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Brain-Wars  作者: 大山鳥 鈴
白刃争奪
20/20

白刃

2

病院で静かに目を覚ます翼。

 (あぁ……殴れたんだった)

 「丸一日寝てたのか……まだ、寝ておくか」

記憶が途絶えていて何があったのか、わからない。

 「メールでもするか……」

近場にあった自分の通学鞄から携帯電話を出し、SNSを使用する。

この時間帯は、誰かしら(特に信は)起きていると思いメールする。


 ・翼、復活しました>翼

数秒もしないうちに

 信<起きるの早いw。

  <ホントに本人か?

 ・本人だよ。中の中ゲームジャンキー>翼

 信<ウルセーー。激波さんに連絡入れておいてやるよ。

 ・どうも。悪かったな>翼


 その後は誰とも連絡を取らずに、そのまま眠りについた。


----

 「異常な回復力だね……」

 「そうですか?」

 「いや、鉄製の何かで殴られて、1日で完治するなんてのは」

 「そう言えばそうですね」

診断を受ける翼は医者に驚かれている。

 「打ち所がよほど良かったのか、君の頭が石頭か……」

 「いやいやいや……そんなことより、退院させてもらえませんか?」

 「う~む……退院は許可するよでも、仮退院」

 「何です、その仮釈放みたいなやつは……」

 「いやね、何心配しているんだよ。これで外出して、また殴られたらと思うと」

 「次はもう殴られないと思いますよ」

そういって席を立ち診察室を後にする翼。

家族には歩いて帰るとメールはしてある。


 「さて、今日は月曜か……」

 「『学校は行かない』は、ありだよ」

 「うわ!……びっくりさせるなよ、親父。こっちは病み上がりの人間だぞ」

 「ハハハ、悪い悪い。脅かすつもりはなかった」

そう言って外に連れ出されていく。

 「車に、乗ってくれないか。重要案件でお前に話しておきたいことがある」

 「?」


----

学校では、

 「いや~……起きたんなら問題ないだろ」

 「だといいけど」

 「心配性かよ。紫花……」

 「それはそうだよ。また、殴られるかもしれないし」

 「アハハ……アイツが二度も殴られたら傑作だな」

 「心配してないんだね……」

 「当然、アイツは同じ失敗を2回はしないはず。『1回ミスしたら次は完璧主義』だからな」

翼の成績の良さは負けず嫌いかその考えから来ていると考えるのが妥当なのかもしれない。

それに対して、信は自分に興味があるもの以外は常に6割以上7割以下。

しかも、興味があるといっても『技術』と『現代社会』の2つ。

 「もう少し、その執念を他の教科に回せればいいのにね」

 「断固拒否する‼なんで、日本で英語を学ばねばならない!」

 「まぁ、そうだけど」

 「いいか、よく聞け。現代の全世界の国々の技術を総動員すれば間違いなく、全言語対応の翻訳機ができる。そうすれば、機械越しとはいってもコミュニケーションは取れる。さらに、リアルタイム翻訳機能が付けば国際会議だろうが何だろうが全てのことに対応可能。加えて……」

 「分かった、分かったから。とりあえずこれ以上……」


チャイムが今日は鳴らないことをすっかり忘れていた信。

次の授業が英語だと言う事もついでに忘れていた。

 「俺のいる前で「英語を勉強する必要はない」の熱弁有り難う。お前の補習はより強化してやる」

 「えええええ‼‼」

 「早速だ、赤柱。今のお前の理論を600字ほどの英語で書き、明日提出」

 「絶対無理ですから~‼‼」

 「なら来週でもいい。縛りは~そうだな……」

 「明日出します……」

 「ならば、よし」

ここで、縛りを受けるのは痛い。縛りと言うのは条件の様なものである。

過去に受けた縛りは、「同じ単語の使用制限」や「計10個の文法を織り交ぜる」などなど……。

真面目な話、これをやるだけで信の精神はかなり擦り減っていき、その日はもう何もできなくなる。

 「くそ~」

 「シフトの時間にやるしかないみたいだね」

 「マジか……」

 「まぁ、頑張ってね~」

授業中に少しづつ文を組み始め少しでも早く終わらせようとする信であった。


----

 「馬鹿なことやってんだな。明日までとか詰んでるだろ」

 「仕方ないじゃないですか……。俺は‼、俺の考えを述べたまで‼」

 「ヘイヘイ、さっさとやっとけよ。代わりに今日は俺が入っといてやるから」

 「どもです」

部室で青波にシフト変更をお願いした信。青波だって、翼の件である意味忙しいはず。

 「あ~…そうだ。後で、ドラゴの家のラーメンで手を打とう」

 「くっそ~~!こんな面白くないもん2時間で終わらせてやる‼‼」

 「はっはっは。頑張れ若者よ‼」

いつもの調子で意気揚々で外出し、活動を始める。


 「さて、どうしたもんだか」

 「どうかしましたか、激波君」

ドアの横にいつの間にか小早川が立っている。

 「先生、俺を驚かしていいのは手品師だけですよ」

 「すみません、驚かすつもりはありませんよ。こういう性格なんですよ」

 「何か、ヒントくれるんですか?じゃなきゃ、ワザワザ俺の前に現れたりしませんよね」

 「……。白井関係の人を全員洗ってみるというのはどうでしょう?」

 「何処でそんな事やらせるつもりですか?」

 「APPO本部のデータベースを利用するんです」

APPO明本本部が持つデーターベースには全国民の能力及び犯罪経歴が記録されている。

使用するには、相当な事件に遭った時。基本的に一般の隊員の使用は制限されている。

 「先生のコネってやつを使うわけですか」

 「そうです。之なら、すぐにやれますよ」

 「そいつは、信の仕事にしてやってください。3人は捜索してるわけですから」

 「仇討ちはお勧めできませんよ。見つけたら……」

 「『確固たる証拠を元に』でしょ。その辺は弁えてるつもりです」

 「そうですか。くれぐれも気を付けて」

シフト活動兼犯人捜査のために外出した青波を見送った小早川。

本部に連絡を入れ、使用認可の手続きを始めた。


----

病院から連れ出され、車内で話を始める翼の父、鷹雄。

 「何から、始めようか……」

 「自分から連れ出しといてそれは無いだろ!」

 「悪い悪い。単刀直入で行こうか。まどろっこしいの嫌いだろ」

 「あぁ……」

 「今回、お前を殴った犯人は大方割れてるんだ」

 「え……っとそれは」

 「犯行したのは白井家系の人間達さ」

 「白井家系……?」

分けの分からない話をされているようで、少々混乱する翼。


 「狙われたのは、これさ」

 「それって普通の竹刀じゃないか」

助手席から出てきたのは一般的な竹刀。

 「ほう……これがただの竹刀に見えるか」

 「当たり前だろ」

 「ちょっと待ってろ」

そう言って車外に出て素振りをする。目では追えないほどの速さで振り下ろされた竹刀。

次の瞬間、竹刀が真剣に変わっていく。

 「はぁ!?」

 「どうだい之でも只の竹刀と言えるかな」

目の前で起きたことを信じることができない翼。

何せ、竹刀が素振りだけで真剣に変わったからだ。


「手品か?」

 「手品では、ない。之が此の剣、本来の形だ」

 「はぁ……」

 「普段は、頼りない竹刀。だが、一度ひとたび自分に危機が訪れた時、本来の姿を見せる」

 「そいつは、狙われるわな」

 「そんなわけだから、この剣を継げ」

 「は?」

 「厳密にいえば、白鳥変刀流正統8代目当主」

 「断る‼ややこしい‼要するに親父は、俺にその流派を継げってことか」

 「うん」

 「そんで、剣を狙う輩から守れってことだな」

 「そうそう」

本人で勝手にまとめてくれたので、自分が言う必要の所は全部わかってくれていると信じ次の言葉を待つ。


 「だったら、俺は――――」


----


 「は~……終わった」

部室で3時間近くかかって、課題を書き終えた信。

 「紫花、添削お願いできるか?」

 「え?ヤダ」

 「おい、即答かよ」

 「『2時間で』なんて言ってたのに、3時間かかるとは驚きだよ」

 「お願いします。今週に一回のお願い」

 「何その『一生に一度のお願い』みたいな、言いまわし。ま、いいけど」

レポート用紙3枚にわたって書かれた英文は読めるには読める。

文法はガタガタで、単語も微妙にスペルミスが目立つ。

また、内容が幼稚と言うか短絡的な気がする。

 「……60点。いや40点以下だよ、こんなの」

 「はぁ!?何だと‼‼」

 「ハッキリ言うけど、文法はおかしいし、何よりまず単語のミスが多い」

 「知るかそんなもん!」

 「ホントによく此処に入れたよね……」

 「ウルセ~。オレは数学と社会で点数とった‼‼」

 「何だかな……って何してんのさ‼」

勝手に自分が使っている指揮官オペレーター用のパソコンを操作し始める信。

 「あ~……先生から頼まれたのさ。白井関係の人間全員調べろって」

 「……宿題やれ」

 「今日中までって言われてるんだよ」

 「い~い~から……」

 「あ、やべ。キレた……」

 「さっさと宿題済ませろ‼‼」

 「はは~……申訳御座いませ~ん」

久し方、紫花に怒鳴られ一気に宿題を始める信。


 「代わりに調べておいてやるからね」

 「くっそ……何で今日はこんなにツキがないんだ‼‼」

 「知ったことか……あれ、此奴って」

 「何だ、フリーズしたか?そういう時は機械を勢いで機械を叩かずに、まず……」

 「いや、此奴。この近くに住んでる」

 「は?」

気になってパソコンをのぞき込むと

 「『白井猛』確かにこの辺に住んでるな」

 「もしかして……」

 「いやいや、ちょい待ち。証拠がないだろ」

 「だとしても聞いてみる必要はあるんじゃない」

 「ぬ~……取り合ず近いのはドラゴだな……って、おい‼アイツ今日来てないぞ」

 「そんな事はどうでもいいから……連絡」

携帯を介してドラゴと連絡を取ろうする。

 「アイツ……ここに来ないで調査していたとは許せ~ん」

信は明後日な方向で怒っていた。


----

 「何て言った?」

 「いや、3回目……さすがに諄い仕業とらしい。オレはその何とかは、継がない」

 「何だと貴様‼‼」

 「選択権ぐらいあるだろう」

 「ない。よし今すぐ、勝負だ‼賭けるのは」

 「賭け事はしないぞ」

 「先代の流派を継ぐか否かでどうだ」

 「……いいよそれでも。どうせ親父じゃ俺には勝てないだろうけどさ」

翼は彼の親父が剣道をしているところを見たことが一度もない。

そんな彼に、先ほどの流派が使えるわけがないと踏み勝負をあっさり認証した。

 「それなら話は早い。道場へ向かう」

 「剣道の何本勝負?」

 「7本でどうだ」

 「奇数だからまぁ、いいよ」

 「よし、その自信をぺっきり圧し折ってやる」

 「暗い情熱……」


----

 「ここか」

一人で付近の監視カメラ全てを調べた結果、翼を襲った犯人の絞り込みは大体できた。

さらに、小早川からもらったデータを元にここまでたどり着いたドラゴ。

 「証拠はないが鎌をかけ動揺すれば決まりだな」

後で、叱られるのは分かり切っている。証拠がないのだから。

 「……さてと」

と着いた和風の家のチャイムを押そうとした瞬間携帯が鳴る。

 「ちっ……信からか」

 『おい‼‼お前、確固たる証拠なしに人の家に向かうとは相当のアホだな』

 「うるさい。宿題なんかで足止めされているお前に言われたくないな」

 『るっせ‼』

 「用がないなら切るぞ」

 『あっ‼ちょい待ち』

 「?」

 『お前今すぐ戻ってこい。隊長命令。というか間接的部長命令だ』

部長命令となると仕方がないと思い、しぶしぶ部室に戻るドラゴ。


----


 「さ~て……」

 「くっそ……結局6対1かよ」

道場に向かい7本勝負を終えた翼達。

 「はっはっは!まだまだ」

 「あんな分け解んない動きは剣道にはないぞ」

 「そんなわけだから……」

 「継ぎますよ。白鳥変刀流」

 「よし、型一式1日で覚えろ」

 「無理だろ‼」

早速、無理難題を押し付けられる

 「全ては試合で見せた」

 「……滅茶苦茶」

 「この流派の特徴は、技の継承が一度きりという所にある。その身に刻めよ」

 「うっす……」

 「そんじゃ……ほい」

投げ渡されたのは先程見せてもらった竹刀(真剣)。

持ってみると重さは竹刀のまま

 「正しき型を使えた時に真の姿を見せる」

 「みたいだな」

話を聞きながらさっそく一つの型を習得した翼。

 「参羽からか……」

 「え?いや、これが一番簡単そうだからさ」

 「普通は壱羽からだろ」

しかし、いきなり体得するのは予想外であった。

 (自分の時は壱羽習得するのに丸二日はかかった)

 「でもさ、オレが八代なら、今7羽あるはずだろ」

 「もう一つは……その剣が教えてくれるはずだよ」

 「いい加減なこと言うなよ。伝承するんだろ」

 「なら、6羽まで習得したら教えてやる」

そう言い放った後、さっさと自分から道場を出ていく鷹雄。


 「しゃ~ない……6羽まで六日で習得するか」

早速、鍛錬を始める翼であった。


----

 翌日。

 「や~……よく来てくれた」

 「呼んだのが青波さんでしたから」

 「取敢えず、翼。退院、おめでとう」

 「え?」

 「おい、まさか俺がそんなこと言うはずがないと言いたいのかな?」

 「あ~……そう思いました」

 「処す‼処罰は、ヘッドロックの刑」

 「あだだだ‼」

出席早々ヘッドロックをされる。

病み上りの体には結構効く。

 「取敢えず、他の奴らが来るまで……今までの状況を教えろ」

事の顛末を話し始める。

 「ほうほう……成程。その流派の剣が欲しいままに、暴挙に出たというのか」

 「まぁ、そうですね」

 「なら……保護でもしようか?」

 「いや、ご心配には及びません。それよりも一勝負できませんか?」

 「?……まぁ、いいけどさ」


訓練室に入り、準備を始める二人。

 『仮想戦闘を起動します』

 「よ~し……久方の試合だ」

 「6本勝負で行きますか」

 「何で6本なんだよ……偶数じゃないか」

 「どっちかが一本多くとる。それでいいじゃないですか」

 「ブッ飛ばす!」

珍しく三叉戟出ない槍を出し、ぶん回し始める青波。

 「槍の先端が変ですね……」

 「実験的な槍だよ。まだ、認可のされてない槍だよ」

 「さぁ、始めましょう‼」

久しぶりの戦闘訓練を始める二人であった。


----

 「ん~……39点」

 「でぇぇぇ‼‼」

英作文の採点を受けていた信。

 「まぁ、展開は悪くない。文法に間違いがある」

 「……リベンジチャンスは!?」

 「ない」

 「くっそ~……」

 「仕方ない。次回ので頑張れ~」

さっさと追っ払われてしまい、仕方なく部室に向かう。


 「あっ、来た来た。何点もらえた?」

 「……39点」

 「ドンマイ……としか言えないや」

 「同情はいらん‼くっそ~、ムシャクシャする……。トレーニングルーム一部屋貸せ」

 「あ~っとそれなんだけど今2人使用してて……」

 「私用・・使用・・するな……今日のノルマクリアだ」

 「ウルセ~、烈斗。そんな事より使ってるのは誰だ?」

ギャグを人の会話に捻じ込んでくる氷上に突っ込みを入れつつ、話を進める信。


 「白井と青波さん」

 「よし、激波さんに200ポイント賭けよう」

 「賭け事をここでするな!」

 「しね~よ‼。ところで何本制?」

 「6本だったよね?氷上」

 「6本……六本……ロクホン……思いつかね~」

 「放っとこ……」

 「そうだな」

その時試合終了のブザーが鳴った。

画面のモニターには、勝敗数が出ている。


 『試合終了。勝者:白井翼』

 「マジか!?」

 「白井が青波さんに勝った?」

 「そういう事みたいだな……信じられん展開だ、しかし面白いな。予約‼」

 「速‼向こうの疲労度」

 「え?完全に度外視ですけど何か?」

少々笑いながら、予約申し込みをする信。


 「いや~……参った参った。負けちまったな~」

 「本気で言ってますか?それ」

 「どう捉えるかはお前次第。まぁ槍のデータは取れたし、お前の動きを大体解ってきた」

 「次回は本気でお願いします」

 「OK、OK。次はこうはいかないと思っ……」

 『おい、翼‼貴様退院早々訓練とはどういう神経してんだ‼‼』

いきなりスピーカーから大音量でアナウンスが入る。

 「外野は黙ってろ」

 「そうだ~……と言いたいが俺は何も言えん立場だな。許可したの俺だし」

 『翼!さっさとオレと勝負しろ‼3本で』

 「断る」

 『おい‼』

 「取りあえず今日は帰る」

 『はぁ?いい加減にしろよな。お前は今日のシフト、オレと変われよ‼』

 「……それは、断れないな」

翼がいない間、信が担当したシフトの時間は通常分+追加分で約9時間。


 「9時間あれば製品版のゲームが物によっちゃ終わるんだかんな」

 『ゲーム基準で話をするな……わーったよ。代わりに暫く入ってやるよ。変更はお前に基本任せる』

 「よし!」

 『喜んでんじゃね~‼このゲームジャンキー、お前も自分の分はしっかりこなせよな』

 「へ~い」

今日はもうフリーになる信。

 「さ~てと……ランク上げに勤しませてもらうとするか」

ゲームと自分のランク二つを上げる考えを企てていた。

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