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王伝編集官   作者: 卵星店長(代理)
8章 闇鍋とドロボー

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王伝編集官 56話

 きゅぅう?


 あざとい。首をかしげてさも「ボクなにかわるいことした?」ぽい顔して。だまされませんよ。


 ・・・


 そう思いながらも、今現在ボクは逆らえない。このかわいい顔をしたドロボーさんに。




 穏やかな帰国の行程は終盤に差しかかり、交代で御者をしていたテラとサフィ、ミレーナも眠っていた時の事だった。なにげなくアクアが疑問をぶつけてきた。みんなで話していたとき聞かなかった気配りさんだけど、僕が決して振らなかった話題なんだよね。


「ねぇリノ君、聞いていいのかな。向こうでは全然一緒でなかったけど何してたの?」


  主にミアやったりミアだったりミアしてたっけ。口止めされた訳じゃないけど、なんとなく言えない。そういう微妙さがわかってるのか、アクアも気にすることなく話をつづける。


「お土産とか買えた?私は貯金も含めてほぼ使い切ったよ。花祭りのときはお小遣い前借りしないとかなぁ」


 明るく言いながら紙袋を取り出す。僕も買ったけど時間詰めてたからすぐ忘れたし。リストを改めて眺めながら確認してみよう。


「・・・んー、まずウィスキー5樽」


「たる?それお土産?なんていうか・・・」


「仕入れなら100とかでしょ」


 そこに論点もってくるのかとアクアは突っ込まなかった。本人が納得済みならいいと思う。あと燻製サーモンとかアラスティの名産がずらり。だれに頼まれたとか考えなくていいんだ。


「最期は母と姉の好きなマロングラッセ。これ割れたのを特売大袋で売ってるからみんなで食べようと思って買ってきたよ」


「これ見た目地味だけど高いんだよねぇ。テラの家でもたまにしか見ないし」


 アクアは苦笑いしながら差しだした袋から一欠けら摘むとしげしげ眺めた。アンナさん家で出たおやつも焼き栗だったからねぇ。2人でうっとりと幸福の欠けらをほお張るも「あ、これって・・・」少しの間の後にとてもすばらしい提案をしてきた。


「これみんなで食べるよりメイリアに渡したほうが色々作ってくれそうじゃない?」


 おーナイスだよアクア。よし、そうしよう。袋を抱えて小躍りするだろう姿が想像できた2人は同時ににやにやしてハイタッチ。ふふ、たのしみー


「アクアこそ、『それ』そんなにたくさん必要なんだね」 


 『それ』はアクアの膝の上。色とりどりの端切れたち。平均50cm四方の布だ。花柄・チェック柄・無地に加え野菜や動物柄なんかもある。色彩も赤からピンク黄色や青も灰も黒も。とにかくいっぱい。聞かれたアクアさん、小さくため息のち空遠く眺めてぼんやり


「これって終わりがないの・・・」


 この布たちはパッチワーク用だそうだ。最初は編み物や刺繍と同じで作りたいものがあって材料をそろえたらしい。そのうち手持ちの生地だけでは色や模様を作るのに物足りなくなり、いつ使うか決めないまま集めだしたんだって。そう、生地集め?とは「まるで底なし沼よね」とつぶやく横顔には決意なんだか諦めだかが漂ってた。作るために集めたはずがいつのまにか集めるのが目的になるとは・・・・


「でもそれも楽しいんだよね」


 そう言って笑うアクアにある人物の言葉を思い出す。同意だからね。 


「前にテラが言ってたんだけど」


「ん?」


「アクアといるとほっとするんだって」


「ぅぇ!テラってばなに言ってくれちゃうの」


 明らかにうろたえ顔が赤くなった。そしてうれしそうにもじもじしてる。そんなアクアを見て僕も思わず口走った。


「僕もわかるなぁ。アクアかわいい」


 そのとたんアクアからすとんと表情が消え落ちた。なんかこわいです、アクアさん。僕へんなこと言った?


「リノ君。いいえリノリス。あなたこの先絶対女の子に「かわいい」って言ったらだめだから。私でさえこんなダメージ受けるなんて・・・」


 は?まってまっていやいやいや、そもそもだれかれかまわず言わないよ!今度は僕が大いに動揺しまくった。


 スィーーーーーーーーーーーーーー


 そこを狙ったかのように影が頭上をかすめた。斜めうしろから飛来した『それ』はうろたえたアクアが小袋から取り出していた木彫りのドングリボタンを華麗に盗んだのだ。


「あ」


 ヒューーーーーーーーーーーーー ボフ くるくるくるくる べちゃ


 「「・・・・・・」」


 逃げ切られたかに見えた『それ』はこれまた背後から飛んできた物体により撃墜された。振り向くとテラが寝返りをしながら小石を投げつけたのだった。自動迎撃システムは完璧だ。


 僕はカピリーさんに止まってもらいアクアがボタンと『それ』を回収してきた。

 

 疑問だらけの顔でアクアが言う。


「リノ君、この子の首についてるのって・・・・」


 そうだね。


 毎日見てるんだし。


 僕もつけてるし。


 目をまわしている『それ』の外見は広げた毛皮。まぁ、害のない動物?だけど、普通でもない。魔物や魔獣に変異種ができるように通常の生物にも似たのがいる。それは特殊変異個体(特異体)と呼ばれ、寿命が長かったり知能が高かったりする。そしてやたらと人に関わりをもちたがるそうです。ルシネイラで有名なのが建国時からいるモモンガの特異体。彼は当時からある機関に在籍し、その機動性を活かし情報収集の任務をしていますね。


「ほら先輩。寝たふりしてないで起きてくださいよ」


 


 

 こうして生地コレクションは果てしなく増えるのです。


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