王伝編集官 21話
それまで一心不乱に鉱石を探していたテラは「ん?」と動きを止めた。適当に見ていたサンドがそれに気づき表情の変化を問う。
「テラ、どうしたんだ?顔がキモいぞ」
「失礼な。なんか面白そうな感じがする。奥から・・」
しまったとアリさんがささっと回り込んで止める。テラは静かにその行為を制止する。おろおろするアリさんをきゅっと抱きしめ
「ここで待っててね。奥見てくる。」
「あ、おい待てよ」
アクアは気づいてないので置いていくこともできなくて、サンドとアリさんはテラを止めることができなかった。サンドから見ればまたかといったくらいのこと。活発な幼馴染は出会ったころから謎だった。かわいいピンクのフリルを着ていても大人と兄の見ていない所での行動は猿。とはいってもがさつとか下品でもない。広大な庭中を駆けまわったあとでも葉っぱの一枚、服のほつれさえなかったのだから。ちゃんと付いてきてる?と、ふり返る時もわくわく全開の笑顔。それにつられて進んだ先で期待を裏切ることはなかった。その顔をしているテラを止める必要はないだろう。
ラディ王子達はみんなのところに帰る道で、テラが近づいてくるのを知る。ラディ王子はその場で待つことにした。なにやら笑いをこらえているようだ。
「気づいちゃったか、さすがだね。」
(たのしさの基準がよくわからないなぁ)
そうしてテラが曲角から現れると、あちらは笑ってない。おかしいな。「博愛」持ってる彼女からはいつも暖かい気配しか感じなかったのに。なぜだろう背中がぞくぞくする。知らずに体がラディ王子の後ろに隠れてしまった。
「・・・」
「・・・」
2人とも無言。対照的な表情にリノリスは固まってしまう。テラは視線をずらしリノリスを見た。手招きをする。え?僕?と自分を指さし。うなずくテラ。ラディ王子を見上げるとこちらを見ない。自分で決めろと。どうも行かないと先に進まない。あぁもう、わかりましたよ。
テラの前に立つと「よし」と頷いて両手を肩に置いた。そのままくるっとラディ王子に向かせ、顔をリノリスの肩に乗せる。いつもより低い声で
「リノには見せたの?」
問い詰めるでも不満でもない。ただの確認。だからラディ王子は答えない。これは記録に残る行動だと。少し声色がやわらかくなり
「ラディ、あなたの望みは何?」
「情報には対価が必要だよ」
「ふーん、じゃぁお言葉に甘えて(ぱくっ)」
(なんで耳くわえるのぉーーーー)
背後から腹を抱え込み、耳をはむはむ。テラは人以外の生き物と仲良くする際、こういうスキンシップをするが若干種類と用途を取り違えている。いろいろ混ざってもいる。ただ人間の年頃の男の子に使うとどういう効果があるかはわかっている。リノリス限定の効果も。
「一生トラウマになるかの判断を任せるね」
「リノに嫌われないことが対価か。そこまでの価値なんだ。」
「当然よ、一生の問題だもの」
「そういえば平穏な人生を好まないのがテラのいいとこだったね」
2人とも穏やかに会話をしているがリノリスの頭はパンク寸前だ。女嫌いになったらどうしよう。今?それは姉以外は強権をもって抑えている。当事者の家族しか知らない事情を把握している、それを申告するのが対価。
「私の望みは忠実な部下ではなく、自由を愛する同志だよ」
「了解。それなら私も自由に行動する」
ごめんね、そうささやいた唇でリノの頬に一瞬触れた。自由になったリノリスは背後のテラがいつもの彼女に戻ったと知り落ち着いた。だから振り返ってテラを見た時の驚きは、今起きていたことがたいしたことではなかったと思い知る。そうテラの手には抜き身の剣が握られていた。
(え?鑑定不可、なにそれーーーー)
「博愛」は「友愛」の上位種。これらの上は「魅了」。
ものごとはほどほどがいいと思われます。
「魅了」持ちは現在見当たりません。




