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王伝編集官   作者: 卵星店長(代理)
7章 氷ごりです

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王伝編集官 51話

 頭が重い。だが風邪でない。幻聴が聞こえる。でも気がおかしくなった訳でもない。ただ憂鬱なのだ。頭上から聞こえる幻聴ではない声の内容が。


「ぜんぶ食べてもいいぞ」




 リノリスは酒場を出てすぐに気づいた。視線。それもゆかいではない。敵意というほどでなく、悪意もなく。だから多分、浮かれていたのかもしれない。そういう視線が新鮮だなんて。さっさと撒いて寄り道しよう。大通りには戻らず住宅街へ足を向ける。次の通りまでの何軒かのお店ものぞきつつ角を曲がった。


「あれ?いない。どこいったんだ」


 慣れていない追跡者君は疑問だらけだろう。そこは商業区と住宅地の境目。この時間帰る人もまばらだ。そこを狙って『不可視』と『身体強化』で屋根に逃げ逃げ。後は上から様子をうかがう。あたりをきょろきょろしても僕はいない。街中では魔法とか若干制限かかってるけど、僕はラディ王子との『共有』でそれに引っかからない。これであきらめてくれるかなぁ。しかしそれはなんとかに油だった。あれ?


「たいへんだ、報告しなきゃ」


 と、彼は猛ダッシュで立ち去った。まずい、これは大勢で押しかけるパターンだ。・・・買い物は早く済ませて帰ろう。とりあえずメモを出す。何を買ってくかはある程度決まってる。悩みどころは母のと姉かな。この調子だと後2日の休みも何があるかわからないよね。酒場に入る道まで戻り、買い物開始。このままだと買い物できないので『不可視』から僕を探す子供に対しての『認識低下』に変更。




「     」


 はい?大通りに出て周囲が生活音であふれていても聞こえたけど疑問なのは内容じゃない。やだなぁ、こっちにきちゃったよ。


「ここにいてもいいのですか?」


「仕事など見ていてもつまらんぞ」


 仕事の虫なラディ王子には聞かせられないでしょうに。いえいえ、僕も休みになってますが仕事ですよ?なので「もうひまか」はないでしょう・・・スーちゃん


「どれ、屋台広場に行くのだろう?早くせんと日が暮れるぞ」


 なに全制覇する気満々なんですか。って、拒否権はなさそう・・・頭の上でくつろいでいらっしゃる。彼自身の仕事といえば、ラディアス王子誕生の際にした『先触れ』だけだとか。それ以降なにするでなく暇していらっしゃる。仕事の意味わかってるんだろうか。さすがにここでは『ラッキーリザード』の暇つぶしもしてない。まぁ行きますけどね。


「えーっと、そのまえに色々お店見てからにしますよ。選ぶのは帰ってからにしますから」


 仕方ない、裏技使うしかないかな。『観察』はこういうときちょっと便利。というか本来の使い方にまだまだ届かないからこうなるというか。まぁお店の人もその辺わかってるので冷やかしレベルの短い時間でも売り込みが本格的なのです。首のうしろでゆらゆら感じる尻尾に急かされてる感。いくつかの店をのぞいた後、おまちかねの屋台広場に到着。あぁ、いいにおい。ただし、一言釘は指しておく。


「とりあえず、ここで食べるのはひとつだけにしてくださいね」 


 横暴だ!と僕の帽子をぽふぽふ叩きながらの苦情は受け付けませんよ。




 ---幕間--- ディナリィ 乙女の迷い?

 つんつんつんつんつんつんつん・・・・「つん」と「つん」の間には「ぱく」が混ざる


 はてさて、彼女はわかっているのやら。第一部隊の討伐はたしかに完了した。とはいえ、事後処理等で本隊はまだ帰還していない。そこにいたディナリィが今こうして屋台広場にいるのは、夏季休暇中の学生だからというもっともぽい理由らしい。指揮を取るウィルバートに言われたので異論はない。呪府で帰還した後、とりあえず夕飯の前に小腹をいたわろうと来たにすぎない。そこ、小腹?と疑ってはいけない。どれだけの量が目の前にあろうとも。討伐前から彼女の心は尽きぬ迷いの迷路にいたのだった。普段から口数は多くなくても、友人のウィルにはわかる。ペシから言われたことでさらに混乱したのだと。


「そんなの気にせず好きな方選べばいいじゃん」


 それはそうだとわかっているのだけど、14で多感な乙女としては「それじゃ誠意を感じられなくない?」なのである。だれに対してか。いやだれでなくとも剣だけど。今日使った両手剣か、それとも片手剣か。どちらも等しく好ましいのだ。そんな彼女は周囲から「白薔薇」よ呼ばれていたりする。休日でも学院の制服で済ますのにね。


 ・・・そうそう、ここ屋台広場がどういう所なのかというと。


 アラスティの街は大通りで十字に区切り、東西南北の地区に分かれている。ここは学院のある北地区でお土産にもいいおしゃれな文具や雑貨を扱う店が多い。「彼」が3ヶ所ある屋台広場のうち、ここを選んだのも今日は夏季休暇+避難もあって人が少ないと見越してのことだった。なので本当に偶然、だと思いますよ。


 ディナリィの初見はこうだった。


 なにあの小動物は


 その視線の先にいたのは・・・





 ニュアンスの問題なのです。これは撒き餌。旗にあらず。

かならずしも狙った獲物が釣れるとは限りません。

現時点でディナリィが何を見たかはさだかではないのです。

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