魂
鎖が全て体内に入った瞬間、その男は時が止まったかのように微動だにしなかった。
「なかはどうなってんだ?」
越智が口の中を確認しようとした時、大量の血とゲロが口から滝のように出てきた。道路は血の海になり、その男もそのまま動かなくなった。だが咳のような嗚咽のような、ゴッゴッという音とともに口から鎖が戻ってきた。鎖は血で赤くなり、内蔵の破片のようなものが、あちこち付いていた。
「おえー、グロいな」
越智は今にも吐きそうで、具合悪そうだった。そんな越智の背中をさすっていると、車の中から指をくいと曲げこちらを呼んでいる、親分の姿があった。
「越智助手席見てみろ。どうする?」
「お前の親父がいないんだもしあいつがピストルなんか持ってたらどうすんだよ」
「俺はもうピストル撃てるようになったからよ大丈夫じゃねぇか?」
「越智はここで待っててくれ」
そう言うと越智の背中をさするのはやめ、車の方へ向かっていった。
「鳩次、やっぱ俺も行くよ」
止めようとしたが、内心かなり安心したため、止めることはできなかった。
そして、越智には鎖を持たせて後部座席に乗らせ、俺はピストルで狙い続けながら運転席へ乗った。
「お前らにどうやらしてやられたらしい」
「新入りも、ミヤもみんな親分置いてくたばりそうだ」
「で、なにが言いたい?言っとくが俺達を誘拐なんて無理だぜ」
「お前ら誘拐する意味がねえ。言いたいのは鎖のことだ」
「何を言ってもこの鎖は渡さないぞ」
「その鎖にはな裏切り者の魂が1つ入っとる」
「魂?」
「魂とはな1人1つ持ってる第2の心臓みたいなもんだ。無いと死ぬ。ほとんどのやつは見えないがな。」
「お前は見えるのか?」
「見えねえな」
そんな嘘くさい話あるか、そんな顔をすると
「嘘だと思うならなぜ鎖は動くんだ?」
「話が噛み合ってないだろ…鎖に魂でもあんのか?」
「ない。だが付喪師と言ってな…魂を物に移せる者が居る。他にも魂を混ぜたり離したり観たり触ったり」
そんなものがありそんな人達がいたのか。自分の知らない世界に心は踊り、越智もいつものニコニコ笑顔に戻り興味津々だった。
「詳しい事は親父に聞けばいい。あと鎖はもういい…あのクズ親父が関わってんなら損しかねぇよ。」
そう言われると、車から降ろされ、新入りとミヤを担いで車に乗せ、どこかへ行ってしまった。それを見たあと我に返り
「親父を助けなきゃ、越智は俺ん家に行って救急車を呼んでくれ。」
越智は頷くと走って向かった。ふと親父の顔を見ると目は開いていて起きてたらしい。
「鳩次、ヤクザの言葉信じるか?」
「信じるよ。親父のことも信じてるから」
10分後救急車が到着し親父は病院へ向かっていった。
「越智今日はごめん…」
「別に気にしてねぇよ。ピストル触れたしな!」
「じゃあ帰るわ。またな」
「またな」
そう挨拶すると越智が見えなくなるまで手を振り自分も家に帰った。
家に帰るとすかさず母さんからのキツイ説教が入り、明日の準備をしたり飯を食ったりして、風呂に入れたのは8時頃だった。鎖も連れて風呂に入れようとしたが頑なに拒否したためシャワーだけかけてあげるとひと通り汚れが落ちた後にすぐタオルに包まっていた。
「ヤクザが言うには元は人だったのかな、言葉わかるし」
風呂を上がると歯を磨きすぐ布団へ飛んだ。
そして5分も経たづに深い眠りに入った。
朝になりだいぶ時間が過ぎたが母さんは起こしに叫ばない。そうか今日は休日なのだ。そんな事を思いながらウトウトまた眠りに入ろうとすると
「鳩次!起きなさーーい!」
とまた起こされた。休日くらいゆっくりさせてくれ、そう思いながらもリビングに行くと、何故か休日だけ早起きな兄貴が朝食を済ませ、テレビを見ていた。
「うるさい奴らがいなくて清々しい朝だな。おはよう鳩次。」
「おはよう」
兄貴とたわいもない会話をしながらいつもの朝食わ食べていると
「母さん予定あるからお父さんのお見舞い行けないのよ、だから誰か言ってくれない?ほらこれお土産あるし」
「俺は行くけど兄貴行く?」
「行かねーよ。誰が行くかそんなも」
「二人で行ってやりなさい。今生の別れかもしれないのよ!」
兄貴は死ぬわけないや聞く意味なかっただろとか愚痴を言っていたがそんな事お構い無しに2人車に乗せ病院へ向かった。
病院に着くと俺達だけ降ろされ車は行ってしまった。
「鳥本 鳩一のお見舞いに来ました。」
「ご家族の方とわかるような身分証明書はございますか?」
「ございます、ございますぅ」
兄貴のふざけた返事に鼻で笑ってやっていると外から聞き覚えのあるエンジン音がした。
驚いて振り向くとやはり、あの黒いセンチュリーが来ていた。そりゃそうだヤクザだってお見舞いくらいする。そして合わなけりゃ大丈夫。そう思うとひとまず胸を撫で下ろした。
「おい、行くぞ」
「分かった」
部屋に入ると親父が苦しそうに寝ていた。
その隣で見覚えのあるボコボコの顔がいた。




