下田の強さ
下田が逃げ損なった。ますますまずい状況に陥ってしまった。
「おい、すぐにその手を離せ、女を殺すぞ。」
仕方なく、空手家を解放した。
「ご、ごめんなさい、私を置いて逃げて」
「そんな事したら男じゃねぇな」
「絶対に助けますから…!」
下田は申し訳なさそうに啜り泣いた。
「交換条件にしてやるよ。女は見逃してやる。その代わりおとなしく捕まってくれ。」
「早くしろ」
空手家は車から手錠やらガムテープやらを持ってきて、俺を拘束した。そして助手席に乗せられた。
「俺が運転しましょうか?」
「いやいい。隣で見張らないとな。お前は女を見張れ。」
「あの女、なんか変ですぜ、なんか両手をこちらに向けてます」
「自分の失態で狂ったんだろ。ヤクザは失態を重んじる生き物だからな。」
車が発進し、ついに拉致されてしまった。
「や、やっぱり変ですぜ、何か、何かとてつもない違和感が…」
「まだ言うか!もうアイツは何も出来ないんだ!」
「うあっ、なんだ、うおおお」
空手家が後ろを振り向くと半分が粉塵となった仲間がいた。
「どう、どうした!ヤバい!なにかヤバい!」
そういうとエンジンを唸らせ、速度を速めた。
海星組の事務所まで着くと、空手家は一気に、ため息をついた。
「ひとまずは、大丈夫だな。」
後ろを振り向くと、仲間の姿はなく、あるのは山のように積もった粉だけだった。
「車で逃げられた…救えなかった…私の力不足で…距離が離れすぎてた。ひ、ひとまず親分に連絡を…」
下田は携帯を取り出し、親分に連絡し、山になった粉の横を通り、走って事務所へ戻って行った。
事務所に着くと、親分が待ち構えていて、優しく励ましてきた。
「大丈夫じゃ。あの新入りは一筋縄では行かんもんじゃ。きっと、抜け出すじゃろう。だから安心せい。」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
親分の激励でまた涙を出してしまった。
「下田や、お茶でもついで来てくれんかの」
「はい」
そう言われると急いでお茶をくみに、キッチンへ向かった。
「まずいことになったのぉ。鳩一はどうなると思うかの?」
親分は難しそうに宮子に聞いた。
「人質は若頭で足りるし、間違いなく殺されるか、拷問されるか、だわね。」
「参ったのぉ、新入りというのに。」
「まだ死んだって訳じゃないわ。希望を持ちましょ」
「そうじゃの。親分として何人たりとも死なせる訳にはいかん!」
一方海星組の事務所では、鳩一が椅子に縛り付けられていた。
「あの女は一体なんなんだ。一緒に帰るほどだから知っているだろ?」
「知らねぇな。空手家を出せ。サシでやりたい。」
「黙れ!仕方ない…あの人を呼んでくれ!」
腹や弾傷を殴られ蹴られした。止血は一応されているだから痛みはさほど無い。すると奥から足音が聞こえてきた。
「身体に穴が沢山空いてるのに、元気いっぱいだな」
「空いてようが、無かろうが、お前を殺せる。」
「そういうの聞きたい訳じゃないんだよな…分かった。知り合いなら話しやすいかな。おーい来てくれー!」
「知り合い?」
そうするとまた1つ足音が聞こえてきた。
「よう、だいぶ痛めつけられてるね」
「やっぱり怪しいと思ったぜ。」
「後からはなんとでも言えるからね」




