王伝編集官 46話
第1と第2部隊から一波襲来の報告を受けて、手元の時計を見ながらエイドリアンは次の指示を出した。南城門前に第3部隊は配置しているが実質指揮はエイドリアンが行っている。レイアールにとっては自分が指揮取るとかではなく、彼の指揮ぶりを目の前で学べるまたとない機会。むしろわくわくな気分だった。
「小動物の集団が見えたらそこに移動して待機。魔物を目視次第報告を」
「街中の避難誘導が終り次第、広場から退避」
次々上がる報告にアバルも把握するのに苦労していた。「王印」の固有スキル【共有】でエイドリアン様の指揮している情報を同じように視ている。こういうのを並列処理というのだけど、本来レイ王子が学ばれるペースで覚えていくのをかなりすっとばしてしていた。ようやく走ることを覚えたばかりの子に飛竜のトップスピードを体験させるってどんな特訓だ。レイ王子はともかく僕は気分が悪くなってきた・・・
「無理せず休むといい」
「アバル、だいじょうぶ?」
「大丈夫ですよ、レイ王子。ではお言葉に甘えます」
少し行儀悪いがその場で座り込むことにした。レイ王子もとなりにちょこんと座ってきた。一人で座ってると居心地悪いのを察してくれたのだ。にこっと笑って手を差し出した。
「はい、これどうぞ」
「なんです?これ」
「すーーっとするアメですって、兄上が言ってました」
受け取りながら、こうなることもご存知ですか・・・と。でも前もって言ってはくれないんですよね。すっきりする飴を口に入れながら苦い感覚を覚えるという謎の気分になった。それもそうだ、複数のハーブの香りがするこの飴はどんな人に需要があるのだろうか。自分のためだけに作ったとも思えず、その用途もわからないのだから。口の中でころりころりと転がりさわやかを撒き散らす、まさにあの方だよなぁと。
不意にエイドリアン様の言葉が止まり、次いでレイ王子の動きも止まった。なんだろうと目の前の半透明なマップを眺めた。街でなにかあったらしい。こちらに向かってくる人がいる。
「申し訳ありません!エイドリアン様、弟達がご迷惑を」
「問題ない。伯父上の店で預かっているとのことだ」
「ほんとにもぅ。帰ったら一週間おやつ抜きです」
「それは手厳しいな」
なにやら和やかに話されている。この人アンナさんのお友達のユジーさんだ。直接話したことはなかったけど。ユジーさんもエイドリアン様の笑顔に怒りモードが解かれ急にもじもじしだした。おや?
「あらまぁ、どうしましょ。勢いにまかせて来てしまったけど、私まで皆様にご迷惑かけてます~」
彼女は避難所でポールとエンデがいないことに気づきあわててここに来た。避難所には警護の騎士隊もいたので彼らに言えば済むことだったが、普段からの習慣でつい自分で動いたのだ。報告を受けたエイドリアンもすぐ彼らの確保を依頼した。指示でなく。後をつけてきていたのは知っていた。よく街中で子供達がそうしているのはいつものことだったから。ただし今日エイドリアンのいた場所と彼らがその後そこに残ったことがまずかった。いわゆる痛恨のミス。でも時計を見るとすでに彼女が帰る時間はない。
「すまないが、もう戻ることはできない。・・・アレが来る」
ユジーさんもその言葉を聞いて緊張した顔をする。促されるまま騎士と門まで下がった。僕達も改めて気を引き締め森に目を戻す。一歩間違えば守りたい人達を危険にさらすのだと。
---幕間--- ポールとエンデ ドキドキ大作戦
その情報が入ったのは夕刻。近所の遊び友達が集まり今日一日の情報交換をする。それを我々が耳にしたときも審議を疑ったほどだ。
「エイドリアンさまがねー、とってもかわいい子とばしゃにのってたよー」
年頃の女姉妹のいる子供達の間では姉をエイドリアン様にくっつけようと画策したが、当の姉達が尻ごみしほぼ消滅している。ポールとエンデの姉ユジーナリはそれに勝ち?残った猛者である。それ以降他のみんなも快く応援してくれるようになった。
「なるべく見つからないようにグループで行動すること」
「ポールとエンデが見つかった場合、他の子達がかく乱して逃がすこと」
「目的地は例の店。到着後はみんなは避難場所へ」
こんなこともあろうかと普段からおやつを報酬に優秀な3び・・人の師匠から学んでいる。当日の健闘を祈る。以上。
子供等の情報網。侮れず。
そういえばアバル君最初から出てますが覚えてますかね。




