王伝編集官 45話
あれ
どれ
それ
ペシアーティめんどくさそうに指差すもの。鎧猪の上位種はさすがに大きいな。しかしそれだけだ。後は倒すだけという、それでいいのだが。フランは一息つくまも与えずかわいい弟に指示を出した。
「クラウ、あれを上手に剥がしてちょうだい」
「はい、姉上。その後は燃やしてしまいますか?」
「それがね、できるだけ鮮度よくお持ち帰りしてほしいそうよ。半分は研究院、もう半分は・・・」
わかりましたとクラウは四肢を動けなくされ怒り声も封じられた巨漢の主に向かい魔法を放つ。攻撃っぽくない魔法が当たった場所はキラキラ白いもので覆われていく。白くもやっていく背中は言うなれば「てめー頭冷やせよ」という感じか。聞き分けのない駄々っ子のように暴れているので痛みがあるのかは不明だが。しばらく眺めていると、背中が「ペリッ」と乾いた音をたてて剥がれてきた。端の方から、かさぶたのように。やだ、きもちわるい。生爪剥ぐようだわ。
「うわ、うねうねした足8本もある。あたし触りたくなーい」
「はんぶんこ」
仲のいいお友達とケーキを食べるのといった口調で、ディーは擬態していた丸い頭をもつ軟体生物を真っ二つにした。これで心置きなく最後の1体に向かっていける。さて第2波がくるまで少し休憩か。お隣もそろそろ始まっているかな。もはやルクスは他人事のように第2部隊のいる方角を見つめた。
「叩き落せー」
「押し返せー」
「懐に気をつけろー」
第1部隊が模範的な仕事を終える頃、第2はすでに混沌であった。もちろん想定内であるが、わかっているのと対応しきれるのとでは誤差がある。この付近の森から湧き出てくるものに危険性はほどほど。ただし数が多い。編成もそれに合わせて若手から中堅をとりあえずいっぱい・・・の中に。保育士さんのごとくいる2名は黒い。髪も目も黒茶に羽織った外套も黒。正魔導師な二人は時折交代して後方に下がり息を整えるくらいに余裕はある。
「レン、空中のは落ち着いた。あぁ、さみしぃ」
「わかった、オーグ。あいつらが出てきてるな。・・思い出させるなよ」
鳥やら虫やら獣やら。魔法の網で落としては、風で森に放り込む。そこに涙目とため息が混ざる。なんでも妹さんが二人を置いて行ったそうで。そういえばとキセは記憶をたどる。ラディ王子のとこにいた子だったか。あれって、テラって子が問答無用で連れて行ったんじゃなかったかな。「初物!初物!」と飛び掛らんばかりに迫る彼女にベルデミン王子はお手軽に了承された。「慣れてる」と遠い目をされていたが。
「うわー、頭にねばねばがーー」
はいはい、温水かけて温風で乾かすー
「だれかー、サイフすられたーー」
ん?あぁ、原猿種か。手足が長いいたずら者で、色と模様がさまざまいる。時々街に紛れ込んでは騒動起こすんだよね。とくに女性陣からはスカートをめくる不届き者として嫌われまくりだ。そしていたよ。有名(悪名)な『3匹の小僧』
「ぎゃー、尻さわられたーー」
それは避けなさいって。ほら、我が姉アンナはひらひら華麗に避けて蹴っ飛ばしている。お、3体がかりだ。白くて頭モヒカンと黒白混ざったのと茶色で白い胸毛のトリオがよからぬ目つきで寄ってきた。姉もそろそろ本気モードかも。
「ふふふ、出たわね。ユジーに聞いたわよ、あんたたち街の子供達に悪さ教えてるんですってね」
「ウキュー(それがどうした)」
「言っておくけど、あんたたちには捕獲命令が出てるの。そのまま帰れると思わないことね」
ピシーーーーー
慈愛の笑みを浮かべるアンナと乾いた音。いつの間にやら手に握られてる、黒くて長くてしなやかなそれ。さっそく白モヒカンは簀巻きとなり。止まっていた喧騒は我に返って再開。まだまだまだまだ終らなさそうだ。
名前出なかったので
*レンディーク・リデル(レン)
*オーグスト・リデル(オーグ)
はい、サフィのお兄さん達でした。【異伝】で先に出てます。




