俺の城
ウィスタリスは周囲を湖に囲まれた巨大な都市だ。
都市の中心部は栄え、逆に外側は廃れてスラム化している。
そんなスラムの中に俺はついに燦然と輝く城を手に入れた。
まぁ、酒場なんだけどね。無人の廃墟になっていた酒場をラスティーナ王女のツケで材料買って修理したってわけ。DIYですよ。自力で出来ることは何でも自力でやらなきゃね。
「うーん、外観はともかく、中はくたびれた雰囲気ながら趣があるぜ。控えめに言って最高だね」
俺はさっそくバーカウンターにグラスを置き、蒸留酒を注いだ。正式名称は知らんけど、味がウィスキーだからウィスキーでいいだろう。
俺はグラスにウィスキーをダブルで注ぐ。氷は無いからストレート。まいったね、こりゃ酔っぱらっちまう。
客に出す酒? あるわけねーだろ。ここをどこだと思ってんだ酒場だぞ。俺の酒場だ。俺の酒場なんだから、酒を出すかどうかは俺が決める。酒場だからって酒を出すって固定観念は捨ててもらわないと人間として成長できないぜ。
「アスラカァァァズっ!」
うお、びっくりした。
やべぇよやべぇよ、カスハラ野郎の登場か? うちは営業してないんだけど?
「てめぇ、クソ邪神。こんなところにいやがったか!」
おいおい、なんだよコイツ……チビだな。顔とか腕にガッツリ刺青入ってるけどチビだわ。しかし、なんだこのチビ、初対面なのに俺を邪神とか言いやがって。
「おい何をとぼけてやがんだクソ野郎。脳味噌にクソでもつまってんのかクソ邪神」
あぁ、なんだか懐かしい言葉遣いだぞ。
このクソクソクソクソうるさい、口からクソ垂らしてる男は──
「もしや、キミはうんこマンか?」
「エルジン・マクベインだ。クソ邪神!」
はえーマクベインってことは……うそだろマー君!?
「どうしちゃったの、そんなにチビになって。それになんだよ、その虚弱な体はよぉ」
「知らねぇよ、テメェがやったんだろうが、クソが!」
いやいや、そんなことはしてないよ。
なぁ、ちょっと落ち着いて近況を話そうぜ。酒は……チビに飲ませるのは良くなさそうなので止めておきましょう。
そして俺たちは今まで何があったかを話し合い──
「はっ、ざまぁ!」
マー君は全く同情をしてくれませんでした。
「テメェのクソな振る舞いから、こういうクソみたいな状況になるのは目に見えてたぜ。身から出たクソだ。全部テメェのやらかした末路だろ? クソが」
「クソクソうるせぇなぁ、うんこマン。俺に文句を言っても、テメェだって同じように困った状況になってんだろうが」
マー君は大きくため息を吐くと、俺に手で合図を出してきた。
「あるだろ、アレ? くれたらテメェがクソなのは見逃して助けてやる」
「アレって?」
「アレって言ったらアレだろうが、わかんねぇかクソ!」
「わかんなーい。うんこマンの言葉はクソクソ言ってて理解不能でーす」
「あああああ、クソ! ヤニだよ、ヤニ! 煙草持ってるだろ? さっさとよこせ! クソが!」
エルジン・マクベインことマー君は重度のニコチン中毒なので、そろそろ限界が訪れたらしい。さて、そんなマー君の目の前にいる俺の手元にはどういうわけか、新品の煙草が一箱。現代的な紙巻き煙草だ。
どうしようかなぁ、あげようかなぁ、でもなぁ──




