王伝編集官 23話
4章 炎のコンビ
炎の海。そう表現するしかない。20はない木造の建物、そして畑。人々の営みを肌を焦がす炎が覆う。高台に逃げた人々は、そんな光景を目にしていても悲壮感は漂っていない。その中の一番年長であろう智者は、隣で泣きじゃくる子供に静かに問う。
「だれも傷付いていない。それでもまだ悲しいかい?」
全身ススまみれな子供はうつむきながらも首を振った。少しづつ嗚咽も減り、夜空をも染める炎を映す髪は陽の色。熱を帯びた風にあおられ毛先は好き勝手に動いている。声をかけた人物は髪のススを取るようになでた。
「うむ、さすが儂の孫じゃ」
できるだけ明るく言う。(さて、この子にこれから必要なのは・・・)もう少年は泣いておらず、金色の瞳は決意をもって炎を見つめた。孫バカな祖父は彼に笑顔をもたらす人物を想像する。彼の方なら受け入れてくれるだろう。遠い遠い地にいる、世にたった一人の。
「これからのことじゃが、友達は欲しくないかな?」
「え?」
責任を取ること。それしか頭になかったのか、目をこぼれそうな勢いで見開く。戸惑いとこの場を離れる不安と。色々まざった心は祖父の手をぎゅっと握りしめた。
「ここは大丈夫じゃ、行って世界を見ておいで」
「友達・・・こんな僕でもできるのかな」
「うむ、お守りにこれをやろう。友達に出合うまでお前を守ってくれる」
そっと少年の手を取りそれをはめた。手首に細い銀色の鎖。顔に近づけ手首をゆらしてながめると、やっと小さく笑みがでた。
ルシネイラ国 王の執務室
室内には王と宰相、ラディ王子、そしてリノリス。王は他国から届いた書簡を読み、机に置いた。
「こちらで預かってほしい子供がいるということだ。ラディのクラスに入れるが、慣れるまでだれかに見ていてもらいたい」
「どんな子です?場合によっては私が見ますが」
「うーん、それは会うまでは決めようがないな」
「そうですか、わかりました。簡単な説明だけしておきます」
「ああ、頼んだ。なるべく大勢の友達ができるといい。」
「うちのクラスはにぎやかですよ」
自慢げに笑うラディ王子はだれかを想像したのだろう。すでに任せる相手は決まってるようだ。きっと頬をふにふにされるだろう。どんな事情であれ笑って過ごしてほしい。
次の日の昼食タイム。適度なタイミングで編入してくる子の話題が始まる。本日のデザート「お日さまのキルシュトルテ」を味わいつつ
「これは盛大に歓迎会ね」
「テラ、ちょっと待って、すぐは無理だよ。彼の状態を元に戻してから」
「それ「感情抑制」って言ったっけ」
「念のためとのことだけど、すぐ解除していいかわからないから」
「ラディならぱっと治してくれるんでしょ?」
「私だって万能じゃないよ」
「・・・」
元から会話に集中してなかったテラは無言になった。どうやらデザートに現を抜かしているよ。口元は残念なほど緩んで、にまにまうっとりさん。ラディ以下全員が思う所は、同じだろう。
(テラこそなんとかしてくれそうだよね)
*「おひさまのキルシュトルテ」 通常ショコラ生地のケーキで重ねるのをプレーン生地で仕上げた。その軽い口当たりは食後でもホールいけると、中等部のお姉さま方に敵認定されている。




