第106話 森のイケメンゴブリン
生まれたてのサイクロプスベイビー達と
戯れていたわけですが。
最近よくやっている遊びは、
いないいないばぁ。
ではなく、いないいないいなーい、
ドン!
である。
そんな理不尽な死亡遊戯をしていた
バチが当たったのでしょうか?
目の前には、一回りも大きいサイクロプスが6体。
筋肉ムキムキ、血管モリモリの
明らかにやばい奴らだ。
鬼やばサイクロプスだ!
もしかして、保護者の方ですか?
モンスターのペアレントですか?
鬼ヤバモンペは俺にどんどん迫ってきた。
うわーめっちゃ近い。
俺は2メートル越えの鬼ヤバモンペを見上げるだけです。
ヤバモンは、拳を振り上げいきなり殴りかかってきた。
ドゴンッ!
ヤバモンの拳は俺の頭上をかすめサイクロプスにクリティカルヒットした!
殴られたサイクロプスは、暴走トラックに跳ねられたかのように弾き飛ばされた。
そしてピクリとも動かなくなった。
そういや俺もトラックに跳ねられた時
あんな感じだったのかな……。
よく思い出せない……。
暴走トラックの前に飛び出して……。
飛び出した?!
俺が?
あれ?
歩道にだれかいる?
こっちを見てる。
知り合い、かな?
誰だっけ?
……カタカタカタカタカタ……。
何かが細かくぶつかる音に我に返る。
気がつくと、俺は奥歯を鳴らし震えていた。
恐怖心?
死の恐怖なのか、それとも別の……。
轢かれる間際。
歩道に立ちこちらを見つめていた
誰かの姿がよぎる。
…いやいや。
今はその事より、目の前の事だ。
サイクロプスは、岩に身体を強く打ちつけられ、絶命していた。
弱い者をいたぶりニタニタと笑うヤバモンたち。
仲間をやられ、
怒り狂うサイクロプスたち。
ま、まあ。
元々躱して同士討ちを狙う作戦だった訳ですが、
なにか?
俺の言い訳をよそに、
それを合図に激しくぶつかり合う、
サイクロプスたち。
あれ?
仲間割れ?
やめてぇ!私のために、争わないでー!
あ、私の姿、見えてなかったですね。
俺のハラハラドキドキをよそに、
サイクロプス同士でやりあっている。
が、
力の差は歴然。
ヤバモンたちが力を見せつけるようにいたぶり、
屈服したサイクロプス達を1箇所に集めている。
どうやら殺戮が目的じゃないみたいだな。
あっという間に1箇所に集められた
サイクロプスたち。
ヤバモンは暴れ足りないのか、
時々うめくサイクロプスを殴ったり
踏みつけたりしている。
それにしてもさっきから辺りを
異常なほど警戒しているな。
さらに強い魔物でもいるんだろうか。
1箇所に集めたのはいいけど、
その後、全く動く気配がない。
何かを待っているのか?
あ、索敵に反応あり。
何か来た。
四体か。
いや、遠方、別方向からも一体。
あ、そっちは止まった。
これ以上こちらに近付いて来る気配はない。
ずーん。
音のするほうを見ると、
突然倒れる一体のヤバモン。
首に致命の一撃をもらったようだ。
見えない奇襲に警戒を強めるヤバモンたち。
しかし、
グガァー!ギャゥ!
ギャッ!
警戒していたはずなのに、
足を切られ、背を斬られ、
首を斬られ、二体目が絶命する。
その後は、あっという間だった。
最後のヤバモンは、なりふり構わず暴れ回っていたが、
隙を突かれ苦しむ間もなく絶命した。
そして姿を現したのは、4体のゴブリン?
ゴブリンにしてはすらっと背も高く
体も引き締まっていて、
顔立ちも整っている。
髪の毛は後ろで1つに束ねられ、
うん、イケメンです。
肌の色はゴブリンより少し濃い緑色、
鼻もやや鷲鼻、それに尖った耳。
間違いなくゴブリンです。
むっちゃ強いけど。
ゴブリンレンジャー、か。
自分たちを簡単に捻ったサイクロプスを
さらに簡単に倒してしまう存在に、
息もできないほどのプレッシャーを受ける
ベビーちゃんたち。
生まれたばっかりなのに、
これが弱肉強食。自然て厳しいね。
四方から取り囲まれ、なす術も無く蹲っている。
すると、
ギャゥギャゥ!
遠くから威勢のいい掛け声が聞こえる。
徐々に近づき、緑色の姿が見える。
あれは、ゴブリンだな。
今度は、ど・ノーマル。
何の変哲もないゴブリン達が、60体。
やる気を漲らせ、こちらに近づいてくる。
ゴブリン達は長槍を持ち2列にずれて隊列を組んだ。
まさか、この長槍ゴブリン達とサイクロプスが戦うのか?
ゴブリンとサイクロプスを比べると
まるで巨漢レスラーと小学一年生だ。
いくら武器を持って、数で優っていてもさすがに無理でしょ。
そのまま様子をうかがっていると、
長槍ゴブリンのいる方向の包囲が解かれる。
自分たちを鼓舞するように、さらに激しく叫び出すゴブリン達。
サイクロプスも、そこに生き長らえる道を見出し、
包囲するゴブリンレンジャーを警戒しながら
促されるように戦いへと足を向ける。
なぜなら刺し違えてでもゴブリンたちを突破し、
逃げ出すしかないのだから。
ジリジリと距離を詰める長槍ゴブリン。
と、
堪えきれなくなった1体のサイクロプスが飛び掛る。
そこにすかさず突き出された長槍が
サイクロプスに何度も突き刺さる。
そして、
グガァー!
大きな一ッ目にヒットした!
のたうち回るところにさらに追撃が…。
やがてサイクロプスは動かなくなった。
それをただ見つめる他のサイクロプス達。
今の隙に全員で襲いかかれば突破出来たろうに。
そこまでの頭も無いか。
いや、包囲のプレッシャーだ。
サイクロプスたちは左右を警戒しながら、
二の足を踏んでいたんだ。
ゴブリンたちが詰め寄り、次々と槍を突きだす。
サイクロプスも反撃を試みるが
ゴブリンたちの勢いに飲まれ上手く抵抗できないでいる。
が、徐々に距離が詰まり、サイクロプスの反撃が始まる。
サイクロプスの振り回す拳に
簡単に吹き飛ばされるゴブリン達。
サイクロプスの一撃によって
何体かは既に絶命しているようだ。
やっぱりサイクロプスとゴブリンじゃ地力が違いすぎる。
「剣をぬけ!」
見守っていたゴブリンレンジャーが叫ぶ。
するとゴブリン達は、一斉に腰に下げていた剣を抜く。
数の差はすでに4倍まで開いていた。
しかも、サイクロプスは相当ダメージを受けている。
ゴブリン達の斬撃に次々と倒れるサイクロプス。
そしてサイクロプスは
あっさりとゴブリンたちに全滅させられた。
サイクロプス達を倒した自信からか
ゴブリン達が若干逞しく見える。
そりゃ格上を倒したんだからもっともだ。
そしてゴブリン達はなんと、
倒したサイクロプスを一心不乱に喰らい始めた。
わー、大自然。
「戦の子よマディ様の胎へ還るのだ。」
サイクロプスを喰らうゴブリンの横で
犠牲になったゴブリン達を弔うレンジャー達。
「ゴブリン達が予定の半分しか揃わなかった事は誤算だったが、
何とか無事役目は果たせたな。」
「ああ、もう片方の胎は既に全滅だったからな。」
「しかしあのゴブリン達の殺され方は異常だ。
急所を貫かれ絶命していた。
サイクロプス達にあんな技があるとは思えんが、
いずれにしても悪い予感しかしない。」
あ、それ俺がやった奴だな。
もしかしてまずいことしちゃった?
「ああ、長に報告せねばなるまいな。」
あんまり大事にしないで。
ね、お願いだから秘密にしといて。
ココだけの話にして。
「われらも食事と行きたいところだが。
どうやらそうもいかない様だな。」
「大した相手でなければいいが、
グラントロプスが出てくると少し分が悪いか。」
「たしかにな、メガロプスで苦戦していたお前には分が悪いかもな。」
「な、あれは予想以上に外皮が硬かっただけで、
油断さえしなければあんな相手…。」
「だからお前はいつまでたっても半人前なのだ、
早く長に認められて名を頂け。」
「くっ、自分が先に名を頂いたからと言って
いい気になるなよ。
あいつを倒して長に認めてもらう!
誰も手を出すな。」
「言っているそばからこれだ、
少し痛い目を見たほうがいい。
しばらく誰も手を出すな。」
黙っていた他のゴブリン達も
腕組みをしてあきれ顔だ。
てかゴブリン達めっちゃ喋るな!
話を聞いていると、
ゴブリンとサイクロプスは対立してるみたいだ。
ゴブリンは仲間を弔っていたし、知的なのかもしれない。
サイクロプスはそれに対してかなり野蛮な印象だ。
ゴブリンとなら争わずに
話し合いで探索させてくれるかもしれないな。
様子を見て長に会ってみてもいいかもしれない。
ゴブリンレンジャー達は東へ移動し始めた。
そっちはさっき索敵で一体の魔物がいる場所だ。
ゴブリン達も分かっているようでそこに向かっている。
「ぐあっ!」
ゴブリンが横をすり抜け吹き飛んでいく。
さっきの半人前って言われてたゴブリンだ。
「まずい、おい、長に報告だ。
ゴブリン達は、仕方ない諦めよう。
とりあえず引くぞ。」
「あいつはどうする?」
「ほっておけ、制止を振り切り一人で突っ込むからだ。
とにかくお前は先に行け、応援を頼むんだ。」
「わかった。お前は?」
「少しでも体勢を整える時間が欲しい。
どこまで出来るか分からないが足止めをする。」
「死ぬなよ。」
「あぁ…。」
二体のゴブリンレンジャーは音も無く森の中へ消えていった。
「まさか、大喰らいが出てくるとはな。
死体の匂いに誘われて出て来たか…。
時間が無かったとはいえ、
やはり先に片付けておくべきだったな。」
そこにはさっき俺が倒したゴブリン達を
たいらげ続ける丸々と太った
5mはあろうかと言う巨大な一ッ目がいた。




