表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/231

第108話 名付け

半人前のゴブリンレンジャーがゴブリンエンペラーから名を授かってパワーアップしたっぽいんですが。


光ってたしね。

変身するかと思ってかなりワクワクしたけど、そんなことは無かったり。


姿をくらませたザンと呼ばれたゴブリンレンジャー。


気が付くと、


あら、いつの間にか瘴気が立ち込めている。


ズゥン…。


そしてまた、グラトニアロプスが倒れた。

しかし、今度はすぐに立ち上がる様子はない。

立ち上がろうともがいてはいるようだが。


よく見ると紫色の糸がグラトニアロプスの両手両足を地面に縛り付けていた。


プツリ。


しかしあっさりとその糸は断ち切られグラトニアロプスが立ち上がる。


「やっぱりあの程度の瘴気を練った糸じゃこんなもんか。」


どうやらあれはザンが瘴気を錬成し作り上げた糸のようだ。


「いや、十分だ。」


立ち上がれず、モタモタしている間にグラトニアロプスに近付いていたエンペラーが掴みかかり完全に動きを封じた。


その後、グラトニアロプスは、大人しくなり元の醜い姿に戻った。

拘束具を着けられた大きなサイクロプスは抵抗する様子もない。


「パワーでは負けんのだがな。

 ワシのスピードではこやつを捕まえられん。

 良い働きだ、ザン。」


「いえ、まだまだです。

 今まで迷惑かけた分、

 これからみんなにしっかり

 返していかないと。」


「ガハハハハハハハハハハハァ!

 よいのぉ、若者が成長してゆく姿というのは!」


エンペラーはとても嬉しそうに笑っていた。

しかし、真顔に戻り。


「さて、どうしたもんかな。

 このまま森へ帰してまた眠りにつくのを待つか。

それとも…。」


このまま葬るという選択肢はないのだろうか?

だってまた襲ってくるんじゃ?


「なんで倒さないんですか?」


「なんだ、姿無き者よ。

 隠れていた訳では無いのか?」


あ、思わず声に出してしまった。


「あ、いや、そういう訳では。

 気づいてたんですね。」


「こう見えて、感は鋭いからな。

 だから、敵意がないのもわかる。」


よかった、話が通じそうな相手だ。


「ザンをこの場へ導き、

 アグルを救ったのもお主であろう。

 逆に感謝せねばなるまい。」


「いえ、大したことはしてません。

 頑張ったのはあそこの2人ですから。」


ザンは、さっきまでボロボロだったはずのピンピンしたアグルの姿をみて、マディ様の御加護だとさわいでいた。アグルもアグルで、神妙な面持ちでこちらに祈りを捧げている。


「何やら、勘違いをしているようだがな。」


「あれ、ちゃんと説明しないと。

 マディ様なんかじゃないですし。

 そもそもマディ様ってなんですか?」


「マディ様とは、この地を治める神で、

 我等の産みの親。

 地母神であり、戦神だ。」


ちなみにサイクロプスたちの生みの親でもあるそうで、しかしサイクロプスたちはいつの頃からか信仰を忘れ、ゴブリンたちを襲うようになったそうだ。


「で、今の対立関係が生まれたんですね。」


「いや、対立は元からだ、

 マディ様は戦神。

 我らが争い、競い合い成長していく事を

 心から楽しんでおられた。

 しかし命を奪い合うことまでは

 しなかった。」


争いが激しくなり、命の危険が及ぶと、マディ様が仲裁に入り、争いを収めていたそうだが、いつの頃からか姿を現さなくなったと言う。

その後、グラトニアロプスが現れ、ゴブリンたちを絶滅寸前まで追い詰めたそうだ。

生き残ったゴブリンたちは、逃げ隠れながら仲間を集め、成長を続け、長年をかけてやっとグラトニアロプスを退けるまでになったのだそうだ。


「そうだ、なぜ倒さないのか。

 であったな。」


「その怪力で抑え込むことが出来るのであれば、倒すことも容易いのでは?」


「そうであれば良かったのだがな。

 こやつが厄介なのは、痛めつければ痛めつけるほど凶暴化し、腹が減れば減るほど貪欲に獲物に執着する。」


……。


「納得しておらんな?

 ではどうする。

 首を切るか?

 丸焼きにするか?

 切り刻むか?

 それを試さなかったと思うか?

 あやつの生命力は恐ろしい。

 もはや不死身だ。」


何度もグラトニアロプスを倒そうと試みたけど、その度に全滅させかけられたのだそうだ。

致命の一撃を受け極限状態になる。そして極限状態になることでエネルギーを消耗し飢餓も進む。見境がなくなり、ゴブリンだけでなくサイクロプスの側にも甚大な被害をもたらしたそうだ。


「じゃあ、何を悩んでるんですか?」


「うむ、それなんだが…。」


「王。グラトニアが眠りにつきました。

 しばらくは目覚めないと思いますが、

どうしましょう?」


ゴブリンエンペラーに付き添ってきた側近みたいなムキムキのゴブリンが尋ねる。


「うむ。今回は幸い被害も少なく済んだ、

 ザンの成長も見届けられたし、

 わざわざ危険を冒す必要もあるまい。」


「かしこまりました。

 では、拘束具をつけたまま

 森の奥へ放ちましょう。」


「うむ、頼んだぞ。

 くれぐれも奴らの襲撃には気を付けてな。」


「はい。」


そう言うと、何体かのムキムキゴブリン達で移動させる準備を始めた。


「諸刃の剣ですね。」


グラトニアロプスは基本的には同族は襲わない。つまり餌はゴブリンだ。

しかし一旦飢餓状態になると見境がなくなる。グラトニアロプスを飢餓状態でサイクロプスの群れの中に放つと共食いを始めるわけだ。


「そういう事だ。」


エンペラーは一瞬ギョッとした顔をした。

しかしすぐ笑顔になり、


「こちらとしても利用価値がある。

 だから余計に厄介なのだ。」


グラトニアロプスの暴走によって両者に被害があったのは、単に見境が無くなったのではなく、ゴブリンを囮にして、サイクロプスの住処までグラトニアロプスを誘導したからだろう。


無理に倒そうとして全滅するより、定期的にゴブリンを与え管理するか、利用した方がいいのかも知れない。


「そうだお客人。」


いつの間にかお客さん扱いになってる。


「なにか礼をしなくてはなるまいな。」


「礼だなんてそんな。

 そうだ。この森を探索したいんですけど、

 ダンジョンとか、何か情報はありますか?」


て言うか、礼節をもって対応してくれる相手に姿をくらませたままは失礼だよね。


同化を解く。


「ほう、想像とは全く違う姿をしておった。

 なんという洗練されたエネルギーの塊。」


「すいません、王様の前で姿も見せずに。」


「ははは、そんな堅苦しいことは無し!

 実力では圧倒的にそなたの方が上だ。

 精霊か、はたまた神か。

 あの者たちが、マディ様と勘違いしたのも分かる。」


あー、精霊でも、神でもなく、魔王ですよ…。


「はは、そんなんじゃないですよ。

 これは俺のスキルで作りだした分身です。」


「なんと!

 分身でこのエネルギー量とは。

 本体はどれほどのものなのか?」


あ、そういう話になりますよね。

何と言うか、クローンの方が優秀です。

期待に応えれなくてごめんなさい。


「おっと、すまぬ。

 情報が欲しいのであったな。

 もちろん探索は自由にしてもらって構わん。

 だが出来ればゴブリンにも、

 サイクロプスにも手を出さないで

 貰えると助かる。」


「分かりました。

 こっそりと邪魔しないようにやります。」


「理解が早くて助かる。

 しかし感が良いものもおる、

 あそこのレンジャー達の様にな。

 こちらからも伝えておくが、

 上手くやってもらえるか?」


「大丈夫です。」


同化に加え、隠密、隠形を発動する。


「何と、そこにまだおられるのかな?」


「はい。」


姿を現し、スマイル。


「……。」


あれ?固まった。

あ!またやっちまった!


「まさか、それが真の御姿!

 そうとは知らずに、王などと偉そうに。

 この無礼な振る舞いをお許しください。」


急にかしこまっちゃったよ…。

お願いだからさっきまでの威風堂々でいて。


「無し無し無し!

 今の無しで!」


「何お仰います。

 どこの魔王様かもわからぬ

 無知な我らをお許しください。

 どうか一族の命だけは……。」


「そんなつもりないですから!

 ただ探索したいだけですから!」


やっぱり無意識のスマイルが、1番効くみたい。悲しいけど。

なんか分かんないけどすごい効果があるんだよな。気を付けなきゃ。


という訳でゴブリンたちの全面協力を得ることが出来ましたとさ。


めでたしめでたし?


……


泣いてもいいですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ