襲撃
車が勢いよく発進した。昇降口へ入る直前、ヤクザの
怒鳴る声がしたが流石に学校の中へは入ってこなかった。
だが危険な状況なのは変わらない。ヤクザに鎖を持っていること、そしてこの学校に通っていることがバレてしまったのだ。越智にはヤクザがいた事は言わなかった。なぜなら越智をこの状況に巻き込みたくないし、これ以上ヤクザに悪いイメージを持って欲しくないのだ。
越智になにがいたのかと散々聞かれたがなんとか、かわし続けやっと下校の時間まで来れたのだ。いざ帰ろうとした時、またもや越智が来たのだ。
「だから言わないって言ってるだろ」
「あぁ、もう言わなくて大丈夫だから今日は一緒に帰らせてくれ」
「なんで?てか部活は?」
「今日は休ませてもらった。」
俺はもう無所属だが、越智は野球部に入っている。
だがなぜ部活を休んでまで一緒に帰りたいのだろうか?
「なあ鳩次、その鎖、庭に落ちてたってことは元々持っていた人がいるんだろ?その人に返そうぜ?」
「捨てたかもしれないじゃないか、それに返すつっても持ち主分からないし…」
「動く鎖を捨てるか?それに鎖の持ち主は今日聞かれたはずだ」
一瞬なんのことか見当もつかなかった。だがふと朝のことを思い出すとおのずと答えは出てきた。
「鎖を持った女…!」
「そうだヤクザが言ってただろ?」
「でも場所が分からない、どうする」
「逃げてきた道を辿って探しに来ているかもしれないだろ」
その事には了承しひとまず家へ向かうことにした。
だが 帰っている途中も辺りを見回したり寄り道したがそれらしい女はいなかった。
そしてとうとう家の近くまで来てしまった。
「そろそろ着くな」
「あぁ、それらしい女はいなかったが久しぶりに一緒に帰れて楽しかったぜ!」
「まぁ確かにな」
だが楽しかったのも束の間、目の前には朝に女と鎖のことを聞かれた場所に同じように黒のセンチュリーが止まっていたのだ。
そして朝とは違い、人数が1人増えており、後ろ側から見ても、運転席の男と、親分と呼ばれていた後部座席の男は助手席に移動していたがそれだと分かった。
だが1人、車に寄りかかって辺りを見張っている黒服の20代前半くらいの童顔の男が増えていた。
息を殺し、越智に話しかけられても最低限しか会話せず早足で通った。
「お前ら、ちょっと待ちな」
俺は逃げようとしたが越智が止まったため仕方なく止まり待った。 なにやら親分と会話しているらしい、だが運転席側の窓から話しかけているため、運転手の奴は迷惑そうな顔をしていた。
「おい、お前、聞いてんのかおい細身の方に言ってんだ」
お前も細身だろと思いつつ、仕方なく振り向いた。振り向いた瞬間足はもう動けないくらい固まっていた。先に振り向いていた越智もいつもの明るい笑顔は消え、顔は白く今にも泣きそうだった。その童顔の男の手には童顔には似つかない、ピストルがこちらの脳天を狙うように持っていたのだ。
「さあ、鎖を返してもらおうか。そもそもお前ら鎖になんも関係ねぇじゃねぇか。とくにその半泣きのでかい方とか」
そう言うと銃口を越智の方へ向け引き金を握った。
越智は声にならないような助けてを連呼しついに涙がたれ始めた。
コイツは明らかに俺らで楽しんでいる、いつもなら誰に対しても言い返し、手も出たりするところだが今はいつもと立場が違う。俺の命はあっちの手中にあるのだ。そんな中で反論でもすれば俺の脈は止まるだろう。
「お前らさっさとなんか言ったらどうだぁ」
そういうとニヤけた半笑いで俺の頬に向かって引き金を引いた。
辺りに家がほとんどない田舎で、サイレンサーが付いているとはいえ、音は大きかった。
さらに体は固まり冷えてきた。まるで今から死ぬ準備をしているように。童顔の男は運転席の男にピストルを使ったことを酷く怒鳴られていたが、そっちの方に振り向きもせず、また2発3発と俺の肩や足めがけてかするように撃ってきた。
もう鎖を渡して帰りたいと思った。だが手も足も動かず越智も隣で声にならないように泣いていた。
恥ずかしながらある男を呼ばずには居られなかった。 幸い家は近い、俺は今出せる1番大きい声で叫んだ。
「親父ぃー!」
その時、ピストルよりも強く荒々しい足音が近づいてきた。




