不死身同士
俺の戦闘スタイルはぶっちゃけ何でもあり。
基本はボクシング+中国拳法+ムエタイ+空手の打撃系を織り交ぜたものと柔術+プロレスの組技系。まぁ、人間時代に色々とやっておいたおかげで、大抵の攻撃は初見でも躱せるんだよね。
「死ねぇ!」
イズヴァルトが左手に持った鮮血の剣が刃を伸ばし襲い掛かってくる。俺はお辞儀をするようにして、屈んで躱し、即座に膝から体をそらして逆方向に体を曲げて、切り返された血の剣を避ける。
リーチ制限はほぼ無しね。
俺は分析しながら体を曲げた勢いのままバク宙で後ろに跳ぶ。
「見ろ。この赤き剣。我が貴き血より生み出される必殺の刃を」
違うな。イズヴァルトの血から刃を作ってるんじゃない。
おそらく内力が血に形状変化され、それが剣の形をとっているだけだ。
良くない展開だ。使ってる本人が能力の実態を知らない。ぶっちゃけ業術ではそれが有利になる。
そもそもが何でもありの状況を作るために俺が開発した術だ。細かい設定をしない方が無茶が効く。これはこういうものだと思い込んでいれば、その通りの性能を発揮するが、本人の不利にはならないようになっている。
今回の場合、イズヴァルトは自分の血で剣を作っていると思っているが、実際は本人の内力。しかし、内力で作られていることを本人が知らないので、血で剣を作っても内力は消耗しない。だって、知らないから。知らない事実は踏み倒せるのが業術だ。
何でもありすぎだって? そりゃそうだだって、こいつは神様になるために身に着ける術だからね。自由自在で無法外法で常識が通じないのは当り前さ。
「これが躱せるか!」
俺は横に跳ぶ。直後に血の斬撃が飛翔し、俺に襲い掛かってくる。
俺は拳で血の刃を弾いたが。思ったより硬く俺の拳が出血する。
自然とイズヴァルトの血が俺の中に入るが、もとは内力なのとイズヴァルトが血液型について知らないおかげで体内で血が凝固するなんて心配はなさそうだ。
知らないし、考えないから不利になるってことも業術にはある。
「硬いけど硬すぎはしないね」
遠間は危険と判断し、俺は距離を詰める。
近づく間も伸縮する血の剣が俺を襲うが。太刀筋自体はそこまで変わっていない。
血の剣は重さもないのだろう、手首の振りだけで縦横無尽に剣が舞うが、俺は躱したり刃を叩き落しながら、俺の間合いへと無理やりイズヴァルトを入れる。
「こいつはどうかな」
防御の反応がみたい。俺は何の変哲もない前蹴りを放ったが、直後、剣が形を変え、イズヴァルトの周囲を卵の殻のように守る。
「めんどくさ」
蹴りは血の殻によって防がれ、イズヴァルトまでは届いていない。
「貴様の攻撃など二度と通じん!」
血の殻で蹴りを弾かれた俺に対し、殻を解除し、血の剣を振るうイズヴァルト。
剣を振るうタイミングに合わせて、俺はカウンターでイズヴァルトの顎にアッパーを叩き込んだ。
攻撃の意志が強い時は防御態勢は取れないようだ。
「砲牙」
俺はイズヴァルトの頭に直接、砲牙を叩き込んだ。
頭蓋の中を内力の弾丸がかき乱し、頭を破裂させる。
「ははははは、何だこれは、全く効かんぞ」
頭を吹き飛ばしたんだけど、イズヴァルトは全く気付いていない。膨大な内力が瞬時に肉体を再生させるせいだ。
「そりゃ、そうだ。強くなってんだからな」
イズヴァルトの頭は元通りになり、血の剣が返す刀で俺の心臓を貫いた。
「死ねぇ!」
殺意に応えるように血の剣が俺に刺さったまま破裂し、俺の上半身が吹き飛ぶ。
爆発攻撃もあり──と俺が冷静なのは俺も内力量が膨大にあるのですぐに復活するからだ。
「……っなんだと」
「隙あり」
俺は呆然とするイズヴァルトの顔面をぶん殴って、その体を吹っ飛ばす。
だが、対して効いてないだろう。業術を発動した段階で、内力量は数十倍になり、それに応じて肉体の強化度合いも高まる。
「貴様、不死身か、化け物め!」
「自分を棚に上げてよく言うなぁ。キミも頭が吹っ飛んだじゃないか」
確かにと今頃気付いたのかイズヴァルトは自分の顔を触って確かめる。
「ま、内力量が増えると死ににくなるってことさ。とはいえ、殺す方法が無いわけじゃない。再生するたびに内力の総量は減っていく。だからまぁ、殺し続けていれば、いつかは蘇らなくなるよ」
俺だけ仕組みを知ってるのは公平じゃないからね。楽しく喧嘩するためにはお互いにルールを知ってなきゃ。
「ちなみに、どれくらいで限界が来るかは誰にも分からん。殺され方が激しいと、再生に使われる内力量も多くなるとか言う話もあるし、気合があれば、殺されても内力量はほとんど減らないとも言われている。ちなみに、俺たちは命の残り量を残機って呼んでいる。キミも俺たちと同じ世界に足を踏み入れたんだから、そう呼びなよ」
さて、俺の残機は実際どんなもんだろうか。
俺は相手によって強さが変わる呪いをかけているから、相手の強さ次第で内力量もかわるんだよね。対してイズヴァルトはというと、テンション絶好調だし、2、3回で残機切れを起こすとは思えねぇな。
さて、楽しくなってきたぜ。
命の削りあいこれこそが喧嘩の華だ。




