ウィスタリス到着
さて、俺はアードの町から逃げてウィスタリスの町にやってきたわけだが、ここで、大きな問題が生じる。
ウィスタリスの町は大きな城門に守られており、衛兵たちも熱心に行きかう人に尋問をしている。さぁ、こうなると俺は困ったことになる。
何故かというと、俺は大指名手配犯だからね。尋問されたら秒で捕まるわ。
「俺に良い考えがあるぞ」
剣術バカのゼティが急にそんなことを言い出したので、俺は望み薄と思いながら、ゼティの案に乗ることにした。そしたら、次の瞬間だった、抜く手も見せず、俺の首はゼティの剣に刎ねられていた。
「……指名手配犯の護送だ」
ゼティはそう言うと袋に詰められた首と胴体が切り離された俺を衛兵に見せる。
すると、衛兵は手配書と見比べて納得した表情を浮かべ、ゼティと袋に入った俺を通した。
「切り口が良いからすぐくっついて楽だわ」
俺は物陰から出ると、切り離された首を断面にくっつけた。
残機は減るが、まぁ一機だけだしね。大した問題じゃない。
「これで無事に入れたわけだけど、さてどうしたもんか」
ゼティがメンヘラ丸で宣教師たちの行方を追っているが、街中で結構動き回っているせいか、メンヘラ丸の示す先が安定しない。
「役立たずな刀だなぁ、メンヘラ丸ちゃん」
そう言った瞬間、ゼティの手から剣がすっぽ抜け、俺の頬を刀が切り裂いた。
「あ、馬鹿」
メンヘラ丸は最後に斬った相手を追う刀なわけで、これで最後に斬ったのは俺になるから、俺を追い続けるわけだ。
「手掛かり無くなったなぁ」
「貴様のせいだと分かっているか」
わからんね。俺は悪くないと思いたい。
とにかく、これで俺たちはウィスタリスの町で長期戦の構えを取らざるを得なくなったわけだ。
「ねぐらが必要だなぁ」
ゼティはともかくとして俺は指名手配犯だからね。
どっかの宿屋に長期滞在ってわけにもいかんだろ。
「俺はちょっくら貧民街の方でも見てくるよ。ゼティはそこらへん適当に探してて」
俺はウィスタリス市の貧民街を探して歩き回った。そして見つけたのは水辺のそばのスラム街。いやだなぁ、つまらんなぁ、と思いながらギラギラした感じの無いスラム街を歩いて回る。
犯罪者というよりは人生の落後者が落ちた先って感じでスラム独自の活気がなくあきらめムードが漂っている。
「あぁ、嫌だ嫌だ。湿気ってるやつらはキラーイ」
歩いているうちに酒場の廃墟っぽい建物を見つけたので、そこに乗り込んだ。
寂れた酒場がねぐらとかかっこよいよね。俺は好き。
──ということで俺のウィスタリスでのねぐらは決まった。
後は何するかって言うと、もうちょっと酒場っぽくしたいよね。
そうなると色々と材料がいるわけだが、そこら辺は心配ない。なぜなら俺には無限に金を引き出せる魔法の紋章があるから。
「おい、これが目に入らないか?」
俺はいろんな店に行くと、そう言ってラスティーナ王女の紋章を見せつけた。
この紋章は前にラスティーナ王女からいただいた袋についていた紋章で、俺がそれを基に金属を加工しカード状に仕上げたものだ。
「俺はラスティーナ王女の命令で行動している。タダでよこせと言っているわけじゃないんだ。ラスティーナ王女にツケておけっていっているんだ」
本物そっくりのラスティーナ王女の紋章。
小さい町じゃ使えないけど、王国第二の都市ともなれば、ラスティーナ王女の紋章の存在を知っている奴もいるし、紋章は結構な効果を発揮する。
公文書偽造とかは人間の時もやってたし、パスポート偽造は俺の得意技の一つよ。紋章だって楽勝さ。
懐に何の心配もなくなった俺はのんびりとウィスタリスの町を歩いていた。もしかしたら、ラ゠ギィとかに会うかもしれないと期待しながら。でもまぁ、早々出あうわけもない。
だけど、面白い場所を見つけることはできた。決闘場だってさ。
なんか文句があるとこの街の魔術師は決闘するらしい。いやん、物騒、怖いわ。
どいつか俺と決闘してくんねぇかなぁと思いながら決闘場を冷やかしに行くと、今まさに決闘が繰り広げられ、若い魔術師にボコボコにされてる魔術師の姿を見ることが出来た。
「うへぇ、何アイツ、超無様~!」
負けてる方の魔術師を指差しながら言った、その時だった。
勝ってる方の魔術師が俺を睨み付けながら叫びだした。
「アスラカァァァズっ!」
どうやら、知り合いのようだ。はてさて、あんな知り合いがいただろうか?




