裏切り
「鳩一は殺されますかね」
「若頭が捕らえられている今、人質の価値は無いからの、尋問…いや拷問されてころされるのは確かじゃ。」
「そうですか…やっぱり鳩一君はもう…」
「じゃが悪いことだけという訳でもない。下田の話を聞くに、ひとつ分かったことがある。」
「なんです?」
「普段、ヤクザは武器を持たんのじゃ。それに空手家と屈強な男と二人の時にたまたま出くわすとは、偶然にしては怪しい。」
「何が言いたいんです?」
「組の中に裏切り者がいるかもしれん。」
「そんなわけ………」
宮子はあるひとりを思い浮かべた。
「そんなわけ……」
長く感じる沈黙が流れた
「お茶出来ました。」
「どうもじゃ。」
――海星組、事務所にて――
「いつから怪しんでた?」
「まぁ、密輸のこと聞かれた時だ。いや、あれは確信になった時だ。怪しんでたのは、車で話した時だ。」
「そんな早くからか。でもなんで密輸のこと教えてくれたんだ?」
「それは…お前を…」
「いや、もういいよ。そんなんだから負けるんだ。そうだ、お前もこっちに来ないか?お前のその力なら、どこまでも上を目指せるよ?」
「断る。すぐ裏切る奴は、どこに行っても信用されない。お前は裏切り続けたんだろう。お前を大切にする奴はいたが、信用する奴は一人もいなかった。1番わかってんのはお前だろ?花」
図星なのかイラついたのか、数秒、無言の間が続いた。
「僕だって最初は裏切るつもりはなかったよ。なにせあんな和やかで心から楽しめた空間、体験したこと無かったからね。」
「じゃあなんで裏切る真似なんかしたんだ」
「分かんねぇ。そういう性なのかもな。負けると分かったら、すぐ裏切る性、でも誰だって、お前みたいに破滅の道へ突き進める訳じゃないんだ。」
「そうなのか。それが理由じゃない気がするが。」
「あーそうだそうだ、もう一人知人がいるんだけど挨拶したい?」
「もうひとり裏切り者がいるのか?」
「裏切り者じゃないけどね。おーい!来てくれー!」
もう1つ足音が聞こえて来た。それは子供の頃から聞きなれた。足音だった。
「クソッ、最悪だ。史上最悪の敵だ…」
その敵は薄汚い白衣を身にまとったいかにもな、研究者がいた。
「久しぶりネ、気分はどうだネ」
「最悪の気分だ。まさか、1番敵にしたくない奴が敵だとは…」
「ありがたい言葉ネ、で、負けそうなんだってネ?」
コイツがいるのは想定外だ。この後何をされるか全く分からない。だが、人にとって最悪で残虐な実験行為に間違いは無いだろう。
「なんでヤクザなんかと協力してんだ?」
「まぁ、気になる人がいるネ。好奇心をそそらされる。実験が捗りそうな気になる人がネ。あ、正式にはヤクザじゃないんだっけ?」
「好奇心旺盛な大人とは、呆れたもんだぜ。」
「好奇心を甘く見ないで欲しいネ好奇心が人を成長させ続けたのだからネ。」




