嫌な奴ほど目が肥えている
「ことの起こりは数日前、白神教会の宣教師たちが町を訪れた時からでした」
大聖堂にいた司教は訥々と語り始める。
興味は……多少ある。面白いことになりそうな臭いには敏感なのよ、俺。
「このアードの町は古くから黄神信仰が盛んな土地。白神教の宣教師がいくら説教を行おうとも、人々の信仰は揺らぎませんでした」
ふーん。そうなんだ。
でもまぁ、白神教の宣教師が来たのは間違いないのね。
「彼らは我々の信仰がゆるがないことを知った彼らは早々に宣教を諦め、町を立ち去ったのです。しかし、それからでした。町にある墓からアンデッドが絶え間なく湧き出てきたのは」
へぇ、そう。大変だったね。
隣に座っているゼティが剣の鞘で俺のすねを叩いてきた。残念ながら、俺は脛を鍛えているのでノーダメージです。
「司教殿は白神教会の宣教師が何かをしたとお考えですか?」
「……彼らも神に仕える身、非道を行うとは思えませんが……」
めんどくせぇなぁ、こいつら。
「ハッキリ言いなよ。白神教会の宣教師が信仰を曲げないキミらにイラついてアンデッドをばらまいたってさぁ」
俺がはっきり言うと、司教サマは押し黙る。
くっだらね。マジでくだらねぇわ。
「司教さんさぁ、この町って黄神教にまつわる聖遺物みたいなものってある?」
俺は疑問形で聞いたが、ぶっちゃけ確信があった。
聖堂の作りが古すぎるんだよなぁ、ここ。イクサスの町の中をそれなりに見て回ったので、建物の様式とか、この世界の今の基準はなんとなく分かる。それと比較しても、この聖堂は古すぎる。
「確かにありますが……」
「ゼティ、そこに行け。さっさと用件を済ませよう。司教さんは場所を教えて」
「では、案内を──」
俺は聖堂の椅子をガンッと蹴っ飛ばした。
「キミはここにいろよ、司教君。ゼティには場所を教えるだけでいい」
「──っでは、聖遺物があるのは、この町の中心部にある、大穴の中でして、専用の縄梯子がなければ……」
「穴なんてどんなに深くても問題ねぇよ。ゼティ、行け!」
俺ちょっとキレてるかもしんない。
まぁ、仕方ない。イラついた態度は我慢してもらってゼティには仕事をしてもらおう。
「わかった。すぐ向かう」
「なんかあっても、なるべく一人で片付けろよ。無理なら逃がしていい」
そう言って、俺はゼティを聖堂から送り出した。
「よろしいのですか。お仲間を一人で向かわせて」
はは、ウケる。
「なに、その言い方。まるで危険があるみたいじゃん」
善良そうなツラだなぁ。きっと、これまでの人生、いろんな人に慕われてきたんだろう、この司教様は。
俺とは正反対だね。俺は大抵の人間に憎まれて国際指名手配を受けるくらいだからさ。まぁ、プラスかマイナスを別にすれば、俺の方が多くの人間には知られているだろうけどさ。
「聖なる遺物とはいえ、神の力が備わったものですから。常人が関わるにはいささか危険が……」
「じゃあ、もっと必死に止めなよ」
チグハグなんだよなぁ、さっきから。
対面で話すとよくわかる。
この司教、何か隠してやがるぜ、間違いなくな。




