震える大地
「震えよ大地! 我が帰還である!」
ウーン、自身は勘弁。地震大国育ちだけど地震は嫌いだ。
俺は黄神アードラムの顔面にパンチを打ち込んだがびくともしない。
「こりゃまいった」
力任せに振るわれるアードラムの腕を飛び退いて避ける。
手抜きすぎた? いや、違うな。弱い相手に働く俺の呪いが効いている。
いくら神でも弱い相手には本来の力を発揮できないのが俺だ。
「なんかムカつくこと言ってくんない?」
「愚かな人の子よ」
駄目だ。あんまりムカつかん。
俺は伸縮自在と思しき、アードラムの蛇の尾による攻撃を身を屈めて避ける。
その動きの隙をついて、アードラムが突進してきて拳を振り下ろすが、俺はその一撃を片腕で受け止めた。
「内力填充」
内力を込めてなければ、ちょっとやばかった一撃だが、内力を腕に充分に集めていれば防げる。
「我の一撃をたやすく受け止めるか! ただの人ではないな、貴様!」
「一応、邪神のつもりなんだけど!」
俺はアードラムの拳を受け止めながら、足の裏を突き出して、アードラムを蹴っ飛ばした。ご立派な黄神様のお胸に俺の足跡がくっきりとつく。
「邪神? 貴様のように神気を感じぬ神がいるものか!」
「それはまぁ、この世界に来て封じられたっていうか──」
アードラムが再び突進してくる。それに合わせて、俺も突進。
互いにすれ違いざまに一撃を叩き込んだ。
「……砲牙」
「ぬぅ」
俺は打撲だが、向こうは内臓破裂。さて、どっちがダメージがでかい?
アードラムは内臓がペースト状になったはずなのにも関わらず、平然と立ち上がる。
俺は打撃を食らった箇所が痛くてちょっと動きがのろくなる。
「貴様が神であることは信じられぬ! だが、その力、人をはるかに超越していることは認めよう」
「そいつはどうも」
「人が相手でなければ、我も本気を出せるというもの。見るがいい、地を司る黄神の力を」
元気だね。そういう奴が相手だと、俺も元気になっちゃうよ。
「顕現せよ、我が業、果てなき天を超えるため──」
思ったより強い相手だから、使っても何も問題なし。
「顕現、目を覚ませ、|星より高きに至る者《THE・スターライザー》!」
俺の闘志に応えて焔が燃え上る。
俺は燃え上る衝動に任せて、アードラムに突っ込んだ。
「火の神、赤神が如き力。なれども!」
アードラムに接近しようとした瞬間、土の壁が俺の前に立ちふさがった。
勢いを削がれながら俺は土の壁をぶん殴り粉砕する。
「つまんねぇなぁ。一発殴らせろや。でなきゃ、熱くなれねぇだろ」
「神に熱など必要なし。必要なのは揺るがぬ心のみ」
「つまんね、つまんね、つまんねー! 熱を感じ、己を燃やし尽くさない人生に価値があるかよ。己の全てを燃料にして、後には何も残さないのが最高の生き方だろ?」
「理解できん。火を司る者よ」
火力が上がる。俺を理解できない奴がいても、それはいい。
ただし、それは人間の話だ。人間相手なら、俺はどんな生き方でも肯定するけれど、神相手の場合、俺は俺の教義と自我を曲げられない。なぜならば、同じ土俵で戦う相手だから。それは相手がどんなに弱くてもだ。
人間相手だったら俺はいくらでも譲ってやるよ。だって、相手は弱い人間だもの。
「ぶっ潰してやる」
「大地とはそこにあるもの。潰れることなどあり得ぬ」
不可能を可能にする。燃える展開じゃないか。
俺の熱量が上がる。この世全てを焼き尽くすほどに。
「駆動せよ、我が業──」




