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カラスは跡を濁して旅に出る

「だからさぁ、俺も反省してんのよ。ちょっと、調子に乗りすぎちゃったなぁってさ」


 俺は冷えて固まった溶岩の上に寝っ転がりながら、ラスティーナを見上げて謝罪をしていた。


「ごめんちゃい」


 おっと、ティーカップが飛んできた。

 でも、流石は王女様、人相手にものを投げたことなんか無いんだろう。狙いはてんで駄目で、カップは俺に届かず、地面に落ちて割れるだけだった。


「反省すらまともにできないのですか、貴方は!」


「反省してるじゃん。口でごめんなさい言ってるんだから許してよ」


「許せるわけないでしょうが! 黄神を祀る聖地の大穴をただの窪地にしておいて!」


 あぁ、そうだねぇ。興奮して大穴の中をドロッドロに溶かしたら大穴の横の壁も溶けて流れ出し、結果、辺り一面の地面が溶けて大穴に流れ込んできちゃったんだよね。その結果、聖地はちょっとした窪地になりました。


「まぁまぁ、落ち着こうぜ、プリンセス。人的被害はなかったんだし、そこを喜ぼうよ」


 聖地のまわりだけあって、人の住む建物は無かったのは良かったね。俺は人が死ぬのは嫌だしさ。


「他人事のように言うなぁ!」


 おっと、今度はお盆が飛んできたが、これも外れ。もうちょっと練習してからいらっしゃい。


「あのさぁ、さっきから俺のこと滅茶苦茶怒ってるけど、俺の様子を見て労わるとかしてくれないの?」


 俺は頬杖をついて地面に横になってる。

 ぶっちゃけ、体調が悪い。アードラムを完全にぶち殺した瞬間、変な力が流れ込んできたせいだ。


「労わられるようなことをしていますか?」


 しています~。神様ぶっ殺しました。そんでもって、この世界を別の世界からも認識できるようにしてあげました。……まぁ、完全じゃないけどね。


 体調悪いのはアードラムが持っていた世界の管理システムも同時に引き継いだせいだと思うんだが実際の所は分からんな。それに世界の管理をいくつかの神々で分担してやってるようだからアードラムを何とかした程度では完全に管理システムを掌握出来ないようだ。


「……ところで、姫さんさぁ。他に神様が良そうな土地知らん? 聖地でもなんでもいいんだけどさ」


「……なぜ、貴方にそんなことを教えなければいけないのですか?」


 この世界にいる神様全員ぶっ殺しに行くから、その情報欲しいなぁと思って。

 まぁ、素直にいっても協力はしてくれないからダメもとで聞いてみただけだよ。


「あらよっと」


 俺は体調が少し良くなったのでひょいと立ち上がる。


「貴方分かっていますか? 自分の状況?」


「調子が悪いってのは分かる」


 そう言ったら大きくため息を吐かれた。


「イクサス領での指名手配は解けていません。屋敷を吹き飛ばしたという罪状も付きましたし、イズヴァルトを投げつけて、辺境伯と辺境伯嫡子に怪我を負わせています。それに今回は司教の殺害の容疑がかかっていますし、聖地破壊の実行犯です」


「ふーん」


 俺は爪の先をいじりながら聞いていた。


「なんですか、その態度!」


 ラスティーナ姫は投げる物がなくなったのか、とうとうそこら辺にあった石を投げつけてきたが、当然当たらない。


「落ち着こうぜ、プリンセス。仮にも王女なんだから慎みをもってさぁ──」


「そうさせてくれないのは、おまえが原因だろうが!」


 おーこわ。泣いちゃいそうだぜ、俺様。


「まぁ、あれだよ。俺はねキミらが大変だと思っているほど大変に思ってないの、今の状況。俺が昔、指名手配された時には罪状が100じゃ効かなかったからね」


 大統領誘拐とか、無許可での核実験とか、核爆弾をニューヨークのど真ん中に隠したりとか、弾道ミサイル盗んで、とりあえず全世界にぶっ放してみたりとか、完成した当日にサグラダファミリア放火したりとか、人間時代にはもっと悪いことやってるから今更、悪事の羅列をされても何も思わんのだ。


「──おい、何を遊んでいる」


 おや、ゼティじゃないか。メンヘラ丸とのお遊びは済んだかい。


「何かムカつくことを考えていないか、貴様?」


「おいおい、俺は思考の自由も許されねぇのかよ。日本国憲法がなつかしいぜ」


 俺が適当なことを言っているとゼティがばっと地図を広げた。


「奴ら宣教師どもはおそらくこの町だろう」


 ゼティが地図上にある大きな町を指差した。

 メンヘラ丸で方向を割り出し、大体の位置を判断したのだろう。


「う、ウィスタリス……っ!?」


 おや、ラスティーナ姫、どうかなさいましたか。


「あ、貴方たち、ウィスタリスに向かう気ですか」


「なんだよ、俺らがどこに行こうが俺らの勝手だろ?」


「指名手配犯が勝手にうろつくな!」


 ラスティーナちゃんキレすぎぃ!


「とにかく貴方たちのウィスタリス行きは許可できません。ウィスタリスは王国第二の都市、そんなところに貴方を送り出したら、どんな大事件が──」


 姫が指をパチンと鳴らす。すると姫の直属の騎士たちが一斉に姿を現した。


「ははは、そんなにビビんなよ。俺は慎みという言葉を知ってる男だぜ」


 知ってるだけだけどな。

 俺も姫に倣って指を鳴らす。すると、急に砂嵐が吹き荒れ、俺たちの視界を覆いつくした。地の神アードラムを倒した影響なのか、土を操る能力を得たみたい。

 まぁ、好きじゃないから使うことは殆どないだろうけどさ。


「じゃあ、さよなら姫さん。またウィスタリスで会おうぜ」


 俺とゼティは砂嵐に紛れてこの場を立ち去る。

 そして、白神教会の宣教師がいると思しき、ウィスタリスに向け何もかもほっぽり出して向かうのだった。



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