8月⑥
「本部長の御厨です。合格者の皆さん、初めまして」
壇上に出てきた男は名乗った。
「昨日、東谷君が言ったように最終試験を始めます……内容はブレインに転送します」
全員のブレインにデータが入ってくる。
内容は以下の通り
最終試験名目:実践戦闘
参加チーム:昨日の編成のまま
時間:原則無制限
合格内容:能力使用許可区域内に解放された能力犯罪者の逮捕
注記:戦線離脱は使用不可
会場内にいた隊員が驚いたのは『戦線離脱は使用不可』と言うものだった。
「皆さん、読み終わったようなので……転送内容にあるように本日、正隊員以外は戦線離脱が使用不可です。よって戦闘体が飛んだ時は速やかに安全区域に移動してください。しなければ恐らく死にますのでその辺は覚悟のほどよろしくお願いします」
「怪我人が出た場合はどうするんですか?」
御厨が言い終わるのと同時に質問したのは青波。
「……出ないよう万全の警戒態勢を敷いています。怪我人が出ることは恐らく有得ないことです」
「そーですか……」
不満げな顔で口を閉じる青波。
「……他に質問はないようですね。それでは、各員準備のほどよろしくお願いします」
ーーーー
「よ~。清水」
オリエンテーション後、すぐ清水と合流した信。
「また組むんですね……わかってましたけど……」
「……そんなに組むのが嫌いか?」
「いえ、別に……そろそろ向こうも来るみたいです」
「OK」
「また組むのか~」「どうも」
赤千川と園原と合流した。
「さて、今回、目標は…荒狼。元A級能力犯罪者。能力は言語体現。近接戦闘が得意と見ました」
「清水、情報サンキュー」
「どう、捕まえるのですか?」
「簡単な話、昨日と同じだろ……陣形の説明行くぞ」
園原の質問をさらっと答える信。
「具体的には三角形。前衛に赤千川。中衛に俺と園原。後、清水」
「はい?」
速い速度で作戦を伝える信に追いつけない3人。
「俺らの移動中から、敵接触までに地形踏破ルートと地上踏破ルートを作ってくれ」
「……解りましたよ。頑張りますよ」
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「試験開始‼」
御厨の号令で全隊員が動き出す。
『『『ブレイン起動‼』』』
「さて…距離500メーター」
『ルート転送します』
送られた地形踏破ルートはなかなか、踏破しやすいように設定されている。
「解り易いですね。清水先輩」
『当たり前。これでも隊長より賢いほうだから』
「清水…~」
こいつとは馬が合うと信は思う。
(言語体現……面倒なことになりそうだ)
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その赤柱隊の後を追うのは更木隊。
「彼らの足速いですね」
「俊足……疾走……否高速。隊長対応早急所望」
「急いで追いつかないと荒狼は面倒だからな」
荒狼の逮捕を成功したのは、この更木隊。その時の経験から言って彼を捕まえるのは至難の業であると言える。
「猿飛。あと何秒で接触するか教えてもらえるか」
『このままだと…30秒ってとこですかね?』
「…陽炎。影月飛ばすぞ」
「御意」「心得」
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一方、信達は荒狼を視認した。
「……言語体現が相手なら思い切った攻撃はなし。小さい攻撃で出方を窺ってチャンスを狙って倒し切る。OK?」
「了解…能力発動」「了解です」
赤千川の能力で俊足を手に入れ近づく信と赤千川。
「…背後からの攻撃か。背気放出」
背後からの攻撃に気付き、能力を発動する荒狼。気を背中から放出し二人を吹き飛ばす。
「うおぉ」「っつ……」
予想外の攻撃に態勢を立て直す二人。
「実際食らってみると、面白い能力だな~…」
「関心してる場合?面白いどころか厄介でしょ」
信が面白がっているところを突っ込む赤千川。
『隊長、撃ちますか?』
『……まだだな。能力の使用可能範囲見てからじゃないと、お前が巻添え食らう』
『了解』
園原の判断も悪くはない。信が射撃を許可しないのは、一発でも撃てば居場所が割れてやられかねないからだ。遠距離からの援護・攻撃を主な仕事とする遠距離隊員は居場所が割れてはいけない。
「通常弾で、振ってみるか…」
右手の銃で撃ちまくる信。一の字打ちをしているため弾数はかなりある。
「裂帛障壁……ウォオオオオ‼‼」
耳を劈く様な声で障壁を展開し弾丸を防ぐ荒狼。ブレイン以外の攻撃では基本傷一つ、つかないブレイン体だと分かっているが人間の反射能力で耳を塞いでしまい射撃を止めてしまった。
「えぐいな…全部落とすのかよ。まぁでも…赤千川‼‼」
背後に自分の背丈より大きい鎌を振り上げている赤千川。信の弾幕に気を取られていた為、一瞬反応が遅れ武器(斧)を手に取る荒狼。
『園原‼』
『了解。鎖矢』
後ろを向いた際、右アキレス腱ががら空きになった所を逃さず射撃。
「完璧でしょ…」
「決まったと思っている顔をしているな……反射移動‼‼」
「…うわっ‼」
鎌を斧で防ぎそのまま力任せに吹き飛ばし、反射速度で矢をよけた荒狼。そのまま正面にいる信を睨む。
「そんなのアリかよ…ていうか何でもできんじゃんか」
『何でもできるわけじゃないみたいすよ言語体現は』
「マジで……?」
『生身でできることはブレインは実現可能且つ強化的なレベルなのはわかりますよね』
「うん、まぁ…」
どういう事かと言うと、階段を5段飛ばしで上ることができるとする。ブレイン体では10段以上飛ぶことが可能となるというわけだ。ブレイン体の換装により筋肉や運動神経だけではなく声帯や視力なども強化されるというわけだ。
「その理論当てはまってない所とか有るけどな」
『理論で実証出来ないことは世の中には無限に転がっている。そうですよね?』
「……ハイそうです。んな事より向こうが出来ないことは何だ?」
『馬鹿なんですか?』
「馬鹿って…殴るぞお前」
『お敵さんができないこと分かっていますよね?』
「……超能力てトコか。瞬間移動とか空気銃とか」
『そんじゃ、頑張ってください』
清水のアドバイス (?)によって勝算の高い作戦を考える信。
「赤千川…3…いや2分くれ。確実に倒せる作戦立てる」
『OK』
「園原、移動は?」
『完了して何時でも打てます』
「上出来」
信の頭の中で幾つもの策が脳裏を過り始めた。
ーーーー
一方、その先頭を遠目から見ている更木隊
「五分五分…否戦力均衡且拮抗。否、油断大敵」
「そうすね…でも五分五分の時は気の緩みで戦局が多きく動きますもんね」
影月の喋り方を唯一理解できる陽炎は答えた。
「隊長、何時彼等戦闘我等参戦可能?」
「『隊長、何時彼らの戦闘に我等は参戦できるのか?』だそうです」
「まだだ、一人でも落ちたら参戦する。」
「了解」「御意」
まだ手を出さない方針でその場に居続ける更木隊。
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『隊長2分経ちましたよ』
耳から入ってくるのは清水の声。完全に早くしろ感が伝わってくる声だ。
「……いけるな。必要経費は高いな…。3人とも聞いてくれよ。こいつ倒すのには…」
信の立てた作戦は無茶がありすぎる。
『行けるんですか?』
「これしか、今の俺の頭にはない」
「やってやろうじゃないの‼‼」
再び荒狼の背後を取る赤千川。
「何度やっても同じだ…筋力増強‼‼」
反時計回りに回転し赤千川を豪快に吹き飛ばした。が、正面から銃手が走りこんできている。
「次のお前の相手は俺だよ」
手から小刀を出す信。小早川の改造が施されたブレインに内蔵されていた武器の一つ。
「鍔迫り合いをする気か…圧し折ってくれる」
圧し折るため斧を振り上げる荒狼。その瞬間、信は構えを崩し左腕をノーガードの状態にして左腕を伸ばしている。荒狼は理解ができなかったが機会だと思いそのまま振り下ろした。
「もらった…」
『園原‼‼』
「鎖矢‼」
腕が切れた瞬間に園原は鎖矢を信の掌を貫通し腕に刺さり上手く接合する。そのまま、鎖矢から鎖が出て繋ぎ合せる。信の鎖矢の鎖が繋がった先は、荒狼が先ほど避けた鎖矢の先端。
「ビンゴ…」
「食らえ、鎖矢足掛」
そのまま、荒狼は足元を掬われる。そのまま転倒した荒狼の四肢に光矢を撃ち込まれ行動不能となる。
「…ぐっ。動けん」
「押さえましたよ。試験終了すか?」
更木隊の存在に気付いていた、信。
『……逮捕が済んで終了だ』
『じゃ、お願いします』
『は?』
逮捕を自分達に任せる、信の言葉が理解できない更木。
『だって、逮捕したら終了なんすよね?だったら俺らの隊は、他の隊の手伝いにでも行かせて貰います』
『……いいでしょう』
よしじゃ、行くぞと言い残し信達は付近の隊員の手伝いに向かった。
「全てお見通しという感じでしたね」
「彼千里眼所有?」
「どうすかね?更木さんはどう思いますか?」
「そんなことより捕まえるぞ」
「了解」「御意」
荒狼に近づく更木隊。まずは右手次に左手に能力封印手錠を掛け、光矢を引き抜く。
「無様だな、荒狼さん」
「……また、お前が俺を捕まえるというわけか」
「そういうことです。とりあえず、換装を解かせていただきます」
心臓部めがけて剣を振り下ろし、荒狼の換装を解く。
「……じゃ、約束通りお願いしますよ」
ーーーー
全犯罪者の逮捕が確認されアナウンスが入る
『皆様、お疲れ様でした最終試験は終了です。本部に戻ってきてください』
「いや~疲れた」
基地に戻り換装を解く信。
「ホントだよ。あの後何か所走り回ったことか」
「私は、かなり楽させてもらいましたから…」
「お疲れ様でした」
信は手を鳴らし、全員を向かせる。
「ん~。俺らが今後あう可能性は少々あるわけで…まぁ、とにかく今後縁があったらまた、頼むわ」
性に合わんことしたな と思いながらを感謝の気持ちを伝えたつもりの信。
「縁があったら次は敵かな」
3人が同じようなことを言った。
「なんでだよ!?」
「同じメンバーでチームくのは多分最後でしょ」
「私は、隊長と戦いたいですし」
「隊長とチーム組むと無茶言われるから、いやだ」
「なんだと!」
4人で笑いあった後アナウンスがかかった。
『お疲れ様でした。結果は皆さんのブレインに直接送りましたので確認ください』
――――
合格のメールを確認後、青波の元に戻った信。
「どうだった?」
「合格ですよ。そっちは?」
「当然合格だ」
その後、翼・ドラゴ・紫花と合流した2人。
「さて……我々は全員合格とという偉業を達したわけであるが確認したいことがある」
「何だ?」「何ですか?」「…」
「……簡単に言えば、本部所属か本部管轄支部所属の2つ。どっちかは、お前の自由だ」
「本部管轄支部所属って?」
「うちの部活がそれに該当するな」
「どっちにするか か」
「即決しろ」
珍しく決断を迫らせる青波。
「……本部かんか~何とかで、オレは行く。どうせ、本部に来れるかもしれないし」
「それなら、私も管轄所属で」
「オレも本部管轄で行こう」
「翼と同じく」
4人全員が転属しないという意見で一致した。
2章:APPO本部試験編終了。3章は……どうしようかな~




