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転生者 エルジン・マクベイン(1)

 クソ頭がいてぇ。

 アスラカーズ七十二使徒序列十二位エルジン・マクベインは意識が戻った瞬間、痛みを感じ、眼を開いた。

 視界に移るのは知らない天井である。


「クソが」


 どうせアスラカーズがなんかやったんだろうと、マクベインは悪態を吐く。


「死ねよ、あのクソ邪神」


 どうやら自分がベッドに寝かされていることに気づいたマクベインは体を起こし、辺りを見る。雰囲気から察するに病院か学校の保健室か何かだろうと当たりをつける。


「起きましたね、えーと、ティル・アーミッド君?」


「ちげーよクソ。俺はエルジン・マクベインだ」


「え、えーと」


「混乱しているとでも書いとけクソ。ところで、このクソみてーな場所はどこだ?」


 マクベインは頭以外に異常を感じないことを確認し、ベッドから起き上がる。

 そして自分の服装を見てみると仕立てのいいブレザーで、まるで学生服のようだった。


「ここはウィスタルム魔導学園だけれど、その、記憶の方は……」


「大丈夫じゃないんじゃねぇの? クソみてぇな話だが、俺は記憶喪失のようだな」


 マクベインはどれだけ記憶を思い返そうとも、ウィスタルム魔導学園などという場所は思い出せない。そもそもあるのは自分の記憶だけだ。


「ティル・アーミッド? それが俺の名か?」


 保健担当教官らしき女に尋ねるマクベイン。

 頷く女を見てマクベインは座り込んで大きくため息を吐いた。


「転生パターンかよ、クソが。最悪じゃねーか、クソッタレ」


「あ、あの大丈夫かな?」


「大丈夫。体調は問題ねーよ。気分は肥溜めのクソ以下だけどな」


 そういうと既に表情は変わっており、マクベインはすっと立ち上がる。


「記憶がねぇから部屋が分からねぇ。どんなクソ溜めか見たいから、教えてくれ」


 マクベインの表情は既にやることを決めた人のそれであり、一歩でも立ち止まっていられないという様子だった。そして、マクベインは保健教官の案内で以前から使っていたという自室に案内される。


「──持ち主はまぁまぁなクソだったようだな」


 部屋の中でまず目につくのは大量の魔導書で、机の上には必死で勉強した跡がある。転生の特典でこの世界の文字の読み書きができるマクベインは机の上のノートに目をやる。


「やる気はあったが、才能はクソ以下だなこりゃ」


 アスラカーズの使徒の中でも魔術を得意とするマクベインはノートを見ただけで、今の肉体の持ち主であったティル・アーミッドの魔術的センスの無さを看破した


「とにかく、やることはいくらでもある。アスラカーズが転生させたんだ。どうせクソみてぇな面倒ごとに巻き込まれるんだろう。それまでに、この体を強くしねぇと」


 転移と転生の大きな違いは元の肉体を持ち越せるかである。ゼティは転移であるので、自分の剣技が染みついた肉体をもって、この世界にやってこれた。対して、マクベインは自分の肉体ではなく現地人のティル・アーミッドの肉体である。これは極めて大きなハンデであった。内力量は鍛えた肉体に依存するし、マクベインのもとの肉体は魔術使用の最適化のために相当な改造を施している。

 そういったアドバンテージがティル・アーミッドの肉体には全くない。マクベインは丹田で内力を練り上げ、基礎内力量を増やす修行をしながら、部屋にあった大量の魔導書に目を通す。


「クソみてぇな魔術」


 ほんの一時間で何十冊もあった魔導書に目を通し、内容も完璧に理解したマクベイン。魔術において使徒の中で上位に立つというのは、人間レベルで言えば誰よりも優れた魔術師であるということだった。


 とりあえず、この世界の基本的な魔術は頭に入った。

 内力量を増やす修行も開始した。そうなれば、あとやるべきことはというと──


 ──肉体の改造であった。



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