恋の魂憑依
「下田 照美と付き合えって…いったいどういうことだ?」
「まぁ、用があるのはその親だが、お前が付き合わんと始まらん。下田 照美とは仲が良いのか?」
「いいも何も、別のクラスだ。ほとんど喋ったことはない。それに多分親父がヤクザってこともう知られてるし…」
親父を見ると申し訳なさそうに俯いていた。
「まぁそんなところだろうな。お前には親父の血が入っているからな。女が絡むとロクなことがないだろう」
「は?お前に親父の何がわかる」
「フフ、知っているさお前の親父は昔ヤクザの間で有名人だったんだよ、刃物にも拳銃にもビビらず、拳だけで、ヤクザの情勢も、自分の女関係も全て壊した男ってな」
「そんな小馬鹿にできるなら、何か策はあるんだろうな?」
親父が小馬鹿にしてきた事などどうでもいい、早く契約を済ませ、こいつらと離れたい。
「おい、今日だけ息子借りるぞ」
親父は、小馬鹿にされたことにに腹を立てていながらも
「明日までに帰ってこなかったらお前ら殺すからな」
と言い静かにまぶたを閉じた。
「さぁ親父から許可を貰ったし行くぞ。」
「どこへ行くんだ?」
「行ってからのお楽しみだ」
そう言うと誰かに電話をし黒いセンチュリーに誘導された。黒いセンチュリーに乗り込むと、黒髪ショートの美人が運転席にいた。
「もー、こんな時に呼び出して、今日はどうするんですかー?」
「青森県のイタコに会いに行く」
「イタコ?」
運転手と声が重なった。 それにしてもなぜイタコなのか。
イタコとは死者や神仏の魂を自らの口を通して語らせる、口寄せというものができる人の事だ。
「親分もー、死んだ人と話したいんですかー?」
「違うな、いいから走らせろ。」
「スピってんのか、なんでそんなとこ行かなくちゃならないんだ、」
「スピってる?なわけないだろう、今から会うのは本物だ。あったら分かる」
最悪だ。完全にスピってる。貴重な休日がこんなので潰れてしまった。せめて助手席に座りたかった。
そして親分と美人が本当にたわいのない話をしているのを聞いていたら徐々にまぶたが閉じていった。
「起きてよー、ほらほらー。」
目を開けるとべっぴんさんが起こそうとしたらしい顔が近い。
「す、すんません」
「うわ、キョドってる、まぁいいや、親分呼んでたよー」
そう悪口を言うと親分のところを指差し、寝てしまった。あたりは少し暗いもりの中にいた。ヤクザの親分の所へ向かうと誰かと話していた。 その人は、ジジイのようにも見えるお婆さんだった。
「まだやすの、こんたきじ商売にならねぇじゃ」
「275までだこれ以上は無理だ」
「しゃーねぇなー、今度きりだど」
何を言っているのか分からない。だが何となくお金関連だと分かった。
「お、起きたか、さぁこのババアについてけ」
「なしてこんたワラサなんさ…」
「金払ってんだ文句言うんじゃねえ」
「チッ、行くど」
ついて行くとこじんまりした家の座敷に連れられた。
そして婆さんに言われるがまま座らされた。
婆さんは弓のようなものを取り出し叩いて音を鳴らしつつ、呪文を唱えていた。そうすると急に
「すみません、すみません、そこのわらしに憑して下さや、すみませんすみません」
と言い続けている。流石に異様な姿に恐怖し逃げようとして立ち上がる瞬間、それは終わったらしい。
お婆さんは、片手で目を抑え、ながらポケットの中に手を入れ黒い箱を手渡してくれた。
「それ、かげなせ」
箱を開けるとただのメガネだった。そしてかけると。
「かげだべが?」
「はい」
そうすると顔を上げ目を合わせてくれた。
「何してたんですか?」
「おめに、憑依させてた。」
「どういう…やつですかね?」
「車さ、おなご居るな、メガネはじして、見てみね」
そう言われ外に出て、車に戻ろうとすると、ヤクザ親分が来た。
「どうだった」
「メガネ外してあの人見ろって。」
「ほほう、そう来たか」
そう言ってニヤつきながら後ろについてきた。
「あー、意外と早かったじゃーん」
「おい、こいつの目見てみろ」
そしてこちらを見てきたため、すかさずメガネを外した。
「別に普通…じゃん…早く乗って」
女は明らかに動揺していた。
というか何か小恥ずかしい感じだった。
そして言われるがまま車に乗ると
「えーあんた後ろのんの?いや親分じゃなくて」
「ダメですか、後ろに乗っちゃ」
「いや別にそういうんじゃなくて…」
「おい鳩次、仕方ねぇから前乗ってやれ」
「親分…だからそ…そういうのじゃなくて」
またしても言われるがまま助手席に乗ると女は照れながらも、気だるそうに出発した。
そこから2.30分は無言が続いた。女は妙に顔が赤く火照っており、暑いんですか?と聞いても素っ気なく返事を返すだけだった。そしてそれから4.50分経ったころ、スーパーの駐車場に止まり女がトイレに行くといい、車から出ていった。女のトイレを待っていると親分が急に話しかけてきた。
「今何が起きているか分かったか?」
「女の人が変な事になっている以外分からねぇ。」
「まだ分からんか、いいか?お前が裸眼の時目が合うと恋に落ちちまうんだよ」
「へ?戻し方はあるの?」
「そんなん簡単だ。あのババアのはいつも術にかかったやつに触れると解除される」
そう言うとニヤけた顔で
「試しにあの女に触ってみろ瞬く間にまた何事にもだるそうにする女に戻るさ」
それを聞くと俺は絶対に触らないと魂に誓った




