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Brain-Wars  作者: 大山鳥 鈴
ランキング戦開幕・集う精鋭
16/20

転属者

---- 一週間前


 北海道APPO本部。ここは今や、年中最高気温が10℃行くか行かないかの雪原大国となっている。


 「まさか、思いもしなかったことが起きてしまうとは1……」

眼鏡をかけ背に巨大な斧を持つ戦士はそう言う。

 

 「市民への情報横流しならともかく、イーターへの横流しは我々でも収集が付けらませんからね」

背丈の小さい少女がゲームもしながら棒読みでいう。


 「ふむ…Mr.氷上」

北海道本部の本部長、岩六は目の前のゴーグル装備男に向かって質問を投げかける。

 「これは、君たちの隊だけでなく我々に被害が出ている」

 「それは、分かてっます」

 「彼女の行動には?」

 「不審に感じることは、心当たりなしです」

 「……それなら、今より氷上隊は解散。Mr.は東北にある本部管轄支部に転属してもらう…良いかな?」

 「了解……それじゃ内の残ったメンバーの後始末は一任しますわ」

 「OKだ。Mr.。再び君に会えることを心から祈るよ」


 今回彼の隊の隊員がAPPO本部の隊務規則違反をした。最高クラスのSランクの違反である。

 それは「能力犯罪組織及び世界の脅威になる者たちへの情報提供は如何なる理由があろうとも禁ず」に違反したためである。


会議室を出るとドアの横に彼との旧友、真矢マヤ正月マサツキが立っていた。

 「氷上…」

 「おう、真矢。悪いな面倒なことに巻き込んで」

 「気にするな…そんなことより。どうなった?」

 「さーせん《・・・・》。左遷・・です」

 「……馬鹿馬鹿しい。心配して損したぜ」

 「おぉ、待ってくれって。ただのギャグジョークじゃないか。異動で東京本部管轄支部転属」

 「随分とまた…面倒なところに」

 「まぁ、向こうに行ったらすぐにランキング参戦するわ」 

 「……相変わらずジャンキーだな」

 「お前もだろ」

その時真矢のブレインから出動のコールがかかる。

 「……じゃ、行くわ」

 「おう……、行ってこい」

 

----


 残暑残る9月も終わり10月。

 こちらは東北青森の支部。部室で話をしているのは小早川と青波。現在、信達は地下の方でランキング戦中。

 「事の顛末とやりたいことは分かりましたが、半分は君の独断ですね。激波君」

 「……俺だって参戦したいんですよ~」

 青波が模擬戦をしたがっている理由は青波隊を解散したから。ランキング戦参戦条件として、「2人の隊員が必要」とあるため現状で彼は参戦不可なのである。彼は隊員としての役割を忘れてしまう時がある。これは、上位の隊員にも言えることであると小早川は理解している。

 

 「参戦できないと個人ランクも落ちちゃうし……」

 「まぁ、いいでしょう。で、転属する隊員は」

 「なんでも向こうでは『氷上の刀剣士』だとか呼ばれているらしいですよ」

 「剣士ですか……青波隊は3人とも近接ですね」

 「はい?2人だけですが」

 「実は……」

その時、ドアがノックされ一人の少年が入ってくる。

----


 『勝者、赤柱隊。ランクが変動します』

 「しゃー。またランクUP」

ここ数週間でランキングを一気に伸ばしている信達。

 「個人のランクは上がらないけどな」

 「そんなこと言うなや。ささっとランクあげて、激波さん倒すんだから」

 「そんなこと約束した覚えはないぞ」

階段を下りてくるのは、青波。後ろには制服を着た男子がいた。


 「え~と。今日から、青波隊の隊員として転属してきた……」

 「氷上ヒョウジョウ烈斗レットです。クラスは剣士です」

 「そうそう、烈斗。ポイントはいくつだ」

青波は氷上に聞く。

 「そうすね。愛刀の【氷刀アイスソード】で10000以上です」

 「「10000‼」」

 驚いたのは同じ剣士ソードマンの翼と紫花。10000ポイントと言うのは本部のⅠランクレベルの隊員皆が持っているもの。つまり彼は、Ⅰクラスの隊員となる。


 「まぁ、左遷された理由は……」

 「言わなくていいぞ。いろいろ厄介だからな」

 「そうすか。それは有り難いすわ」

来たばかりの氷上にいつもの調子で話を続ける青波。彼の誰にでも対するフレンドリーさは相変わらずと言える。


 「そうそう。氷上が来たから青波隊は復活な。暫くは仕事もするからな」

 「ランキング戦は?」

ジャンキーどもがと思ったが、面白いことを思いついた青波。


 「参加するぜ。何なら今から青波隊VS赤柱隊でもやるか」

 「賛成です。10000ポイント所持者の実力も見てみたいですし」

珍しく戦闘意欲を出した翼に続くように信もドラゴも賛成した。

 「そんじゃ、さっさと部屋は行って準備しろ~!」


----


 「それでは。今後ともどうぞよろしくお願いします。岩六北海道本部長」

 『了解だ。氷上の方はどうだ?問題を起こした隊員は、氷上の部下で彼が最も信頼していた者だ……』

 「……そうですね。客観的に見ている限り何かを引きずっているとは思えませんね」

 『そうか……迷惑をかけてしまったな。小早川』

 「いえいえ。内の青波はランキング戦に参加したかったのでしょう。心配はしないでください」

 『後で、蟹でも送ってやるよ』

 「それは、有り難い。ですが蟹ではなく……」

 『?』


----


 『さてと、久方ぶりの戦闘だ。氷上、翼とドラゴはお前に任せるわ』

 「了解です。翼ってのは白髪の奴で、ドラゴってのは……」

 『筋肉のあるやつ』

滅茶苦茶な説明する先輩だな。と思いつつもレーダー上に出ている、翼のところに向かう氷上。


 MAPは信が最近、遊んでいたゲームのステージを基に作成したステージ『BASE』である。特徴としては狙撃地点が多く、また開けた場所が多いため射線が通りやすいステージである。故に攻撃手不利のステージでもある。


 「あんにゃろう。やなステージを選択して来やがった」

 『とりあえずステージを迂回します。変に突撃するとハチの巣にされますからね』

 「……オレは狙撃もできるぞ」

 『攻撃手じゃなくて?』

 「おう」

 『それなら、ドラゴってやつを探してください。敵の位置を探すのも……』

 「狙撃手の仕事。分かってるから……信は見っけた。牽制するから裏回って落とせ」

 『了解です』


 「……激波さんは見つけたけど。氷上の位置がわからん。ドラゴ」

 『探してるんだが……少なくとも俺の視界内にはいない』

 「となると……建物を盾にして近づいてるな。しかも見つからないように素早く……さすが10000ホルダー」

 『感心してる場合か?』

 『見つけてた』

適当に周辺を移動させていた翼から連絡が入る。

 「よ~し。各員戦闘準備。翼は一戦戦ってこい。ドラゴは……」

 『翼の援護だな』

 「そいうこと。オレは激波さんを倒す」


 『視認されたか。とりあえず氷上、射線の入らない所で戦闘しろ』

 「……青波さんの狙撃可能エリアまで引きましょうか?」

 『止めとけ。信がレーダー上から消えてる。下手にそこから動くなよ』

 「了解」

一見バカのように見えたが、こと戦闘のことに関しては妙な本気度を感じる。

 (おそらく、このメンバーの中で一番強いのはあの人か……)


 「氷上を確認」

 「10000ホルダーを舐めるなよ……新人」

 「同い年だよ」

先制攻撃をしたのは翼。上段から彼の剣速でそこそこ早い一撃を当て鍔迫り合いにする。

 「おおっ?こいつは、強ぇ」

笑いつつ、受け流しをする。今までの経験で、鍔迫り合いをして勝てた経験がない氷上。

 「そんじゃ、高速拘束・・・・剣」

 「速い……」

急に氷上の移動速度が上昇し、翼の周りを走りながら攻撃をする。

 「筋力強化…?でも目が緑色になってない」

 「観察能力はあるみたいだな……でも、まだ経験が足りんな」

 『ドラゴ、狙撃準備は?』

 『完了している。できるだけ引きつけて数秒止めてくれ』

下がりながら引きつけをする翼、しかし氷上は攻めてこない。


 『策が読まれたか……』

 「『経験が足りない』ってこう言うことか……」

 「さ~、1対1を楽しもうじゃないか!」


----


 「あらら……さすがホルダー。策を丸々読まれるとは……」

 『信は、早く青波さんを落とせよ』

 「うるせっ~」

探しているがなかなか見つからない青波。

 「狙撃点洗ってくれるか?」

 『……出しといたよ』

 「仕事が早くて助かるわ。これで速攻で落としてやる」

 「そんなことはさせんぞ」

いきなり後ろから槍を刺される信。

 「はぁ~~‼」

そのまま戦線離脱。

 『赤柱隊長:戦線離脱』


 「さて。次は……」

 「俺です」

ストレートが後ろから飛んでくる、それを槍の柄で受け流す。

 「面白い……【貫通回転槍】」

距離は近く、回避は不可能。だが、強化されている眼には回転方向がはっきりと見える。

 「相殺するか……右回転なら【左回転・正拳突】」

 「甘いな~。ほい」

 「なに…?」

当たる直前に槍を手離しすかさず銃を用意している青波。

 「超近距離狙撃」

 「一枚上手だな…」

 『灰隊員:戦線離脱』


----


 『こっちは片付いた、後は自由にしろ』

 「もう、片腕落とされています」

 『おう?』

 「と言っても向こうの腕も落として、ありますのでイーブンですな……」

 『応援は?』

 「いらないです……」

強気な感じで答える氷上。落されたのは利き腕、落としたのは左腕。

 (実際、つえなこいつ……腕落されてるのに攻撃が止まんね)

 「お~し……その強さに敬意を表し、全力で行きますか」

 「?」

 『能力発動:【言語表現:GAG】』

 「よしよし……お前を倒すには、これだ。【過多な(・・・)】」

言葉を発した後氷上の後ろから過剰なほどの刀が現れる。


 【言語表現】

 【言語体現】と違い自分ができないことでも多少できるようになる能力。その代わり様々な制約があったりと使い勝手が悪い。その例が彼のGAG。GAGとはギャグのこと。彼の能力はギャグを発することで発動条件を満たし、表現される。

 但し、一度発したギャグは効果が瞬間的であり、再使用には2時間以上間隔を開けねばならない。要は、ハイコストハイリターン。


 多くの刃は標的(翼)を定め一斉に飛び出す。直線状の場所で戦っていたため翼は回避が難しく、ジャンプをし回避する。

 「危な……」

 「い、と思ったら大間違い」

氷上はそれに合わせて【広翼】と似た斬撃を飛ばす。

 「引っかかった……」

 『白井隊員:戦線離脱』

 『最終スコア:3対0。勝者:青波隊』


----


 「負けたか~」

 信は頭をかきながら悔しがる。いつも以上に悔しがっているのは当然と言えば当然、実際何もできず戦線離脱をしてしまったのだから。

 「全くだ……まぁ、俺も人のこと言える立場じゃないがな」

 じっくりやれば、よかったな……そんなこと思いつつ対策を練る。

 「至近距離狙撃はほぼ射撃と変わんないから気にすんなよ」

 「いや、あそこで槍を躱せば防御ができた、完全に相手方のペースに持ってかれた」

 「ストイックすぎるな……お前」

 「今回は、翼が善戦したな」


当の本人は、まだ作戦室から出てこない。

 「まぁ、アイツにも思うとこがあったんだろ。途中までは五分五分だったみたいだし」

 途中から氷上との戦闘を見ていたが、素人目で見てもいい勝負をしていた。十分実力はあると思ってもいいはずだ。ただ、他人を煽るのは好きだが、評価する性格ではないので言うつもりはないが。

 「まぁ、今回はいい経験だったんじゃない。良くも悪くもさ」

 「お前、氷上となら何本引ける」

素朴な質問をされた紫花

 「良いとこ5-5」

 「自信ありかよ……」

ちょうど翼が出てくる。負けが悔しいのか俯いたままである。

 「あ~。途中までいい勝負をして負けた剣士だ」

 「黙れ。偵察中にやられたやつに言われたくない」

 「あれ、褒めてるのにな~」

 「……今すぐ、訓練場に入れ。ぶった斬ってやる」

 「おうよ、面白れーじゃねーの。蜂の巣にしてやる」

そのまま訓練室に向かう2人。その時隣の部屋から、青波たちが出てくる。

 「待て~い、お前ら」

 「なんか話でもあるんですか」

 「忙しいので手短に」

忙しくないだろ、と突っ込みつつ

 「今何月」

 「「10月」」

 「うん、学際の季節だ」

 「よし、お疲れ様でした~」「おい……」

帰ろうとする信を翼が捕まえる。

 「放せ‼言われた覚えがない」

メンバー数名で信を押さえつけた。

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