王伝編集官 49話
いそがしい
あぁ、いそがしい
どうも、おひさしぶりですリノリスです。あの場を騎士達に丸投げしてとんずらですよ。もう、ミアの出番ないといいな。でも口には出しませんよ、そんな恐ろしいこと。不安を投げ捨てるべく、元の姿を鏡で念入りに確認しましたとも。ふわふわでまとまりのない薄茶の髪にくりくりした緑色の目。なんだろう、ミアとの違和感がない・・・。忘れよう。それより、城に戻ったら戻ったでやることがまだまだありまして。と・く・に、ラディ王子からの追加仕事がひどい。
「リノリス、この後は休みにしてこれらを届けて」
「発注書を届けるのに休みですか?」
「ルシネイラの王子としてでなく個人的な宴会だから。代金も全額前払いで」
「料理にお酒、数も量も多いですね。これ討伐隊の糧食以外でもってきた分くらいになりますよ」
「臨時で使ってしまうのだから市場に不足がでないようにしないとね」
「・・・持ってきたのを使わないのは」
「新商品があるからよっぱらいに食べられるより、市場でちゃんと宣伝して売るのが優先」
転んで(出費して)もただで起きないなぁ。人気取りでお金をばらまくだけでなく、市場から商品けずって自分とこのをねじ込むんだから。新商品?て、あれか。ミックスシーフード。干しイカ、干しエビ。干し貝柱。水で3分戻すだけでプリプリになるっていう海から遠いアラスティでも食べてもらおうというやつ。そもそも冷凍でもある食材をわざわざ常温保存にした労力(執念)はどこからくるのやら。
「あと残り2日も休みにするからゆっくり休んで」
さわやかに笑うラディ王子とまったく笑えない僕。人に休みと言う人はいつ休んでいるのだろうか。今回の事後処理スケジュールびっちり詰まってた。会議に会談、晩餐会。レイ王子は休みだそうで。代わりにあの人忙しいだろうな。アラスティに来てからさっぱり顔合わせてない。うん、彼が妻へのお土産も見繕わないといけないね。
「はい、では父に伝言お願いします」
さて、休みとして行くのですから私服に着替えです。普段の生活では制服でいることが多いからねぇ。学院もそうだし、王子付きの仕事もそう。今回の夏季休暇と称するものも8割仕事。それをあえて休みとして行動させる、そう私服で出歩くことに意味があるんですよ。ラディ王子との【共有】と【偽装】でミアになり、そのおかげで近距離の【転移】もできるようになったとたんさらに仕事が増える増え~る。あー、忙しい忙しい。
---幕間--- ポールとエンデ わくわく報告会
「そんで、どばーんって」
「そしたら、ずばーんって」
ディオン様のお店のテラス席にキラッキラの目をして、興奮冷めやらない弟達がいた。なにこの子たち。私がどれだけ心配したかまるでわかってない。体の震えが止まらなくなるなにかの声が響いたとき、もうだめなんじゃないかって思ったのに・・・ほんとうに仕方のない子たちね。
ここに来るまでに走って上がった息が穏やかになる前に、火照った頬がなぜか心地いい広場の冷たい空気とか。大勢の人たちが中央にやぐらを組んで幕で覆ったなにかとか。ええ、そんなのどうでもいいのよ。無事でいてくれて、それだけでよかった。でも姉としてこれだけは言っておかないと。私の後を涼しい顔してついてこられたエイドリアン様や騎士様たち。彼らに聞こえないよう、弟達を抱きしめ、そっと耳元にささやく。
「一週間、おやつ抜き」
ラディ「わかってないけど、ミア抜けてないんだよね。連れて行けないし」
あなたがそれ言うんだ。




