敗北濃厚
次の日、やはり花は来なかった。
「花のヤツ来なかったな。逃げたのか。」
「そうじゃのう。誰だって負ける戦いに赴きたく無いじゃろう」
「まだ負けか分かんねぇよ。仲間も増えたしな。元気出せ、じじい」
「船が来なかったんじゃ。武器がないんじゃ。どこも手を貸してくれんかった。」
かける言葉が無かった。最初は負ける戦いだと思ってた。だが仲間が増え、人数は五分になった。だが拳銃も無く、勝ち目はもう途絶えたと言ってもいい。
「みんなを呼んどくれんか。」
皆が集まり親分を待った。10分ほど経った後、親分がやつれた顔を頑張って笑顔にしながら戻って来た。
「こんな忙しい時に呼んですまんのう。今日の朝、届くはずの物が来なかった。何故か海星組が船の事を知っておったんじゃ。」
ものすごく暗い声で話す親分を見て皆、負ける事が確定している事よりも。いつもと違う親父の元気の無さを気にかけていた。
「な、なんだ、それだけかよ。まだ負けたと決まった訳じゃないだろ?だから元気だせよ親分。」
「話はもう一つある。戦をする理由じゃ。」
「そう言えば、分からなかったな。まぁ親分の為ならどこまでもな。」
「なぜ戦を起こすかと申すと、ワシは、長年の働きぶりと、貢いだ多さが認められ、恩星組、雲星組、海星組、それ以外にもあるが、それの親会社、岸星会の頂点、つまり会長に選ばれたんじゃ。」
「す、スゲェっすよ!親分!でもなぜ戦を?」
「その座を狙ったまでじゃ。本当は奴らの方が貢いだ額が多いのじゃが、岸星会は内面や日々の行いを見てくださったんじゃ。」
「それに腹を立ててって事ね。」
「そうじゃじゃからワシの身勝手に付き合わせる形になってしもうた。この戦から降りたいヤツは誰でも降りとくれ、ワシはそれを止めることもできない立場じゃからの」
「誰も降りねえよ。俺達を育ててくれた。親分にそろそろ、恩返しをしないとなと思ってたところだよ。」
「若頭も助けなくちゃだからな。」
「みんな、本当に感謝する。もっと早くに言うべきじゃった。みんなが離れて行くのが怖くて、言い出せんかった。弱くてすまんのぅ。」
涙ながらにジジイは感謝していた。だがいまだ負ける可能性の方が高い。少し疲れたためその日は早く帰ろうとした。
「もう帰るんですか?まだ2時ですよ。」
「疲れたんでな。じゃあな。」
「わ、私も一緒に帰らせてください!」
疲れているため、ひとりで帰りたかったが仕方なく下田と帰ることを了承した。
「なんで早く帰るんだ?」
「わ、私も疲れちゃってて、」
「そうか…ゆっくり休めよ」
「はい。というか今日、親分元気無かったですね…」
「まぁ、皆が一生懸命貯めた金が全部無駄になったからな。」
「な、なんてこと言うんですか!酷いですよ!」
「事実は事実だ。ジジイは自分の出世争いに巻き込んどいて、しかも敗色濃厚って頭下げただけじゃすまないんじゃないか?」
「お、親分の、こと、酷く、い、言わないでください。私たちを救ってくれた人なんですよ…」
泣きながら訴えてきたので少し焦った。
「分かったから、泣くなよ。なんでそんなにジジイの事を思ってやれるんだ?」
「みんな事情はそれぞれですけど、私は親からの史上最悪な虐待から救ってくれたんです。まだ小学生の私をずっと事務所に住まわせてくれて…いっぱい遊んでくれました。でもヤクザの事は一切教えてくれませんでした。そんな親分を一言で言うと、優しいんです。人の為になることは、自分の何を犠牲にしても、するような人です!」
「そうか。それなら親分の為に戦わないとな。」
「そんな親分がやっと自分のために戦うんです!助太刀しない訳に行かないでしょう! 後…新田さんの事もあるし…」
「そういえば、若頭も救わなくちゃな。何から何まで全部大変だな。」
「若頭は任せてください!私は付喪師の家系で…」
いつの間にか、大勢のゴリラみたいなガタイのいい男達に囲まれていた。その中にはあの空手家の姿もあった。
「きゅ、鳩一くんん…」
「これはこれは、恩星組の鳩一?くんじゃないですか、奇遇ですね。」
「海星組のやつらか、こんな卑劣な真似してっから、お前らの親分は会長に選ばれねぇんだぜ?」
「なんの事やら、ですが会って何もしないのもなんだし、ぶち殺してやりますか。」
「ハナからその気のくせによ。」
下田はずっと俺の服を掴みながら震えていた。
「大丈夫だ。だから服離してくれ。俺が道を作るから真っ先に逃げるんだ。海星組の奴ら、まさか女に手ェ出すほど外道じゃねえよな?」
「お前ら、油断はするな…行け!!」
次々に迫り来る男達を軽々潰しながら、下田が逃げれそうな道を作った。下田を逃がした後、コイツらを戦が終わる頃まで瀕死にさせなければならないため、一人一人、骨や内臓を潰しながら倒して行った。
最後の三人ほどになった時、銃声が3発聞こえた。どうやら、後ろで隙ができるのを待ち構えていた空手家が、撃ったらしい。下を見ると小さな血の池が出来ていた。腹に2発、太ももに一発撃たれていた。
「無双は終わりだ。死んじまいな、バケモン」




