逆襲
親父は道路に横たわりそのまま気絶した。ボンネットにいた男も車の前で倒れ込み、もう起き上がることは無いだろう。
「親父の事はすまねぇな、そうでもしねぇと止まんねぇからよ。あ、でも逆恨みはやめろよな親分にやれって言われたことだから。な?」
親父がいない今俺らに勝ち目はない。このまま鎖を渡してしまおうか。だがやすやすと渡してしまうと親父がこうなった意味無くなる。
だが越智はもう戦意喪失していた。何も言わずに鎖を渡してやれと言わんばかりにこちらを見ている。
「ほれ、もういいだろ?いい加減、もう返してくれないか?」
「無いだろ…」
「ん?」
「お前らのっていう証拠は無いだろ!」
越智は怒りの眼差しを向けている。逃げたいなら逃げればいい、だがこの鎖はコイツの所に渡るのに嫌がっている!
「証拠?なんかあるかな」
「怪我をした女だソイツを連れてこい」
いなければそれでいいし、親父が目を覚ますまでの時間稼ぎにもなる。だが意外と早く答えは返ってきた。
「ソイツだよ、鎖に魂が入ってる」
訳が分からなかった。越智も頭にハテナが出ているような顔をしていた。
「デタラメ言うな。魂ってどういうことだ」
「それ以上は言わねぇし、言えねぇ、まぁそこまで言ってやったんだいいから返せ、流石にカタギ殴りたくねぇんだ」
そう言うと近づいてきた。もうここまでかというとき、鎖が勢いよく飛び出てきた。
だからって何ができる鎖1本と細身の高校生がヤクザ相手に勝てるわけが無い。首を締めたとしてもヤクザの力なら一瞬で投げ飛ばされるだけだ。
そんな暗いことを考えていると、越智がハッとしたかのように肩を叩き、少し逃げ、ひとつの作戦を伝えてくれた。
「確かになそれならいけるかもしれないだけどそんな隙あるか?」
「ピストルだよ。親父さんが握ってるの取ってお前がピストルで狙って怯んだところを俺で抑える。」
「ならピストルで撃ちゃいいじゃねぇか。」
「馬鹿言え、ピストルは撃ち方間違えると出血、最悪骨折だ。それに弾が残っているかもわからねぇだから無闇に撃つ真似するなよ」
「分かった…来るぞ」
そう言うと近くにあったピストルを拾いやつに向けた。
「おいおい、なんの真似だこれは」
声は明らかに怯えていた。
「そこに転がってるやつみたいになりたくなかったら鎖は諦めろよ」
「あまりヤクザを舐めんなよぉ…小僧」
そう言うとベルトからピストルを取り出した。
「男なら早撃ちは一度は憧れるだろ?」
「俺みたいな西部劇好きの高校生はな、憧れるのが1度だけなわけねぇだろ」
そういうと俺は素人のような手つきでピストルを向け狙い引き金を引いた。
「へっ、外れてるじゃねぇか素人が」
「いいや命中したよ。しっかり眉間にな」
男は焦ったように
「親分ん!」
と叫び後ろを振り返った。
だが親分はピンピンしてこちらになにか叫んでいる。
「みや!後ろだ!」
そう親分に叫ばれ慌ててまた振り返ってももう手遅れだった。越智は野球部で培われた身体で男の首を抑えつけ、道路に倒れ込ませた。だが流石の越智でも振り落とされるのは時間の問題だ。男は叫びながら越智を殴り続ける。だがそこに鎖は飛び出してきた。鎖はすかさず、ずっと叫んでいる男の口の中に入り込み喉を滑り込み、その1.5メートルある長さがすっぽり入っていったのだ。




