出会わない方がよかった出会い
戦いの音が聞こえる方へ向かうと案の定。
戦闘が起こっていた。
「戦ってる、戦ってるぅ♪」
ゴブリンっぽい魔物が五匹と粗末な装備をした少年少女が四人。
さて、俺も混ぜてもらうか。
「おりゃ」
少年少女の方が旗色が悪そうだったので、そっちに加勢。
横合いから飛び蹴りをぶちかまし、ゴブリンの首をへし折る。
「ヘイヘイ、雑魚相手に苦戦しすぎじゃない?」
アッパーの軌道で放たれた拳がゴブリンの顔面を陥没させ、脳髄を破壊する。
これで二匹。秒殺にもほどがある。
「ほれ、数的優位はつくってやったんだから、キミらも頑張りなよ」
俺は少年少女に声をかけると。ハッとして四人は動き出した。
雑魚ぃなぁ。ヘボだぜヘボ。おっかなびっくり戦ってるからよくない。
俺なんか幼稚園の年少の時から喧嘩やってるけどビビったことなんか一度もないぜ。
最初の喧嘩は幼稚園の年少組の時で相手は年長組五人。舐めた口を聞いてきたから前歯と鼻をへし折ってやったぜ。
ビビらなきゃ戦いなんて、何とでもなる局面はいっぱいあるんだから頑張ってほしいね。
ゴブリンの肉に刃を突き立てる感覚の生々しさに顔をしかめる姿。魔術か何かか火の玉を出してゴブリンを焼いた臭いに吐き気をこらえる姿。
いいなぁ、初々しくてさ。これが、段々と何も感じなくなってくるんだぜ? いいよね、このギャップ。
「──あの、ありがとうございました」
少年少女のうちのリーダーっぽい少年が俺に声をかけてきた。
ゴブリンの群れに囲まれてたところを助けてもらったと思っているんだろう。
「別にいいよ。俺が手ぇ出さなくてもキミらなら本当に切羽詰まったら自力で解決できたと思うし」
へっぴり腰だったけど、最低限の訓練は積んでいるのは分かった。だから、俺は後半は手を出さなかったわけだし。
「あの、名のある冒険者の方だと思うんですがお名前を聞かせてもらってもいいでしょうか」
あぁ、名前?
どうしよう、異世界の邪神アスラカーズですと言うか、記憶喪失のアスラカーズですというか悩むところだけど──
「グルアァァァァッ!」
うっせぇなぁ。
まだ生き残りがいるのかと思い、叫び声の方を見ると、全長3mはある巨大な豚顔の怪物がいた。
「なに、俺話してんだけど、邪魔すんのやめてくんない?」
少しイラっとしたぞ。
俺は魔物のこういう所嫌い。空気が読めないし臭いし頭が悪いしさ。
「マズいです。あれはハイオークと呼ばれるオークの上位種で──」
「知らん知らん、なんも知らん」
俺が言えるのは俺はハイオクの車しか乗りたくないってことくらい。
まぁ、それもどうでもいいわ。
俺は、駆け出してハイオークの懐に一瞬で飛び込むと、踏み出そうとしていた足を払いオークの体勢を崩す。続けて鳩尾に拳を一発。体がくの字に曲がり、頭が下がったところへ側頭部を狙った回し蹴り。これで前のめりにオークはダウン。俺はとどめに頸椎を思い切り踏みつけへし折ってやった。
「強すぎ」
何処の誰かが言ったか知らんが、もっと褒めて良いんだぜ。
──しかし、変だな。魔物相手だから戦闘能力の強制低下はそこまで機能してないはずだが、思ったよりも力が出ない。
ワンパンで消し飛ばすくらい余裕だと思ったんだけどなぁ。
システラ、デストラが呼び出せないこと。
自力でこの世界からでられないこと。
戦闘能力の低下がシステムとして機能してないこと。
他にも不具合はあるんだろう。
…………ちょっと面倒なことになるかもなぁ。
「あ、あの本当にありがとうございました」
あ?
あぁ、キミたちいたのね。どっか逃げたのかと思ってたけど。
冒険者? の少年少女は立派に武器を構えていた。うーん、そういう気概は大事だね。強い奴にビビらない心。これがほんと大事。
まぁ、逃げたとしても俺は何も思わないけどさ。ビビって逃げるってのは自然な反応だし、それが必要なときもあるんだから、そこは責めないよ。
「あの、すいません僕の名前はカイルです。二度も助けてくれてありがとうございました。僕たちじゃハイオークには絶対に勝てなかったですし、貴方がいてくれなければどうなっていたか」
礼儀正しいね。ピロリン♪ 俺の好感度が1上がった。
「ところで、先ほどは聞きそびれてしまったのですが、お名前をうかがっても?」
「アスラカーズ。アスラでもカーズでも、他に良い呼び名を思いついたらそれで呼んでくれ」
「えっと──」
「あぁ、質問はやめてね。俺、記憶喪失みたいで色んなことがわかんねぇの。脳みそぐちゃぐちゃな感じで記憶がまだらなのよね」
わかることはあるけど、抜けてるところもある感じ。
「どうして、そんなことに」
「なんか邪教の儀式の生贄にされたみたいでさぁ。よくわからんのよね。あぁ、この近くに邪教の神殿があるから気になるなら見に行ってみてよ」
嘘言ってるけど、別にいいだろ。
嘘をつくってのは人間に与えられた高次の脳機能なんだし活用しなきゃね。
まぁ、実際、召喚された時になんかの不具合があったのかもしれないしな。
前にいた世界を追放されて、ほぼ同じタイミングで俺を召喚する儀式が重なるってのも作為を感じるしなぁ。
「ま、とにかく記憶喪失だから色々と面倒をみてね。二回も命を助けたんだから、別にいいだろ?」
「え、いや、それはまぁ構いませんけど。ちょっと仲間と相談しないと」
「え、いやなの? 二回も命を助けてくれた人の頼みを断るの? 仲間と相談しないと決められないってキミ自身は積極的に俺を助けたくないように感じるんだけど。こういうときって、すぐに『はい、わかりました!』って言ってから、必死で仲間を説得するってのが誠意なんじゃないの?」
「わ、わかりました。じゃあ、とりあえず町まで案内をします」
そうだよ。それでいいんだよ。
あぁよかった。
人助けはするものだね、道案内がこんなに早く見つかるなんてさ。
この作品について面白いと思う場面などあれば、評価・ブックマーク・感想をよろしくお願いします。
また、たまに活動報告などもご覧いただけるとありがたいです。




