白井流
1
11月頭の朝。
機械部との戦いを引き分けで終えて、当初の目的と青波の裏の目的を達成した日から数週間が経っていた。
「少し寒くなってきたな……」
通学路で、一人歩いて学校へ向かう翼。ドラゴとの合流点とは、まだ先。その時、携帯が鳴り始める。
「ん……?こんな朝早くから、誰だ」
表示された名前は「白井猛」。翼には覚えがない名前。
「知らない番号には出ないっと」
と切ってしまう。しかし、すぐにもう一度かかってくる。
「ウザいな~……」
何度もかかってくる、しかも切って3秒もしないうちに。
「時間はまだ、あるからいいか」
ここまで来ると向こう側が虚しくなってくるので、珍しく電話に出た。
「もしもし……」
『お前が白井翼だな』
「はぁ……そうですが、どちら様?白井の姓を名乗っているみたいだけど」
『そうだ、俺は白井猛だ。白井の正統な後継者だ』
「訳分からん。切らせてもらう」
さっさと切ろうとしたが……
『お前の家にある剣。之を寄こせ』
「あ~……あれ、親父のだから勝手にするなり何でもすればいい」
『じゃぁ……』
「まぁ、親父が許すならの話だけどな」
『くっくっく……だったらそうさせてもらう』
よく分からないから有耶無耶な回答をした翼。
「そんじゃ……」
『お前も連れて行かせてもらうぜ」
「なんだ……」
翼はいきなり、後ろから見知らぬ男に鉄棒で思いっきり殴られ意識が遠のいていった。
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「お~す」
部室に入り、挨拶していく信。
「お~、来たか……」
「一勝負できません?」
「断る、ここでは俺が法だ!」
「ひでぇ……」
仕方が無いため、朝勉強を始める。これ以上補習を受ける気はさらさらないからだ。
「真面目ボーイか」
「仕方ないでしょ、補習は受けたくないんですよ」
「始業に遅れるなよ」
「へ~い……」
全く、騒動が起きるとも知らずいつも通りの生活を送っていた。
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一方で待ち合わせ場所に来ない翼を少々心配し、翼の家に向かうドラゴ。
「アイツは、待ち合わせには基本遅れない奴なんだがな……」
遅れるときはメールやら電話の一本は必ずあるが、今日はそれがない。
何かあったと考えるのが妥当であろう。そう考えて、曲がり角を曲がると人が倒れている。
白髪で長髪、そして同じ高校のバッグによく見る携帯電話。頭に思い浮かんだのは翼だった。
「おい‼翼‼」
近寄るが一切返事はなく、頭から血を流している。
「こういう場面ではパニックにならず、冷静に……取りあえずは119番通報」
数分後には、救急車も到着。すぐさま搬送されていく。
「君はどうする?」
「自分は、彼のお親御さんに連絡をします。何かあったら連絡ください」
「わかりました。病院は総合病院になると思いますので」
「了解です」
電話番号を渡し、白井家に電話をするドラゴ。さすがの彼の家族でも今回のことは驚くだろう。
自分も内心動揺している。今まで、幾つかの任務をこなしたとはいえ、身内は一切怪我をせずいたからだ。
「俺もまだまだ、ということか……」
白井家は3コール以内には出てくれるが事は一刻を争う可能性がある。
ドラゴは早急に出てくれと焦っり共の安否を案じていた。
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「翼が、朝倒れていた!?」
「そうだ」
時は、昼休み。部室で昼食を食べながら事の顛末を話していく。
「翼も災難だったね……」
「まぁ、明日にでもなりゃ復活してんだろ」
「信。心配しないの」
「してない、と言うかする必要なくね?」
「?」
理解不能と言うような顔をしている来華に自論を話し始める。
「打たれたのが頭なら、剣道の面と同じだろ、奇襲されたとしてもアイツの反射でなら急所は外せる」
「それ、かなり説明雑なんじゃ。後ろからって気づかないものだよ」
「そう思うか……。じゃ、アイツの能力は?」
「【風読】……そういうことね」
そこから、声高らかに熱弁を始める信。
「そうさ、アイツに奇襲は基本効かない。ましてや接近の類ならなおさらだ‼」
「なら、何で頭打っ叩かれたんだ、翼は?」
「そこは、説明着きませ~ん。勘弁してください、激波さ~ん」
「理論崩壊だな。まぁ、何か在るとすれば、これは俺ら向けの案件になる」
「俺ら向けの案件」と言う事は能力を不正に使用した犯罪「能力使用犯罪」にあたる。
現在の法では、能力は人を気付付けない程度での使用は認められている。
だが、今回の場合は怪我人が出ている。犯罪と取られてもおかしくはない。
「さて……どうするかな」
「今日のシフトは俺、入りますね~」
「我関さずかよ。烈斗」
さっさと、部室から出ていく氷上。
外に出た氷上はいきなり部室棟の柱を殴った。殴った後には血痕が残っている。
「彼奴不意打ちとはいえ負けるとはな……」
さっさと組み替えたシフトは、自分は今日一日フリーになるように組み替えてきた。
「烈斗のヤロウ……シフト動かすふりして操作しすぎだろ」
氷上の組み直したシフトを見直しを見直す青波。氷上が自由なシフトになっている。
「……何気にみんな怒ってるな。まぁ、俺もブチ切れ寸前だ」
流石に物には当たれないので、自分の足を思いっきり殴る。
「痛~~~」
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放課後
「おかしいだろ……今日のシフト」
『そうかな』
「そうだろ‼俺しかいないとか‼‼」
シフトを放課後に確認すると
17時~20時まで、全て『赤柱』となっている。
「自由に変え過ぎだっての」
『皆、何気に怒っているんだね~』
「お前はどうなんだ?翼が殴られて」
『頭の中で、すっごく怒ってるよ』
「だよな……俺も捜査したいよ。ホントに」
パトロール範囲が広すぎるため、早歩きになる。
「速く大人の部隊に回したいよ……」
愚痴を言い続け何もなくその日のパトロールを終えた。
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放課後。
「あ~……なんで捕まっちまうんだ」
「分かる。分かり易過ぎるわ。もっと、さり気無く出来ないものか」
氷上は青波に捕まってしまい、そのまま捜査を手伝わされる。
「できたら捕まってないんですよね」
「そうだよ、さてと……」
ドラゴからの情報をもとに現場に向かう2人。先で、いきなり歩きを止める青波。
「……烈斗」
「はい?」
いきなりブレインを起動する青波。そこで初めて、数名の集団に囲まれていることに気付く氷上。
「このパターンは、闇討ちですか?」
「さっさと、起動しろ!」
「了解‼」
『オートオペレーション開始』
数名の男たち1人は、日本刀を持っている。残りの数名は、バットや木刀。
「邪魔な輩か」
「斬りましょう」
「滅多打ちにするぞ」
「日本刀の奴は俺にくれない?」
「いやです」
「シフトを勝手に、いじったのは誰だっけ?」
「うっ……弱みに付け込みますね~」
闇夜の戦闘が始まり、付近は終始物々しい空気になった。
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「翼の容体はどうなんですか?」
「どうと言われても……頭以外には損傷はない。一応無事ですよ」
「何日ぐらいで起きますか?」
「そんなこと聞いてどうするんだい?」
「……」
「敵討ちのつもりなら辞めておいた方が良いよ」
図星でなにも言い返せない。しかし、手ぶらでは帰れない。
「どうしたもんだか……」
聞きたくはないが、翼の家族に聞くことにした。
「白井さんですか?」
『あぁ……龍吾君?』
「はい……」
『翼の容体を聞きたいんだろ?』
「そうです」
『今から、家に来れるかい?』
時間は夜に差し迫っているが、すぐに向かうことにしたドラゴ。
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青波と氷上はなかなか倒れてくれない相手に苦労していた。
『しぶといですね』
『面倒極まりない……』
相手は生身のため、ブレイン性の武器では受け太刀の類しかできない。
『一人、倒して武器奪うぞ』
『木刀の方が良いです』
「ホンじゃ、せい‼」
青波はわざと攻撃を受けて、蹴り飛ばす。戦闘体であるため、身体能力は大きく向上している。
壁に打ち当たり、木刀を落とす。それを拾い、連続で殴っていく。
「弱い奴だったということか」
「どうします……」
「こんな奴らにこれ以上、我らの奥義を使うのは癪だな」
「攻型五羽・鴨嘴‼」
単純な連続刺突をして攻めてくる。木刀が徐々に削られていく。
「危な……」
「生身なら死亡確定の技だな」
「木刀がボロボロですよ」
「ギャグ言う暇は?」
「見てわかりません?」
木刀はすっかり原形をとどめていない。
「マジかよ……」
「取敢えず、くたばれ」
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ドラゴは、白井家に向かう途中で戦いを見ていた。ブレインは持ち歩いてはいるが、今邪魔をするのは不味いと判断した。
「さてさて、如何すればいいんだか」
その戦いを遠目で眺めているものが1人いる。
「あんな事のために、白鳥変刀流を使うとは……7代目当主としては、許せないな」
竹刀を取り出し、戦いの中に入っていく。
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青波達の戦いに割って入ってきたのは白髪の男。
「誰だ?」
「おっと、失礼。私、白井鷹雄です」
「白井ということは……」
「翼の父ですよ」
「初めて知った‼‼」
「うるさい、烈斗」
(というか、この人……生身だろ)
手に持っているのは、なんと竹刀。だが、全く動じることなく、剣を握っている。
ドラゴが近づいているのを確認する。
「鷹雄さん……」
「おぉ、龍吾君」
「まずは、あのメンバーを……」
声を押し殺したように威嚇をする。
「カウント5以内でこの場から去った者は斬らないでおいてあげるよ」
「なんだと……」
「彼奴が持っているのは、ただの竹刀か」
「お前らの目は節穴だな。奴の剣は……」
「カウント終了、斬るよ……」
「全員構えろ!相手は……」
「攻型壱羽・燕返し‼」
3人をまとめて切り倒す。いきなり、竹刀が変形して真剣になる。
「燕返し……ということは、正統派か」
「君たちのは、亜流。詰まる所、二流、三流のレベルだ」
「黙れ、攻型五羽・鴨嘴‼」
「守型弐羽・雲鶴」
突きの全てを避ける。
「倒れろ!攻型参羽:低空飛行」
「ハァ……参羽・鷹の爪」
地を這うように、特攻してくる相手に、下上下の順で速度の速い斬撃で迎撃する。
「この野郎」
「亜流に負ける正統ではない」
剣には一滴も血が付いていない。
「峰内ですから、心配しないでください」
「こんな奴が7代当主か……」
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「強いというか、生身であんなに真剣振り回する人、初めて見ましたよ」
感心している氷上。
「現代でも、真剣で野球の球斬り落とす奴は居るだろ」
「そんなことで、納得できませんよ」
「納得しろよ……。青波さん何が在ったのか聞かせて貰えませんか?」
「うん……聞かせてやる」
ぽつぽつと話を始める青波。
「大体わかってくれた?」
「分かりました。氷上が首謀者ということですね」
「おい!事実が、捻じ曲がってんだろ‼‼」
「そんじゃ、今度は……」
「僕ですか?」
「そうです。翼の親父さん」
「では……」
今回、青波の一行を襲ったのは白井家の関係者だという。
「ホントに、すみませんね」
「いえ、お互いに考えている事は同じようですね……」
「どうかな。僕は、翼に後継者を継いでもらいたいだけ」
「後継者?」
「今回の襲撃もそれが関係している」
白井家は昔から、束縛が強いことは翼から聞いていたが後継者の類が出てくるとは思ってもいなかった。
「翼の性格上そういうの嫌いですからね」
「ここで、白井を終わらせるわけにはいきませんからね」
「その件、俺たちが扱っても……」
「ダメだ。之ばっかりは、君たちは絶対に関与させない」
「あ~……そうですか。烈斗帰るぞ」
「うぃす」
家に帰っていく青波達を見送る。
「さて、話を始めよ」
「彼奴らに言うと不味いんですか」
「白井の家系は大体知っているよね?」
「300年以上続く歴史ありの家系ですよね」
「まぁ、大雑把に言えばそんなところだね。そして今、次期後継者問題で荒れているのさ」
「だから、青波さんたちが襲われたということですか」
「……」
「心配は要らないでしょ……」
「心配なんだよ、我々の問題で他人が傷付くのが嫌なんだ」
「なら、俺らの関与を認めて頂かないと」
「この件は、我々で動く」
ドラゴの背後に回り、意識を遠のかせる。
「鷹…雄さ……ん」
「悪いね。記憶操作を……まぁ、いいか。取り敢えず運んでおいてあげるよ」
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場を離れた後、作戦を立て始める青波。
「よ~し、絶対関与してやる」
「青波さん……俺も関与させてもらいます」
「そんじゃ、さっそく明日から作戦立案だ‼」




