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駆動する業

 俺は業術を第二段階へと引き上げる。

 第一段階は『顕現』──これは己の業を文字通り世界に顕現させる段階だ。

 そして第二段階は『駆動』──世界を己の業で塗り潰すために、自らの体に業を宿し、身に纏う。業術の駆動段階に達したものは世界のルールを己の業で塗り潰し、超越する。


「──見上げた星の輝きに地上の人は夢を見た。果てなき旅路が今始まる」


 別に使わなくても勝てなくは無いんだろうけどさ。その場合、俺は《《『眼』と『頭』》》を使うことになるだろうし、そうなるとイジメみたくなっちゃうんだよね。


「昂る熱をこの胸に。勇気を抱き一歩を踏み出せ。恐れを焔で焼き尽くせ。天の星をこの手に掴むまで、我らの旅路は終わらない」


 業術の駆動段階──駆動態が発動する。


「駆動《ドライブ》、星よ輝け(スターレイジ)、魂に火を点けて(イグニション)!」


 詠唱を終えた瞬間、俺の内力量が爆発的に増大する。

 俺の業術の駆動段階の能力は至ってシンプル。俺の感情の昂ぶりに呼応して、無限に内力量が増えるというそれだけだ。でもまぁ、それで充分。


「面妖な術を──」


 俺はアードラムが言い終わる前にその顔面にパンチを叩き込んだ。

 俺の拳の衝撃はすさまじく、とんでもない勢いで吹っ飛んでいき、大穴の壁に激突するアードラム。


「一応、言っとくけど、マジのマジでやらねぇと秒ももたねぇよ?」


 そもそも駆動態になった時点で、俺の肉体はこの世界の理から外れ、自分の持つ業──己の理に支配されていて、身体能力は自分の思いのままになる。よって、駆動態になった瞬間、同じ領域にいない奴は殴り合いでは絶対に勝てなくなる。


 ついでに俺の場合だと業術の効果で内力量は無限。なので、無限に内力による肉体強化が可能。


「俺の能力は面白味がないけど。でも、俺はこれが一番だと思ってる。感情つまり心や意志が現実に無限の力を生み出すんだぜ? そういう世界とか結構、面白いと思うんだけどな」


 重ねて言うが業術は最終的に神になるための技術だ。己の業で世界を塗りつぶし、己の理想の世界を作り上げる。業術使いはみんな、自分の能力に自分が理想とする世界の断片を組み込んでいる。


「一発、我を殴り飛ばした程度で!」


 アードラムが大量の岩を空中に生み出し、俺に向けて撃ちだす。


「なんだよ、殴り合いが怖いのかい?」


 飛んできた岩を俺は躱さない。躱す必要がない。

 駆動態になっても顕現段階の効果は機能している。

 俺の身に纏う内力は熱と焔を発し、飛んできた岩を瞬時に溶かす。


「あちちちち」


 おっと、しくじった、岩は溶けたら溶岩になるわな。

 頭から溶岩がぶっかかってしまったぜ。でもまぁ、内力で身を守っているからノーダメージ。


「さぁさぁ、この程度でビビるなよ? もっと本気で戦おう。まだ切り札があるだろ。全力を出せ、キミの底を見せてくれ。戦いの熱をぶつけ合おうぜ。そしたら、きれいさっぱり蒸発させてやるからよ」


 熱くなってきたぜ。

 足元が俺の熱で溶岩と化していく。気温がどんどん上がっていく。


「そんじゃま、もう一発!」


 俺は全力で踏み込み、アードラムにパンチを繰り出した。

 しかし、それは突如現れた砂の壁に阻まれる。


「俺とキミはそんなに相性が良くないね」


 砂を殴ったら、砂がガラス化し、俺の腕にまとわりついてきた。

 狙ってやったのなら大したもの。偶然ならば運がいい。

 どっちにしろ、俺の攻撃を防いだのだから立派だぜ。何としてもぶん殴りたくなってくる。そう思った瞬間、腕にまとわりついていたガラスが蒸発する。

 足元だけでなく、大穴の壁まで俺が発する熱で溶け始めた。


「化物め」


「そう思うんなら、なおさら俺を殺さないと」


 俺は内力で莫大な強化を施した肉体を躍動させる。

 アードラムは全く反応できず、俺の蹴りをまともに受けて吹き飛んだ。


「もっと速くいこう」


 吹っ飛んだアードラムに追いつき、更に追撃の拳を叩きつける。

 その衝撃で、大穴の中が激しく揺れ、地面が崩壊する。


「パワフルさも必要かな」


 俺は倒れたアードラムの顔を踏みつけた。ちょっと気合が入りすぎていたのだろう。

 俺の内力量が生み出す熱が、アードラムの頭部を蒸発させた。


「おいおい、キミの頭は氷か何かなのかい?」


 頭部を復活させたアードラムが俺の踏みつけている俺の足を掴み、自分の手がやけるのも構わず、俺を投げ飛ばした。


「いいね、いいね。がんばるね。その心意気、好きだぜ。もっと熱くいこうか!」


 俺は拳に内力を集め、圧縮する。圧縮された内力は真紅の焔へと変化する。


「プロミネンスブロゥ」


 真紅の焔はそれだけで神の肉体を消し飛ばす。でもって、拳に込められた内力も神の肉体を消し飛ばす威力。ついでに限界まで内力で強化した拳も、神の肉体を消し飛ばす威力。


 焔に耐性があるだけじゃだめ。内力に耐性があるだけでもだめ。打撃攻撃に耐性があるだけでもだめ、三つすべてに耐性があってようやく死なずにしのげる、必殺のパンチ。俺はそれを繰り出そうとしていた。


「消し飛べ」


 俺は無限の内力による身体強化で、アードラムが反応できない速度で接近し、必殺の一撃──真紅の焔を纏った右ストレートを放った。


 どうやって、防御するのか。

 それを期待したのだが、アードラムは何の反応もできず俺の拳を食らって完全に消し飛んだ。


「うーん、期待外れ」


 なんも面白いことがなかったので、ちょっと気持ちが萎える。

 すると、俺の無限に湧き出てくる内力も、一度に湧く量が減ってくる。なにせ、俺の感情に呼応しているからね。俺の気持ちが弱くなると業術も弱くなるんだよ。


「──そんな一発程度で我が倒れるか!」


 お、復活した。ちょっと気分が上がってきたぞ。

 でも、今の一撃で結構アードラムの内力は削ったと思うんだよね。

 さて、アードラムの残機は今はどんなもんでしょうか。


 まぁ、そんなことより大事なのは残機がなくなる前に俺をワクワクさせてくれるかどうかってことなんだけどさ。


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