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再戦、地の神アードラム

「うわ、マジで逃げてら」


 ラスティーナがあんまりにも騒ぐもんだから、聖堂の地下室を見に行ってみると地下室には人が余裕で通れる大穴が開いていた。


「こりゃ、外に出てんね」


 間違いねぇや。でもって、ピンチの聖職者が向かう先はというと──


「俺がやるか?」


 ゼティが聞いてくる。そりゃまぁ、面倒だから任せたいってのはあるけどさぁ。


「いいよ、俺が行ってくる。しくじったのは俺だしな」


 さて、そんじゃまぁ、アードの町の聖域。町の中心にある大穴に向かうとしましょうか。


「──いったい、何をしくじったのですか?」


 どういうわけか、ラスティーナがついてきた。この女、俺がしくじったというのを聞いて、意気揚々と俺の隣を歩いてきやがる。


「仕留め損なったってこと、黄神を」


 神を仕留め損なったという俺の言葉を聞いて目を丸くするラスティーナ。

 そして、やいのやいの何か行ってくるが、無視して俺は言葉を続ける。


「そもそも甘く見すぎてたんだよ、俺が。蛇ってのは世の中の一部地域では不死の象徴として扱われる。蛇は脱皮を繰り返すことで、生まれ直しを行っているって認識だな。そういう人々の認識に神ってのは大きく影響を受ける」


 俺がちょっと、インテリっぽいことを言い出したら、なんだかラスティーナが黙りだした。


「それに蛇ってのは生き物の中では神や頂上の存在として扱われやすい。古今東西の神話を紐解けば確実に蛇の存在はある。聖書にある誑かす蛇、ギリシャ神話のヒドラ、日本神話ではヤマタノオロチ、インド神話のアナンタ。原始宗教に近い形ではユルングなんかもいる。中国の龍も形状からして蛇の類型だと言えるだろう。つまり、人類は蛇という存在にある種の神性を感じている。それは生物として生きていく上での危険な存在に対する畏敬から発したものなのか、さっき話した不死性を感じられる要素から来たものなのか、どっちかか分かんねぇけどさ」


 一気に話すとオタクっぽいね。ちなみに早口では言ってないよ。


「まぁ、黄神には信仰を集めるにたる強い土壌があるってこと。もしかしたら、俺が倒した黄神は実は脱皮した抜け殻に信仰心が集まり、形を成したものとも考えられるね」


 となると、本体が健在って可能性は高い。

 そして、その本体が今、何を狙っているかといえば──


「おっと、話しているうちに大穴についてしまった。じゃあ、キミとはここまで。なんか危ないことが起きるかもしれないから、なるべく離れたところへ行っていてね」


 俺はそう言って、大穴の底に向かって飛び降りた。

 しばらく宙を舞う感覚の後、大穴の底に辿り着くと、そこには逃げた司教がいた。

 だが──


「さて、司教くんと呼んでいいのかな」


 俺が訊ねた瞬間だった。司教の体が奇妙な音を立て、変形をしていく。

 はぁ……、俺は溜息を吐いた。そういうの良くないと俺は思うんだよね。

 えーと、黄神だっけ、その司教君はキミのことをすごく信仰していたわけだしさぁ。優しくしてやろうじゃない。

 まぁ、司教君自身は愛する神に身を捧げられて幸せそうだけどさぁ。


「──ようやく、ようやくだ。ついに体を得たぞ」


 バッキバキに体をぶち壊され、その体が作り変えられる。

 そうして出来上がったのは膨大な神気を纏った人の姿をした存在。


「我が名は黄神アードラム。大いなる地の神である!」


 逆立った髪の偉丈夫。下半身は鱗の鎧に覆われ、上半身は筋骨隆々。腰からは蛇を思わせる尻尾が生えていた。


「あぁ、そう。すごいね」


 まぁ、人間に近い感じがするから、多少は優しくしてやってもいいかって気分になる。元が司教君だから、そこまで人間離れしてないんだよね。


「控えよ、人の子よ。神の前であるぞ」


「おいおい、俺を人の子とか抜かすか」


 俺は邪神アスラカーズ様だぜ。テメェとは格が違うんだよ。

 マジかコイツ。クソバカじゃん。ちょっと好きになってきたぞ。

 遊んでやってもいい気分になってきたぜ。


「まぁ、人の子ではあるよ。だって人間時代もあるし、そん時はママのお腹から生まれてきたしさ。でも、キミの言い方は気に食わないなぁ。人の子ってバカにした言い方じゃん。俺のおふくろを馬鹿にするのは許さないぜ。なにせ、俺の母親はハリウッド女優だったし、20代でアカデミー賞を3回取ってるんだぜ、ついでに主演女優賞も」


 キミみたいな三流ゴッドと俺のママどっちが格上かって聞いたら、俺のママの方が格上じゃん? ちなみに俺の親父は会社の社長でお袋を口説き落としたんだよね。


「訳のわからんことを──」


 黄神アードラムの内力が膨れ上がる。行動に移る前兆だ。力を溜めて、神の力を一基に放出しようって感じなんだろうが──


「砲牙」


 俺は隙だらけのアードラムの脇腹に左フックの砲牙を叩き込んだ。

 体内を弾丸のような内力が跳弾し、内臓をぐちゃぐちゃにする。


「砲牙」


 即座に右の肘打ち胸に当て砲牙を叩き込む。


「砲牙」


 右足で放ったローキックの砲牙。俺くらいになると全ての打撃から砲牙を放つことができる。


「砲牙」


 こめかみを狙った右フックのパンチから放つ砲牙。


「砲牙」


 距離をつめ、左のアッパーカットで放つ砲牙。


「砲牙」


 至近距離で膝蹴りを放ち砲牙を叩き込む。


「砲牙」


 頭突きをぶち当て、砲牙を叩き込む。


「砲牙」


 最後に鳩尾に全力の右ブローの砲牙をねじ込む。

 合計八発の砲牙。俺に隙だらけの姿を見せたアードラムに連続で隙間なく叩き込んでやった。


「──奥義、砲牙八極撃《ほうがはっきょくげき》」


 八発の砲牙を連続でぶち込み、相手を体内のみならず完全消滅させる必殺技だ。

 人間相手には絶対出せない技。


「ぐぼぁっ!?」


 黄神アードラムは口からすべての内臓を液状化させた状態で噴き出した。

 まぁ、それでも致命傷ではない。


「貴様、やるな」


 そりゃどうも。褒められたのでダブルピースしちゃうよ、イエーイ。


「だが、神をこの程度で殺せると思うな」


 ま、そりゃそうだ。

 じゃあ、死ぬまで痛めつけてやりましょうかね。



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