8月④
「いや~そんなに広くないな」
悪態をついているのは信。
「愚痴るなよ。数に限りがあるんだから…。そんじゃ、荷物ここに置いて…」
「…どうすんすか?飯ですか?」
「これだ。ほっ!」
近場にあったリモコンを自分の近くに寄せて電源を付ける青波。テレビをつけDVDを読み込ませる。
「何見ようとしてるんですか?」
「まぁまぁ~待ってろ」
読み込みが終わった画面には小早川が映っている。
『いや~解説がこのような形に成ってしまってどうも、申し訳がない…じゃ、始めます』
画面には小早川の解説と言うテロップが出ている。
『…え~と、今回の映像は4月ごろにとっています…流すのが何時になるのやら。そこは青波君にお任せしますか…』
では、と言いながら黒板に人間の頭の形の絵をかき始める。
『え~、人間の脳には、まだわかってない部分が山ほどあります。そこで…いきなりですが、ブレインを使うための機関が脳にはあります』
そうだったのか…と納得する信。
「納得するのは、まだ早~い‼」
「…マジですか」
目を画面に戻すと解説が続いている。
『ブレインを動かす機関は左脳と右脳の間にあります。普通は見えない機関ですが、APPOの技術によりそれを見ることができます…名はB-Brain』
頭を上から見た時の断面図の真ん中辺りにB-Brainと書く。
「B-Brain…」
『そして、ブレインを動かすためのエニマポ…例え話をしましょうか…。ブレインを電池で動く物。B-Brainを電池。そして、電気がエニマポ。これで、わかりますね…この後どうなるのかも。青波君に回答を聞いてください』
お判りですよね?という質問に、
「電池が切れたら…どうなる、と思う?」
「戦線離脱ですか?」
「そ言うこと~」
『まぁ、これで大体は解りましたか?では…』
画面が暗くなっていった。
「これで、疑問が解けた訳だ」
「そうですね…まだ理解が追っつかないけど」
「その内、わかるさ。あそ~だ、ほい、これ」
何やら、冊子を投げ渡す青波。表紙には「APPO東本部説明会兼隊員採用試験」とある。
「…えっ。はぁ~。そう言うこと‼?」
思わず大声を上げてしまった信。
「やっと、理解したか…明日からはハードだぞ~」
笑いながらある意味の警告をしたつもりだった青波。本当の試験は明日から…
そして2日目が始まる
――――
2日目の朝、部屋に大声が入る
『おはよ~!ございま~す!皆さん、ブレインを起動して、ささっと会議室に集まってください!』
入ってきた指示に少々頭に来て居るドラゴ。
「ふざけているな…さっさと行くか。翼?」
昨日二段ベッドの上にいたはずの翼の姿が見えない。
「こっち、こっち。洗面台にいる」
声のした方に向かっていくと、目の前に白い髪で顔が覆われた翼がいた。
「…大変そうだが急げ」
「まぁ、待ってくれ」
櫛を使いながらいつもの髪形に整えていく翼。
「OK…悪いな」
「気にすんな。いつものことだろう?」
「う~ん。まぁ…そうだな」
2人ともブレインを起動し指示された場所に向かう。
――――
集まった会議室には合格者たちが座って待機をしていた。昨日より人数は確実に減っており残り人数も60人程しかいなかった。
「なに、考えなんすかね~…いきなり集合とか。面白くない」
「まぁ~、何をするかは始まらないと解んないと思うよ…と言うか何で機能いきなり正隊員と練習訓練したの」
昨日の戦闘にオペレーターとして参加できなかったことを少々根に持つ紫花
「…突然の成り行き。そう、向こうから『やらないか』って~」
「ウソつけ」
バッサリと言われる信。
「何で、解んだよ‼」
「ウソつくと信は必ず目が右左に動く」
「普通は皆、そうじゃないのか?」
「…勘かもね」
「は?勘で当たるのかよ…恐ろしいぞ」
「恐ろしくはないでしょ…」
会場が静かになる。壇上に登っているのは正面から見て右に『Ⅱ-Ⅱ』のマークを付けた背が高い隊員。
「え~、三次試験の担当をする東谷賢介だ。皆さんよろしく。三次試験の内容を説明する…実戦が三次試験だ。今から皆のブレインに数字をランダムに送る。それを見てくれ」
「む?Ⅰ-Ⅰ」
信のブレインには『Ⅰ-Ⅰ』の文字が浮かび上がっている。紫花は『Ⅱ-Ⅵ』
「今、送った番号が意味するもの。それは、今回の試験の対戦相手の隊長が属する部隊の番号だ」
疑問そうな者もいれば、納得をしている者もいる。
「え~、例えば。俺の隊、東谷隊の番号は『Ⅱ-Ⅱ』だ。今ブレインにⅡ-Ⅱの番号が出ている者は俺と戦うってことだ」
「え~!?…終わったかも。俺、Ⅰ-Ⅰだ」
落胆し顔を机に当てている信。不合格に違いないと思った時、
「なお、今後の試験は落ちることはない。思いっ切りやってくれ。では、各自それぞれのメンバーで合流後、ラウンジに向かうこと。以上だ!」
説明はそれだけで終了してしまった。
――――
「が~。も~何でⅠ-Ⅰ何だよ!」
「良かったな~。ボコボコにされて来いよ」
「こんの~…お前ら何番だったんだよ!?」
「Ⅱ-Ⅵ」と紫花。
「Ⅱ-Ⅲ」と翼。
「Ⅰ―Ⅴ」とドラゴ。
「Ⅰ-Ⅶ」と青波。
「一緒な奴いないんかい!」と信。
「何時までも俺らに頼るなよ」
親指を上に立てながら半分本気とを取れる言葉を発する青波。
「ぐ~。こういう時だけ先輩面して~」
「まぁ~。ドンマイ、ドンマイ…そろそろ行かないと他のメンバーに迷惑だろうから…解散!」
まずは、メンバーを探さないと行けないらしく近辺でⅠ-Ⅰの番号を持つ者を探す。がなかなか見つからない。未読のメッセージが到着していることに気付く信。
「…差出人は、赤千川 彩子。何々、『ラウンジに行かず会議室に残ること』…」
すでに会議室外に出ている信。読み終わったとほぼ同時に会議室にダッシュをした。
――――
「相も変わらずですね…ここは」
一人で誰もいない廊下を歩いている小早川。あまりにも気が抜けていた為か、後ろから近付いて来る人間に気付かなかった。肩に手をポンと置かれ一瞬心で驚いてしまう。
「何だ…源治さんか…驚かさないでくださいよ」
自分の後ろに立っていたのはAPPO日本本部最強の男と称されるほどの剣の使い手の竜ヶ崎源治。
「…驚ろかすつもりは、なかったのだが。小早川元支部長」
「昔のことですよ…なんか用があるんですね。僕に源治さんを当てるということは」
「…本部長がお呼びだ。同行してもらえないか」
「御厨さんですか…分かりました。ついでに『同行』って僕は悪人じゃ在りませんからね…」
「…昔より喋るようになったか?」
微かに感じた疑問は、
「どうでしょう?」
の一言で流されてしまった。
「…与太話はここまでだ。行くぞ」
「了解です」
2人は、本部長の元に向かった。明日から行われる、最終試験の打ち合わせのために…
――――
「ハァ、ハァ。遅れ…まし…た」
息を切らしながら会議室に入る信。会議室にいるのは、女子二人の男子1人。
「遅い!!」
横で髪を二つ縛りしている女子が言う。
「ですよね…」
防砂ゴーグルのようなものを首元に掛けている女子
「はぁ~…早くしませんか~?」
髪がボサボサな男子が机に突っ伏しながら言っている。
「すみません!…」
初見の人によく言えるな…と突っ込みたくなったが言わなかった。時間が惜しく感じたためだ。
「隊長は、俺なのか…」
「そうよ…さっさと自己紹介して作戦立ててⅠ-Ⅰの隊長を倒しましょう」
「指示速いな…」
「…彩子さんは、せっかちなんですよ…あ、私は園原紅音です」
「僕は清水惇慕で~す。どうぞ」
「私は、 赤千川 彩子」
「…俺は、赤柱信です…そんじゃ、作戦室に行きますか」
彩子は納得していなかったが、ついて来た。
(…大丈夫かな。この部隊…ぶっちゃけ心配だわ。心配していても始まらない…とにかくコミュを取るかな)
「あ~…園原さんと赤千川さんは知り合いなのか?」
さりげなく情報取集をしたい信。
「そうです。同い年の幼馴染です」
「…」
「清水は今回一人で参加したのか?」
「ん~最初は5人で来たんだけどみ~んな落ちたよ」
「…なんか悪かった」
「気にすることない皆が落ちたのが悪いんだから」
「棒読みかよ…」
少し話ながら作戦室に入る4人。
「…そんじゃ、ポジションの紹介をしてもらっていいか?俺は銃手」
「私は斧戦士、紅音は… 」
「私は弓射手ですよ 」
「僕はオペです」
作戦が組みづらい…おそらく、ここ1年以内で最大の苦境に立っていると自分で思う信であった。
――――
最上階にまで連れて行かれた小早川。竜ヶ崎がドアをノックする
「入るぞ」「失礼します」
そのまま暗室のような部屋に入る。
「来ましたね…それでは作戦会議Startですね」
部屋内にいるのは5人。コの字型の机の中央に座っているのが本部長の御厨。左隣にⅠ-Ⅱ・碧川隊の碧川。その隣に竜ヶ崎の弟子の風鳥。御厨の隣には竜ヶ崎が着席。もう隣は空席。
「僕は、ここに座るのですか?」
「…そうだな。…本当は、東谷が座るんだが…今、奴は試験監督者だ。お前が座れ」
「了解です…で今回は」
「はい、今回の議題Themeは…明日の四次試験です。よって、Meetingをします。碧川君」
「提案者は本部長です。説明はご本人で」
いつも様に冷めていてCoolですね と思いながら説明を始める御厨。
「…皆さんも分かっていると思いますが、年々能力犯罪は悪化傾向にあります。例え、隊員であっても
死する可能性があります」
そこで…と言いながらいつものおどけた感じからかなり真剣に顔になり
「そこで…四次試験では、戦線離脱を全ブレインから外し試験を行いたいと考えています」
戦闘体が戦闘不能になった時、自動で発動する戦線離脱。それを外すということは、戦闘不能になった時、生身にその場に残ることを意味する。
「…そして試験監督者は我々、合格者の相手は元能力犯罪者達にしようと思います」
面倒なことをしようとしたものだな と考える小早川。
能力犯罪者はその字の通り、能力を不正使用等で捕まった犯罪者たち。そして彼らは依然増加を続け、噂のレベルではあるが組織を作っているらしい。
「ホントにやるのか?」
「えぇ、風鳥君。ホントにやります。軽い気持ちで隊員になられても困りますから」
「…確かにそうだがよ」
「という訳ですので、満場一致でこの試験を行います」
いつ多数決取った!! と叫びたがったが、今の御厨は本気だというのがよく解る。その彼の邪魔はしてはいけないと心の中でブレーキがかかる。
「それでは…皆さん戦線離脱の電源を今夜落としますか」
「…了解」
「解りました」
「了解」
「わーった」
明日の試験は一部の隊員は窮地に陥るかもしれない…




