試し遊び
彼女がスーパーから帰ってくると素早く運転席に乗り、こちらをチラリと見たあと深く深呼吸をし、出発した。
「お、親分さーん、ち、ちょっと、暑くないですかー?」
親分は黙り続ける。親分がいつまで経っても返事をしないため、また深呼吸をし、
「君は…暑く…ナイノ?」
「え?あ、大丈夫です」
「そ…そっか。」
その会話の後すぐに彼女はクーラーを付けた。
「あ、つけるんですね」
そう言うと彼女は、顔を赤らめ、恥ずかしそうに頷いた。
親分はいつもと違う彼女を見てニヤけていた。
それから30分程経った。喋ることはないし、何よりこちらをチラチラ見てきてどうも落ち着かない。試しに触って見ようか。そう思い、肘掛けの手を触ると、急な事にびっくりしたのか、気絶してしまった。
しかも高速道路での運転中にだ。車体は揺れ今にもぶつかりそうだ
「うおっ、どうした。何してる起きろ!」
揺れながらも必死に足を伸ばし、何とかブレーキを踏めた。車のタイヤはギャリギャリと音を立て止まった。一呼吸着いたあと親分が鬼の形相でこちらを睨みながら
「おい鳩次、なんかやったんか?」
「いや俺は、触っただけだ…」
「なんで今になって触る?」
「……」
「まぁええ、詳しく説明もしてなかったからな。」
そして彼女が目を覚ました。
「あえ?私なにを」
「なにも」
「てかなんであんたが助手席に座ってんのよ」
親分からの説教と彼女のさっきとのギャップで泣きそうになりながら後ろに移った。
「おい、そんな言い方はねぇんじゃねえか?」
「う…だっ…だっていきなり隣いるからびっくりしちゃって…」
「…?お前どこまで覚えてる?」
「んー、その子の顔みたとこまでかなー」
「そうか、いけ」
「へいへーい」
出発してからすぐ親分が話しかけてきた。
「どうやら、術にかけられたあと触られると記憶が無くなるらしい。」
「え、さっきまでのも、?」
「さっきまでのだけだ」
その後は、彼女に彼女の失った記憶の部分を親分が話していた。
「ちょっとー、私を実験台にしないでくださいよー。」
「おい君、次からは、実力でアプローチしな」
「はい…頑張ります…」
そんなこんなしてる内に家に着いた。
「その力、上手に使えよ。あと悪用はするんじゃねえよ?」
「ヤクザに言われたかないわ」
そう言うと親分はフンと鼻で笑い窓を閉めた。
「運転手さんもご迷惑かけました。」
「運転手じゃなくて楽来だよー。君もミッション頑張ってねー」
「頑張ります!ではさようなら!」
見えなくなるまで楽来さんに手を振り続け、家に帰った。
「親分、あの子の名前なんでしたっけ」
「お前は知らんでいい」
「そう…ですよね…」
次の日になるとやることが無いので、兄貴を惚れさせてみたり、遊んでいたらあたりは暗くなりそのまま次の日を迎えた。




