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王伝編集官   作者: 卵星店長(代理)
7章 氷ごりです

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王伝編集官 48話

     7章 もう氷ごりです


「泣いておられるのですか」


 背を向けているので顔は見えない。それでもリノリスはそう感じた。振り向いたラディ王子がいつもの微笑みを見せたにも関わらず。彼の左手の上には弱々しい輝き。小さな、ふわふわと浮いたそれが次第に消えていく。なんという悲しみだろう。胸が痛くなる。全てが消えたときストンと彼の左手に落ちた。ほっとした。そこなら、「天印」の上なら安らげるとわかるから。


「リノリス、君はやさしいね。いつか・・・」


 初めて聞いた、彼が言葉を止めるのは。ふーっと息を吐き出し先の言葉は飲み込んだ。その時間が思ったより長いのが見て取れた。見える、という表現ができるのは周囲に靄がかかっているからだった。そばにまっぷたつになった黒い塊が氷気を出していて、気温も下がったのだろう。指先が寒さで痺れてきた。夏の装いのこの身には堪えます。震えまで見えそうになる頃、周囲は一機に騒がしくなってきた。


 白衣を着た集団と木材と布を積んだ荷車を運ぶ騎士達。巨大な肉塊を解体するために周囲に幕を張り、その場で運べる大きさにする。その後は各国研究院に渡され、発見済みも未発見のものも含めてあらゆる毒に分けられる。未知の毒というものを早くから研究できるのはどれほどの価値があるだろうか。


「さて、後は彼らに任せて退散しよう」


 それは丸投げというのでは。少々愚痴っぽいつぶやきはラディ王子のマントがひるがえる音にさえぎられ、視界は彼のマントにつつまれ隠された。今後はこの姿の出番ないといいなぁと思いつつ。密かにこぼれたため息はだれも聞いてくれない。彼らが到着した時、その場に誰もいなかった。








 一連の事態をのんびり観覧するものたちがいた。うん、いわゆる、文字どーり「高みの見物」


「そつなく収めましたね」


「ちょっとつまんなくないか?」


「だが放置していれば10年後この世界は滅びていた」 


 青い青い空の中、佇む彼らは眼下をそう評した。はるかな下の景色の様子が、目の前にさまざまな場面を映している。三者三様の言動、そして外見。見たままの感想だけど適切かはわかりません。


一言目を発したのは、中肉中背の見た目10代半ばの男性。上下黒の服で上着に5つの金ボタン。詰襟の立襟のそれはなんというか。下のスラックスはきっちり折り目があり、自らの言動どおりそつない着こなし。額にかかるくせのない黒髪と切れ長の黒目には笑みがなく、かつ面白がってもない。単なる分析結果として見てるらしい。メガネをかけ理知的な雰囲気は、うっかり生徒会長と呼びたくなります。


 二言目の御仁は、そもそも態度がでかい。見えないなにかに腰掛けるかのように腕を組みふんぞりかえっている。しなやかな絹光沢の貫頭衣は純白とは花嫁専用ではなくてよと知らん顔だ。組んだ腕からのぞく鍛え上げられた筋肉がにらんでいらっしゃる。言葉とはちがい彫りの深い顔立ちの紺碧の瞳には、第2部隊のどたばたを面白そうに眺めてますね。時々吹き出して笑ってたりして、短く硬い金髪がきらきら光をはじくのもご愛嬌でしょう。まさに太陽と表現したい方です。


 三言目は麗人、物騒な言い方の割に口調はおだやかで必要のない心配をしていたようです。花でも飛ばせそうな顔立ちの左半分を銀髪で彩られています。隠すと言えないレベルで綺麗な髪だからですよ。銀色の隙間からミステリアスなヴァイオレットアイズ。細身ながら高身長、背筋を伸ばす所作に顎に手を添えた思案顔に性別を感じさせない。衣装は白と紫を基調とした礼服、型は燕尾服と呼ばれるものだ。呼ぶなら魅惑のプリンスといったとこでしょう。えぇ、呼びませんて。


 えーっと、もういいですかね。どうしたものかと困っていると


「いつまでさぼっておる。はよう帰れ」


「あなたがそれ言うんですか。いつになったら戻るのです?」


「我等のだいじな休憩場所だ。気になるだろう」


「手土産はいただきましたし、そろそろ時間です。二人とも」





 やれやれ、予定もないのに割り込んでこないでくださいよ。次はないですからね。   

 招かれざる・・・いえいえなんでもないです。手土産いかがでしたか?


「僕のところでは必要ないですが、加工したらいい商売できそうですね」


「あれば助かるが、なにを考えてあんな実創ったんだ」


「私のところでは必須ですよ。それはもう、ね」


 深く考えずさらっと流してください。空想≠存在しないではないかもです。

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