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王伝編集官   作者: 卵星店長(代理)
7章 氷ごりです

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王伝編集官 53話

「あたしたちも参加させてもらってもいいかい?」


振り向くとさっきまで楽しげにお茶をしていたご婦人達が真剣な顔をしてこちらを見つめていた。僕とフェルクさんの会話をそれとなく聞いていたらしい。ひそひそ話していたわけではないので聞かずとも聞こえただろうけど。いえ、むしろ聞いてくださいなのです。


 そう、これはまだほんの一滴で始まりといえる。ラディ王子は無機質な器を用意するのではなく、近づけば自然と引き寄せられる水のような繋ぎ目がない世であることを願っている。もちろん、この僕リノリスも全力でついていきますとも。ただ、ずらっと並ぶご婦人方の半端ない眼力が僕をひるませるんです。ちらりと隣のフェルクさんを見ると、


「ええ、こちらからもお願いします。うちの商会からも人を出しますので食材はもっていきますよ」


 完璧な営業スマイルです。それだけで女性陣をまとめられるのだから一種の『魅了』ではなかろうか。彼の御実家アロアリア商会、かつてアロウスという王族が妻アリアと起こしたのがはじまりということなのでそれもありでしょう。どこの王族でもその血筋には「王印」に準ずる資質が出やすいものです。ちなみに似ているようでまったくちがうのは僕の資質。一部の女性の特殊性癖を刺激するという・・・おかげでラディ王子との『共有』でも防ぎきれないので研究院には近寄れませんが。


 そして僕がほんの少し現実逃避してる間に話はどどんと進んでます。自己紹介と今回の宴会が新国に向けた移住者のための婚活であると伝えたところ、周囲の空気が一変したのが現在という次第です。フェルクさんはメモ用紙を取り出しすばやく何かを書きとめ半分に折った。それを指2本ではさんで振ると紙はふわっと溶けるように消えた。メモをすばやく目的地に届けるそれは商人ご用達の品。売りは「安くて早い」ですっ。


「ディー、夕飯何食べたい?」


「ん、パスタ」


「わかった、後で届けるよ。それと、幻獣様も召し上がりますよね」


「うむ、いただこう」


 いつのまにやらスーちゃんは第1部隊のディナリィさんに餌付けされていた。しかも帰らないと言ったし。これってさっきの話に関係あるのかな。僕がおごった礼をしようと言い、その内容が


「んむ、我の昔話でもしよう、それは我が卵であったころで・・・・・・・・」


 あ、なんかやな予感。


「あの、ちなみにどういったジャンルです?」


「ふーむ、大人向けの悲恋ものといったとこかの」 


 ストーーーーーップ。すみませーん。また今度でお願いします。


「いいのか?欲がないのぅ」


 僕はまだ子供です、自主規制です。 




 そうこうしてるうちになぜか僕は今イカを手にしています。


 ?


 うーん、なぜと聞かれても困るのですよ。ここにイカがあるからです。


「じゃぁ、まずはイカから片付けようか。各屋台から一人づつ呼んできてくれる?」


 そう言われたのは学生さん。おとなしそうな彼が呼びに行った間にフェルクさんはエプロンを身に付けた。ん?これって・・・・ちら視するまでもなくいろいろツイテル。見た目はシンプルな黒のストレートタイプ。腰位置に両ポケット。までは普通。胸の位置に斜めに5本づつスティックタイプの調味料入れが収まっています。この辺も納得。でもこの先はやりすぎ感が。


 まず、エプロン自体に『自動洗浄』が付いていてポケットには『空間収納』。極めつけが調味料入れがエプロンに戻されると『空間収納』から発動される『自動補充』。これだけの事をする人を僕は一人しか心あたりがございません。


「ん?このエプロンかい?次兄が卒業祝いにって」


 はい、確定。スティークさんはアロアリア商会のルシネイラ支店で日ごろお世話になってます。さっぱり似ていないので気がつきませんでしたよ。フェルクさんとちがって「武」寄りだからでしょう。よく城に来ては騎士さん達の訓練に参加してましたからねぇ。彼いわく


「ルシネイラは手ごたえのある魔獣がいなくて訛るんだよな」


とのこと。商人さんなのにね。今回は長男のセオシール氏には会ってませんが3人とも似てないのでしょうかね。え?イカ?皮剥きしてますよ、ちゃんと。フェルクさんがお手本に見せてくれた技を『再現』できますし。半解凍のイカが苦もなくするするむけちゃうんです。気持ちいい、くせになりそ。


「すごいね。一度視ただけで僕のやり方再現できるんだ。リノリス君、僕の助手にならないかい?」


 周囲の学生さんたちが「ぎゃー、穴あいたー」「やーん、ちぎれるー」とか四苦八苦してるからでしょう。本来皮と身のあいだに魔力をまとわせていっきにむくのですが、かなり繊細な加減です。過分なお褒めでしたが、この言葉が後に試練をもたらすとか思いませんよネェ・・・




「ちょっとリノ君!私を差し置いてフェル様に勧誘されたんですって~~~~」

 


 

 暑さで溶けていましたが、ようやく復活いたしました。


 彼はすでにワイロを納品済みでした。ほしいです。なにがってエプロン付けたフェル様。

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