こっちもなにか召喚しよう!
召喚獣バトルだ!
なにがいいかな?
「森羅万象を悠久より眺めし
直ぐな瞳でその審判を下せ」
『エクスデス』
大地がひび割れ、ひとつの双葉が芽吹く。
瞬く間に大きくなったそれは
太く大きな大樹となり天井を突き破る。
そして、大樹の中心部が輝き開くと
そこには青白い色の衣を纏った
2mを超える大男が鎮座していた。
大男は悠然と立ち上がるとこちらを一瞥し
タイタンに向き直る。
おう…。
かっくいーーー……。
我ながら素晴らしいものを召喚してしまった。
『そなたは我に何を捧げる?』
そうか、召喚と引き換えになにか捧げなきゃ行けないのか?!
えっと、えっと、そこまで考えてなかったぞ…
『…ほう、真理を持つものか。』
そうだ、真理、探究心だ!
「あ、飽くなき探究心を捧げます!」
『よかろう、我が力見届けるがいい
樹霊刀ウプサラの力を。』
エクスデスが召喚された時の大樹に手を添えると、それは収束を始め、一振のシンプルな剣になった。
簡素な飾り気のないただの剣だったが、それは底知れない力を秘めているように見えた。
なんかさ、とてつもないもの召喚しちゃってない?
めっちゃ魔力吸い上げられてる気がするし、
『うん、心地の良い魔力だ。
よく澄んだ澱みのない、
そうか、こちらの世界の世界樹の力か。
どうりでウプサラが喜んでいる。』
どうやら召喚獣さんはこちらの世界のモノではないらしい。
『どれ、それではこの力、試してみるか?』
「はい、お願いします。」
すると、様子を伺っていたタイタンが仕掛けてきた。
構えをとり、迎え撃つエクスデス。
その佇まいはまさに大樹のように悠然としていた。
スルリ……
その流れるような動きはまるでスローモーションのようにすら見える。
しかしそれは刹那。
言うなれば走馬灯のよう。
タイタンは、両断されていた。
『この程度か。
あくびが出るな。退屈凌ぎにもならん。
次はもう少し手応えのある相手をたのむ。
そなたの魔力は心地よい。
また呼ぶがいい、いつでも力になろう。』
そう言うとエクスデスは光の粒になり消えていった。
うん、予想の遥か上をいくものを召喚しちゃったね。
これはいざと言う時のために取っておこう。
おいそれと召喚しちゃいけないもののような気がする。
さすが、ラスボス。
そして、コボルトキング、ポカーン。
サクッと、止めを刺して、ダンジョン攻略完了。
そして、もれなくダンジョンマスターになったけど、ここゴブリンたちの訓練場なんだよね。
勝手に改造するのは良くないから、後でゴブ夫さんと相談して拡張しよう。
外に出ると相変わらず薄暗かった。
瘴気のせいで昼なのか夜なのか全く分からない。
なんでここはこんなに魔力が濃いんだろう。
この瘴気はどこからやってくるのか。
そんな事を考えながら探索を再開するが、
あっと、
ここから先は入っちゃいけないと、
ゴブ夫さんに念を押されてた。
マディの聖域。
マディが住まう不可侵の地。
何者も入ることを許されず、
それは、ゴブリンもサイクロプスも、飢餓状態のグラトニアロプスでさえも避ける場所。
「ここがそうか。
行ってみればすぐ分かると
言っていたけど、なるほど」
その先には草木1本生えていない。
殺風景な荒地が広がっていた。
誤字報告ありがとうございます。
助かります。




