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王伝編集官   作者: 卵星店長(代理)
3章 秘密は土の下
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王伝編集官 22話

 夜明けに差し込む一筋の光なら、目を閉じ背を向けていてもすぐわかるだろう。そのあたたかさは、夜で冷えた体を包み込むように。その剣を見たリノリスはさきほどまでの震えが消えていた。いつか自分の見た光景が同じようになればいいと思う。


「てぃ」


 ぶっそうなものを見せドン引きさせたと思ったのか、テラは全然重くなさそうなのに剣先をよろめかせながら地面にぶっ刺した。わざとらしく「ふぅ」と汗をふきながら。


 その瞬間周囲の天井や壁からばらばらと何かが降ってきた。手のひらにころんと受け止めたのは黒い石。坑道のまぶしくない明かりにかざすと、同じ黒色でも悲しみに染まった色でなく剣と同じ気配。両手で包むと温泉につかってるみたいにぽかぽかしてきた。

(特別な効果は付いてないんだけど、テラらしいなぁ)


「それ、入会費ね」


 彼女は普段通り偉そうで失礼な指差しで、来た道を帰っていった。拾ってはくれないんだ。ここで通常取れるものとは明らかに違うので全回収か。ラディ王子もこれらでなにを作ろうかという顔。ひとつつまんで眺めながらぶつぶつ言いだした。


「これ1つで島を丸ごと永久に浮かべられそうだ。まず大陸の東半分の高低差をなくそうか。それで進む道が開ける。」


 ルシネイラ国のある東カストルファン大陸の東半分は人が行き来できない地形になっている。そこの千mはある高低差をなくすという。急激に行えば生態系や気候にまで影響でるだろう。10年かけて少しづつ下げればそのリスクも減らせる。かつて一つの大国だった頃でもその地は人跡未踏だった。いないのは人というだけで、そうでないのはいた。いや、いる。個別の種類までは把握してませんよ。


「テラが光を示してくれるなら、私も楽しめそうだ。」


 え?まさかのラスボス宣言か。いつものほほえみがなんか怖いし。そもそも彼の天印には具体的な使命がない。荒廃した国土を立て直すとか国の分裂の影響を最小限にするとか、過去の天印持ちにはそれはもう聞くに耐えない重責がありました。「天啓」によって大勢の前で宣告されるとか、偉そうなのに役に立ってない「先触れ」がまとわりつくとか、大変でしたよ?・・・どこがだ


「これもどうぞ」


「それはリノが持ってて、君の所に来たものだから」


 はぁ、と微妙な返事だ。持ってても使いみちがわからない。頭につけられたものと同じで。それで仕方なく制服のポケットにしまい、他の石を集めた。ラディ王子も両手に10ほど集めて立ち上がる。顔を近づけふぅと息を吹きかけるときらきら輝き、そこに命が宿ったのを示すようにささやく。


「じゃぁ任せるよ」


 そう言うと手の上の石はすべて消えた。石のまま消えてしまったが、いずれちがう姿で会えるだろう。




 ---幕間--- レイアール いいかんじ?

 「もこもこー」「ふわふわー」「おーい転ぶぞー」べしゃ・・・


 やれやれとログサはミレーナを起こして顔や服に着いた砂つぶを払った。仲のいい兄妹だ。しかしそのポジションに付いてはだめだ。それはもう絶対に。そんな葛藤を顔に出すことなくレイ王子は見つめている。


「混ざるタイミングが肝心よね」


 すべてお見通しなサフィがそうつぶやく。レイ王子は言われなくてもわかっている、な顔。先もお見通しな妖精さんの言葉はそれほど堪えたのだ。言われないほうが楽しめたのだろうが、異性を認識する前に兄認定は恐ろしい。まだいい人のがましだろう、だからじっと我慢の子。そんなレイ王子にも救いの手がある。


「ミレーナ、向こうの牛さんレイ王子が見たいんだって。一緒に行ってあげて」


 耳元で言ってあげると、ミレーナはにこーっと駆け出す。


「あっち見にいこ?」


 レイ王子の手首をがしっと捕まえるとミレーナは元気よく引っぱって行った。


「あ、えっ」


 (アバル)まぁこれで妖精さんの宣告通りなのか。今日も楽しそうでなによりです。


3章完です。読んでいただきありがとうございます。

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