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転生者 エルジン・マクベイン(2)

 マクベインが生まれた世界は魔術の使用が盛んで、魔術を効率的に使用するための肉体改造も盛んに行われていた。

 マクベインは改造する箇所のチェックリストを作成することにした。適当に肉体を改造しても効果が薄いからだ。


 1.両腕の改造(最重要)──骨の杖化、筋組織、神経細胞に魔術刻印を刻む。高速での魔術師用のため、体表に魔術刻印を刻む。魔弾の発射機構を指に構築。


 2.眼の改造(最重要)──魔力(内力)を視覚的に捉えられるようにする。各種魔術との連動性を確保、魔術の照準と視線を接続。


 3.声帯と舌の改造──通常の人間の声帯と舌では発声できない魔術の詠唱を可能にする。


 4.肺の改造──空気中に散った魔力(内力)を吸い取り吸着するフィルター化。


 5.心臓の改造──血中に魔力(内力)が含まれるように魔石を接続。肺で吸い取った魔力も吸収できるようにする。


 6.脊椎の改造──神経伝達速度の向上による魔術発動のスムーズ化。


 7.その他筋肉、骨格の改造──肉体の強化に直結するが、優先順位は低い。


 他にも色々と改造したい部位はあるが、まぁタイミングを見てやっていこうとマクベインは思うことにした。改造する場所が多い気もするが、これだけ改造しなければ、アスラカーズとまともに戦闘することが難しいほど、ティル・アーミッドの肉体は脆弱であった。


「では、さっそく腕を」


 マクベインは右腕に麻酔の魔術をかけると、左手の指先に内力を集め、メス代わりにして腕を切り裂いた。おびただしい量の血が流れるが、それは水流を制御する魔術を応用し、一か所にためておく。大量出血した分の血は体内で魔力(内力)を精製し、血液代わりにして補う。


 手慣れたもので、マクベインは前腕の骨二本を器用に取り外した。そして左手だけで骨に紋様を刻み、魔術による刻印を施す。また、溜めていた血を結晶化させ、宝石のようにして、自分の骨に埋め込み、腕の骨二本を杖として装飾する。


「出来はクソだが、使えなくはないってレベルか」


 腕を戻し、筋組織と神経細胞に魔術刻印を刻む。

 魔術刻印は魔術を使用する際に様々な補助効果を持つ、マクベインの生まれた世界独自の技術である。魔術刻印に魔力(内力)を流すだけで魔術が発動する代物もある。


「次は皮膚」


 マクベインは右手の人差し指と中指の詰めをはがし、皮膚に刺青の形で魔術刻印を刻む。爪の先には矢印のような模様。そして矢印の根元から伸びるように手の甲に渦を巻くような模様。人差し指と中指から伸びてきた刺青はそこで一本の線となり、複雑な模様を描いて途切れることなく肘まで刺青が刻まれる。


「魔弾完成」


 マクベインは部屋の窓を開け、適当な木の葉を選び、そこに向かって人差し指と中指を向ける。そして親指を立てた状態から、指を曲げると同時に魔力の弾丸が放たれ、木の葉を貫いた。


「ひかえめにいってクソ」


 詠唱も魔力の集中も必要ない。指を向けて親指を曲げるだけで瞬時に魔力の弾丸が放たれる『魔弾』の魔術。しかし、本来の威力には程遠い。それもこれも、転生先のティル・アーミッドの肉体が弱いせいだった。

 マクベインは続けて、左腕にも同じ改造を施し、両腕から『魔弾』が撃てるようにする。


「今日の内に声帯と舌までは終わらせておきたいが……」


 次の眼の改造をするにあたり、マクベインは鏡を見て、ウェっと吐き捨てた。

 ようやくティル・アーミッドの顔をみたことになるわけだが、情けない顔だった。女っぽくてナヨナヨとした顔だ。前髪も長く自信というものが全く感じられない顔。


「しけたクソヅラだぜ」


 マクベインはティル・アーミッドの顔に価値を感じず、さっさと改造を進めようと眼球を顔から引っこ抜いた。とりあえず右眼だけというか、右眼だけで十分だろうと判断する。


 マクベインは片目で眼球をいじり、魔術刻印を刻み、眼に特殊な機能を付与していく。そして、それが終わると、眼球を元に戻して治療し、続けて目の周り眼球の機能を補助する魔術刻印を刺青として刻む。


 女性っぽさのあった顔はたった数十分で刺青のある凶悪な人相となり、マクベインは長い髪は鬱陶しいと、後頭部で一本にまとめ、顔をはっきりと見せ刺青が良く見えるようにした。


「ま、ちっとはマシなクソになったな」


 次は声帯と舌の改造だ。

 マクベインは服に血が飛び散る可能性も踏まえて、服を脱ぐと自分の体に異様なものがあることに気づく。それは全身に無数につけられた青あざや火傷跡であった。


「なんじゃこりゃ」


 マクベインは気持ちの悪いものをみたような顔で、即座に魔術で傷を消す。

 この世界の魔術ではないが別に誰も見ていないのだからどうでもいいだろうとマクベインは思った。


 さて、そんなことよりも声帯と舌だということで、マクベインは声帯を切開し、魔術刻印を刻み、喉の皮膚に機能補助のための魔術刻印の刺青を入れる。とりあえず、喉の真ん中に髑髏を入れ、その周りは骨といった感じの模様。

 舌は切り取り、机の上で念入りに魔術刻印を刻み、ついでに刺青も入れておいた。後、舌の長さがもう少し欲しかったので、長くなるような改造もしておき、最終的に魔術でくっつける。


 これで、とりあえず肉体の改造は終わりだ。

 他の改造はおいおいやっていこうと思い、マクベインはベッドに横になるのだった。



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