漢になる覚悟
「ごめんだけど正直に話して欲しい」
急な質問で、少し考え込んだ
「え、え、別にどうも思わないかな…あ、あの事があるから話しずらいだけ…かな」
「おー、そうかところでコンタクトとかしてる?」
「え、し、し、てないかな」
コンタクト?つけちゃダメだっけ?
「それなら鳩次の目ぇ、見て欲しいんだけど」
「?、わ、わ、分かった、」
意味も分からず見てみると、目が合ってしまった。ドンピシャで目があったからなのか、気まずさなのか分からないが、胸がドキドキしてしまった。
「どう思った?」
「いや別にどうって…」
はっきり言って胸の高鳴りは止まらない。もっかい、見たい気持ちを抑えられない。越智くんを初めて見た時と同じようにまた一目惚れをしてしまったかもしれない。
「ま、目が合ったならいいや、」
そう言うと越智くんは鳩次くんの元へ行ってしまった。
「鳩次、成功したか?」
「分かんねぇけどチラチラ見ようとしてるし大丈夫だな。」
「よっしゃ!、あとは触れさせずに付き合えばいいんだな!」
「声がデカイ!」
「おぁ、ごめん」
それから放課後になった。それまで話すことも近づくこともなかった、照美がとうとう近づいてきた。
「あ、あ、あの…越智くんの事色々おしえてくれませ、せんか」
「あ、ああ、いいけどどこで話す?」
「いっ、いっ、一緒に帰りましょ。」
「そ、そうだな」
越智にはジェスチャーで今日は一緒に帰れないと送り照美と一緒に帰ることにした。
「んで…越智のことが知りたいんだっけ?」
「ん?あ、はい…」
そして越智の事を細かく話した。陽気な性格や実はビビりなところ…
久しぶりに新しい友達と話したため喋りは止まらなかったが、それでも照美は微笑みながら聞いていて、話していてなにも苦がなかった。
「越智くんって実は面白い人なんですね。」
「面白いやつだな、だけど眼鏡かけてきたことに気づかなかったのは、少し傷ついたな。」
「わ、私は気づいてましたよ〜」
そんな冗談を言う照美を見て少し彼女でも悪くないのかもしれない。もしかしてヤクザはこれまでの辛かった時間を幸せで返してくれてるのかもしれない。
ついにお別れの時間が来てしまった。照美は俺が見えなくなるまで小さく手を振り続けている。こんな幸せな日々がこれから続くと思うと、心が踊った。だがなぜ越智のことを聞きたかったのだろうか。
そして家に着く手前、あの時と同じあの場所に黒いセンチュリーが止まっていた。無視して通り過ぎようとするがそうはいかないらしい。
「おい、無視する気かよ」
そういったのはあの時親父にボコされた。童顔の男だった。
「なんですか、いきなり。てか今日はひとりなんですか?」
「もう1人乗ってるぜ」
それを聞いて後ろの窓が開いた。
「私がいるよー」
親分かと思ったら、まさか思いもよらない人だった。
「あの時は惚れさせちゃってすみません、」
「言い方変えなー、このバカが勘違いするからー」
「あ? まさかちょろい女だとは思ってたが、ガキにも惚れるとは、バカはどっちかな」
「ガキはお前の顔だよー、お前よりはこの子の方がマシだし、ねー」
こんな子供じみた喧嘩を見せるために俺を止めたのだろうか…幸せな感情にひたり続けたいのに早く終わらせてくれ
「で、何をしにここへ?」
「親分から手紙もらってね、それを届けろと」
「親分が来れば良くないですか。」
「親分だって忙しいんだよ」
そう言うと手紙を渡してくれた。
「じゃあ仕事は終わりだな。じゃあな。あと親父に伝えてくれ、次あったら魂ごとぶちのめすって。」
「言わないでおきます。」
そして童顔の男がセンチュリーを動き出そうとする直前、後ろ側から椅子を蹴られセンチュリーの動きは止まった。
「私が、ここにきた理由は、親分の粋な計らいなの。センチュリーで来たのもそう。だからもしかしたらもう会えなくなるし最後に教えて欲しい事があるの。あなたの名前は?」
照れながらも言おうとした時、後ろの窓が閉じた。どうやら前の男が閉めたらしい、なぜそんなことをと思ったが、だが前の窓がまだ開いている。前の窓から伝えようとしたら、男に、人差し指だけで口を抑えられた。
「女は1人までだ…!それが漢のルールだぜ。」
その時ハッとした。なんと愚かなことをしようとしたのだ。俺には照美がいるんだ。半ば強制的に好きにさせてしまったんだ。本当は好きな人がいたかもしれない。それなのに俺はほかの女に手を出すような、裏切るような真似をしようとしたのだ。
「すみません。俺のために…」
「お前のためじゃないぜ、これはお前のガールフレンドのためだ。てめぇはもう護る側だ、覚悟決めろ。」
「はい。」
「まぁ、俺の名前は教えてやるよ。槍間 福菜だ。」
そうするとニヤッとした後
「こいつに未練がねえか確認だ。もう後ろのやつとは一生合わせねぇ、それでいいな?」
その間ずっと、椅子を蹴られ続けていたがそんなのお構い無しだった。
「はい覚悟はもう決まってます。」
「そうか、なら最後にとっておきの情報だ。コイツは俺の姉貴だ。」
そう言うと、センチュリーは遠くへ行ってしまった。もうここに戻っては来ないだろう。
涼しげな寂しさが辺りを漂っていた。
「槍間 楽来……もう会うことは無いだろう。」
いつも通り家に戻り、手紙を読もう。もう未練はないのだから




