死人の町
イクサスの町で辺境伯の息子イズヴァルトを倒した俺ことアスラカーズは、イズヴァルトから得た情報をもとに、白神教会の宣教師たちを追ってアードの町へとやってきていた。地図なんかは全部ゼティにお任せ。道案内はそこら辺を歩いている人に聞いて何とか到着という感じだ。
とにかく俺たちが追っている白神教会の宣教師はイズヴァルトに内力法を教え、業術まで手解きしている。そのうえ、俺を召喚するようにイズヴァルトをそそのかし、結果モレー男爵が俺を召喚するという事態を引き起こした。
ハッキリ言って、並の連中ではないのは明らかだ。白神教会の宣教師、こいつらを追えば、俺がこの世界から出られない理由だったり、ゼティが召喚された理由なんかが分かると思うんだけどね。
「……おい、ここは本当に人の住む町か?」
「知らね。俺はゼティについてきただけだもん」
「おい、貴様のその他人のせいにする性格はなんとかできんのか」
「無理でーす。生まれついての物なので、死ぬまで治りませーん」
「だったら、殺して貴様も奴らの仲間に入れてやる。そうすれば、その性格も多少はマシになるだろう」
そう言って、ゼティが剣を抜いて切りかかってきたので白刃取りで受け止める。
さて、そうこうしている間に、ゼティが俺を仲間入りさせようとした連中──アンデッドの群れが襲い掛かってきた。
「手が汚れるのは嫌なんだよなぁ」
俺はゾンビの頭を蹴っ飛ばす。
なんというか驚いたことにアードの町はアンデッドがうろつく魔境であった。
「文句を言うな」
サーセン。でも、本当に嫌だから俺は見学ね。靴が汚れるのも嫌だしさぁ。
「おい、貴様!」
ゼティになんか言われる前に俺は屋根の上に登って、横になる。
はてさて一体全体どうしてこんなことになったのやら。
別に何も悪いことはしてないんだぜ?
今日は珍しく良い子にしてたの俺。でも、夕方過ぎに町についたら、アードの町はアンデッド──ゾンビだらけってありさま。日ごろの行いがよかろうが悪かろうが何も変わんないって証明だね。
「あぁ、鬱陶しい!」
ゼティは長剣を一振り。破魔の剣技だ。輝く浄化の光が周囲に広がり、アンデッドを一掃する。
「お見事」
適当にパチパチ拍手していたら、剣がぶん投げられ、俺の胴体にズブリと突き刺さった。
「気軽に殺すのやめてくんない? 残機に不安があるんだからさ」
俺は心臓に刺さった剣を抜いてゼティに投げ返す。
「貴様に残機の不安などある筈がないだろう」
さて、どうかしら。
俺だって、完全不死身の邪神ってわけじゃないしね。
何万回か殺せば確実に死ぬと思うよ。まぁ、人間相手だとそれじゃ勝負にならないし、ある程度残機を減らせたら俺の負けってことにしてやるんだけどさ。
「さて、人の気配のあるところを目指そうか」
アンデッドは消えたし、ここにいてもしょうがない。俺たちは白神教会の宣教師を探してるんだからさ。
俺とゼティは町をぶらつき人の気配を探す。すると、ほどなくして、町の中にある大聖堂が目的地となった。
ぶっちゃけ、凄い建物を見慣れている俺たちからすると、アードの町の大聖堂はこの世界の人間基準では凄いのかもしれないが、俺たちにとってはどうでもいいような、大したことのない教会だった。
「ちわーす。郵便でーす」
興味や関心がないので、俺は聖堂のドアを蹴破った。だって、封鎖されていたからさ。アンデッドが入ってこないためってことなんだろうけど、アンデッドは一掃したし別にいいだろ。
「な、何者ですか、貴方たちは!」
おや、偉そうな司教様が、哀れな住民の前に立って、健気に俺にたてついてきやがる。どうでもいいわ、マジで。
「アンデッドぶっ殺し隊です。街中にはびこるアンデッドはぶっ殺してきたので御安心を」
俺の言葉に湧き上がる住民たち。対して、司教様はというと「まさか」という顔をしていた。ちょっと違和感。もっと喜ぼうぜ、ミスター。
「失礼しました。この町を救ってくれた恩人とも知らずに無礼な態度をとってしまって」
「大丈夫。俺は礼儀とか気にしないから」
俺が気にしていないから、他人にも求めない。そういう心が大切だよね。
「……司教殿、この町で何があったか、教えてくれないか?」
ゼティが司教様に尋ねる。
そうだね、何があってアンデッドが街中に溢れていたのかはちょっと聞きたいかも。




