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予想外の成果

「あなた方は一体、何をしているのですか?」


 アードの町の大聖堂で何日かのんびりしていると、ぶちぎれた顔のラスティーナがやってきた。なんだろうね、この女、トラブルのある所にいつもやってきてさぁ。水戸黄門でもやっていらっしゃるんでしょうか。どこぞの国のお姫様だってことだけど。さて、期待されてなのか、厄介払いなのか。


「この聖堂の司教様を軟禁しているとい噂を聞きました」


 そうだね。軟禁してるね。聖堂の地下に縄で縛って転がしてるよ。

 ちゃんとトイレと食事はさせてやってるんだから、そこまで文句を言われる筋合いも無いと思うんだけどなぁ。だって、あの爺さん、町をアンデッドで埋め尽くしてたんだぜ?


「弁明を求めます!」


 俺はあっかんべーと舌を出す。


「あっかんべーがうめぇ、べーがうんめぇ、べーんめぇ、べーんめーってのはどう?」


「ぶち殺していいですか」


 殺せるものなら、どうぞよろしく。

 まぁ、今までそう言って誰も殺せなかったから俺はここにいるんだけどね。


「……司教がアンデッドを操って、町を封鎖していた。この説明でいいか?」


 俺の代わりに、ゼティが説明をする。そのゼティはというと、刀を眺めながら、時を待っていた。


「妖刀メンヘラ丸の調子は?」


 訊ねた瞬間、ゼティの手から刀がすっぽ抜け、俺の方に飛んできた。

 まるで自分の意志があるかのような動きだが、まぁ刀一本にできることは限られている。俺は飛んできた刀の刃ではなく柄を掴んで、その軌道を止める。


「妖刀恋華(れんげ)だ。ちゃんと名前を呼んでやれ」


 はいはい、でもメンヘラ丸の方があってると思うんだよね。

 だって、その刀、最後に斬った相手の行方を追い続けるだろ。ストーカー気質のメンヘラ刀じゃん。


「で、位置は掴めそうなの?」


 俺はゼティに刀を投げ返す。

 ゼティは妖刀を鞘に納め、棒のように床に立てると無造作に手を離した。向いている方は北だ。もう一回、同じ行動をしても倒れる方向は北。都合、10回ほど、メンヘラ丸を棒のように倒したがすべてピッタリと同じ方向を指していた。


「北だな」


 こういう特性があるからゼティはメンヘラ丸でラ゠ゴゥを斬ったのだ。

 メンヘラ丸は最後に斬った相手の居る方向を指し示す。逃げられてもいいようにとのゼティの策だった。


「……あなた方、私を忘れていませんか」


「すまんね。忘れてた」


 だって、キミにそんなに興味ないしさ。キミの連れてる兵隊がスゲー強いとかだったら、興味津々になって、メチャクチャ喧嘩売るんだけど、そういうわけじゃないでしょ?

 戦えない奴に興味がないの、俺。面白い奴には関心が湧くけど、ラスティーナちゃんはどっちでもないじゃん。


「もういいです。私は司教様を解放します。いいですね!」


「どうぞ、御自由に~」


 それきりラスティーナは俺たちに目もくれず、大聖堂の奥へと向かっていった。


 さて、俺たちはラ゠ギィ達が逃げた先の北を目指そうか──そう思った矢先だった。


(──我が主よ聞こえますか)


 俺の僕のデストラの声が頭に響いてきた。

 不思議と前より、音質が良い。どういうことだ?


(聞こえている、デストラ。そっちで何かやったのか?)


(いえ、こちらでは何も。ですが、ある瞬間から急に主の気配をほんのわずかですが感じ取りやすくなり、連絡をした次第です)


 なんだろうね。何が原因かな。

 思い当たるのは黄神をぶち殺したことくらいだが──いや、ありえるか。


(こっちの世界の神を一柱滅ぼした)


(なるほど)


(世界を構築・管理するシステムの一部である神が死ねば、当然だが世界の管理に綻びが生じるってのはあり得るかも。黄神を殺したことで、この世界を隠蔽する機能が僅かに弱まった?)


 ありえなくはないかもしれんよなぁ。

 でもまぁ、確信は無い。そんでもって、そうなると今度はラ゠ギィ達の狙いが良くわからなくなる。


 アイツらは俺をこの世界に呼び出す儀式をイズヴァルトに教えた。ってことは俺にこの世界にいてほしいってことだ。その目的は知らんけどさ。

 なのに、アイツらは黄神を蘇らせて殺そうとしていた。なんで? だって殺すと、この世界を外の世界から隠すシステムが弱まるんだろ? そして、弱まれば、俺がこの世界を脱出できる可能性も高まる。

 俺を閉じ込めておこうと思って呼び出したのに、なんで俺を解放するような真似をしたんだ。


「うーん、わからん」


(とりあえず、デストラは可能な限り何時でも連絡が取れるようにしておいて。でもって、ついでにこの通信経由で俺に貸してる術を返せるか試してみて)


(わかりました。少々、お待ちを──)


 さて、どうなるか。俺は若干の期待を抱きながらデストラからの返信を待っていたのだが──


「いません! 司教様が地下にいません!」


 へぇ、そうなんだ。

 俺は慌てふためいた様子で戻ってきたラスティーナを興味なく眺めながら、デストラからの返信を待つのだった。



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