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燃えてなくなれ、この大地

「アフターバーナーッ!」


 俺は背部で内力を炸裂させ、爆発的な推進力を得る。内力量の増大に比例してその推進力も爆発的に強化させており、俺の速度は一瞬で音速を突破する。


「ぶん殴る!」


 超音速で接近。その勢いのまま、俺はアードラムの顔面をぶん殴った。

 はじけ飛ぶ頭部。それでも残機があるうちは即座に再生する。


「貴様っ!」


 アードラムは必死の形相で殴り返してきた。

 言ってなかったっけ、キミの底は見えてんだよ。


 アフターバーナー──超音速でアードラムの背後に回り込んだ俺は背中からアードラムの腹をぶち抜いた。


「攻撃方法が術から内力を込めた打撃に変わったな?」


 俺は腹から腕を引っこ抜いて、アードラムを蹴り飛ばした。

 衝撃によって、四肢がバラバラに千切れるが、そんな程度の傷は残機があれば即再生だ。


「底が見えたってのはソレだよ。術で俺を殺せないと諦めた。内力を込めた打撃の方が可能性があると、一縷の望みに縋った。あぁ、底が見えた、見えてしまった。キミの強さの底」


 アードラムの腰から生えた尻尾が俺に向かって高速で伸びてくる。


「ジェットバレット」


 アフターバーナーを打撃に転用。パンチを超音速まで加速させる。

 超音速の拳は伸びてきた尻尾を軽々とちぎり飛ばす。


「ぬぅおおおおおお!」


「最初の余裕はどうした三流神! 何度か死んだ程度でギブアップか! もっと上げろよ。上げてけ、上げてけ。底を見せたんだから、次はキミの高みを見せるんだよ。全ての力を振り絞り、限界まで己を高めて見せやがれ!」


 それができないなら、沈んで死ね。つーか、底辺に叩き落して、俺が殺してやる。

 弱い神なんか必要ねーんだよ。弱い人間は生きてていいが、弱い神は無駄だから死ね。


「おおおおおお!」


 重力操作? 磁力操作?

 なんか分からんが、アードラムの体が急に加速し、俺に接近してくる。

 そして、全力振りかぶったパンチを俺の顔面に叩き込んできた。


「はは、痛いじゃん」


 素手での打撃は無駄だと判断したのだろう。

 アードラムの腕は漆黒の鉱石に覆われていた。内力をガチガチに固めて生成したその鉱石は確かに俺の熱い体に触れても解けずに残っている。


「そうそう、そうだよ。そういうのがいいんだ」


 俺は殴り返す。すると、当然のように殴り返される。

 顔を殴れば顔を、腹を殴れば腹を殴り返される。打撃のコンビネーションなどあったものじゃない、反射行動だ。でも、それがいい。必死だ、とにかく必死にくらいついてくる。こういうのがいいんだよ。


「あはははは」


 気付くとアードラムの全身は漆黒の鉱石に覆われていた。

 人間らしい部分など皆無で、これでは岩石人間だ。でも、そうじゃなきゃな。

 恰好なんか気にしている余裕は無いだろ?


「うひひひひ、いてぇいてぇ」


 アードラムの拳が俺の顔面にクリーンヒットする。当然俺も打ち返し、頭を吹っ飛ばす。アードラムの拳が俺の腹に直撃する。息ができなくなるくらい苦しいが、俺も反撃でアードラムの腹をぶん殴り、腹に風穴をあける。

 あぁ、いいねぇ、闘いってのはこうでなくちゃ。


「痛くなけりゃ楽しくない。苦しくなければ面白くない」


 少なくとも俺はそう思う。

 さて、そんなことを思っているうちに段々と俺の攻撃の回転数の方が明らかに上回ってきた。

 一発殴っても反撃がこないタイミングが増え、その分、俺が余計に一発殴る。

 二発殴っても反撃が来ないから三発目を殴る。


「こんな、こんなものではない! 我は、我は!」


 手数が増えない代わりに口数が増える。

 それが、こんなものだという証明だ。


「プロミネンスブロゥッ!」


 絶好調、気持ちの乗った必殺の一撃がアードラムの体を全身を完全に蒸発させる。

 だが、それでもアードラムはまだ復活する。


「だけど、ここまでだ」


 俺はアードラムの頭を抑え込み、渾身の頭突きを叩き込んだ。

 鉱石に覆われた頭部が砕け、続けてガラスのように全身が砕け散る。


「まぁまぁ楽しかったぜ」


 足を止めての殴り合いは脳内麻薬でそうだったし、悪くなかったよ。いやマジで。

 まぁ、でも終わっちまったしなぁ。はぁ、戦いが終わると虚しくなるよなぁ。

 さっきまであんなに熱かった奴が急に冷たくなっていくのは気分が萎える──


「──この程度で終わったと思うな、アスラカーズ! 我は大地の化身! 不滅なり!」


 でかい声がして地面が揺れる。

 楽しく戦った相手が生き返って嬉しい? いや、もう違う。こういう場合、どうしてか皆、俺の期待外れになるんだよなぁ。


「見よ、この姿を! 人の姿の枷を外した地の神の真の姿を!」


 地面を突き破り現れたのは、前にも戦った巨大な蛇。

 たぶん細部は違うんだけど、もう興味がないからまともに見てやる気も起きなかった。


「アフターバーナー……」


 俺は超音速で巨大な蛇となったアードラムの死角に回り込み、全力で蹴っ飛ばした。

 俺の一撃を受けてアードラムの巨体が大穴の中の壁に激突する。


「どいつもこいつも馬鹿なんだよなぁ。サイズが大きくなってもパワーは俺の方が上、一撃必殺で殺せる技も持っている。なのになんでデカくなんの? 死角が増えるだけじゃん。どいつもこいつも勘違いしてるが、存在としての強さは大きさに依存しねぇんだよ!」


 俺は人差し指の先に内力を圧縮させながら、蛇になったアードラムに向ける。

 極限まで圧縮された内力は真紅の焔となり、指先で燃え上る。


「プロミネンスアロゥ」


 俺は指先で燃え上る真紅の焔をアードラムの頭めがけて放った。

 高速で飛翔する真紅の焔は瞬時に着弾し、アードラムの頭を消し飛ばす。


「一発当たれば死ぬのに、的だけでかくしてどうすんだか」


 つまんねぇ奴だぜ。

 あぁ、そうだ。キミ、大地の化身って言ってたよね。大地ってどこまでが大地なのか試してみないかい? 溶岩になってドロドロに溶けたのを大地とキミは認識できるのか。そしてそれが冷えて固まったものを大地として認識できるのか。


「丁度、実験に良い場所だしな」


 どうなるか想像が出来ねぇからワクワクしてくる。

 ワクワクしてくると俺は熱くなってくる。熱くなれば、当然地面も溶けて溶岩になる。だけど、これじゃあ足りねぇなぁ。


「待て、貴様、何を──」


 俺は足にすべての内力を込め、強く地面を踏みつける。そして足から地面へ極限まで圧縮した内力を流し込む。そして──


「燃えて無くなれ、この大地」


 流し込んだ内力を地面から噴火させる。


「プロミネンスゲイザーッ!」


 地面から真紅の焔が無数の火柱となって立ち上る。

 大穴の中の温度は急激に上昇し、アードラムの体が一瞬で燃え尽き、大穴の中の壁もどろどろの溶岩となって溶けだし崩れていく。


「はははっははっははは!」


 やっべぇ、めっちゃ溶けてる。すげぇすげぇ、太陽の中にいるみたいで楽しいぜ。

 実際の太陽の中は誰も住んでないし風景もそんなに面白くないけど、これは面白い。

 だって、俺のこのやらかしによって、きっと色んな奴が困るからさ。


 だから、もっと燃えろ大地。全てがなくなるまで。



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