思いがけない強さ
内力法──それは俺達が使う魔力や闘気などの内からでる力をすべて混ぜて使う技術だ。実際の所、そこまで珍しい技術ではないのだけれど、この世界でそれを使う奴は初めて見た。興味が湧くのは当然だろ。
「何者だ貴様」
「アスラカーズ。昨日処刑されそうになった男だよ」
俺の返答の最中、内力を固めて飛ばした刃が俺に迫ってくる。
危ないなぁ。俺は蹴っ飛ばしてその刃を弾き散らした。
「俺の質問に答えてないんだけど、答えてくれるかな」
俺はスッと前進し一気に距離を詰めながら拳を振り下ろす。
しかし、その一撃はイズヴァルトの内力を込めた剣によって防がれた。
「お」
反撃に振るわれた剣を後ろに跳んで躱す。
適当に学んだ感じではなさそうだ。
「なんだ貴様は!」
「アスラカーズだって言ってるでしょ。キミの命令で召喚された邪神のさぁ」
「知らん。それは白神教会の宣教師たちが──」
おっと、なんかいけないこと言っちゃった?
急に口をつぐんでしまったぞ。
ふぅ、とイズヴァルトは息を吐く。精神を落ち着かせたようだ。
「とにかく今は貴様を殺す」
「そりゃ無理だ。だって俺の方が強いもん」
直後、イズヴァルトが俺に向かって突進してくる。
激烈な踏み込み、この世界で見た中で一番の身体能力だ。
そして、高速の一太刀。これもこの世界で見た中で最速。
「でも、遅い」
太刀筋が浅いんだよね。だから軌道も読みやすいから、指三本でつまみとれる。
「内力での身体強化は及第点をやろう。武器強化もまずまず。ただまぁ、そのせいで、俺もちょっとだけ本気を出せるんだけどさ」
俺は相手の強さによって自分の能力に制限がかかる呪いがかかっている。
一般兵相手なら、それ相応の強さ。イズヴァルトくらいの相手だったら、それに合わせた強さって感じで、強さが結構変動するんだよね。
俺はイズヴァルトの胸を蹴っ飛ばして、床に体を転がす。
「俺を足蹴に!」
イズヴァルトはすぐさま起き上がると蹴られた胸元を抑え怒りに震える。
「口を開いている暇があるのかい」
腕のスナップを効かせた高速のジャブがイズヴァルトの顔面を捉える。
威力は弱い。ただ、鼻先を打たれたせいで一時的に集中が途切れる。俺はそこへすかさず上段蹴りを叩き込んだ。蹴りが来ると分かったのか、避けようとするイズヴァルトしかし、蹴りの軌道が変化し、側頭部に俺の蹴りが直撃する。
「悪い、ブラジリアンキックだわ。分かるブラジリアンキック?」
「殺してやる。この俺を!」
会話になってねぇぜ、ミスター。
もっと楽しく戦ろうや。
そんなことを思っていると、唐突にイズヴァルトは懐から袋を取り出し、その中身を自分の口の中に流し込んだ。その瞬間、イズヴァルトの内力量が跳ね上がる。
「へぇ、魔増薬ってそんな感じの効果なんだ」
結構なドーピング効果だね。ま、それがあってようやくフェアな勝負かも。
「俺を舐める奴は殺してやる。全員、全員だ」
「舐められるキミに問題があるとは思わないかい?」
挑発するような言葉で攻撃を誘うと、首を刎ねる軌道で剣が襲い掛かってきた。
俺はそれを潜り込むような動き──ダッキングで躱し、イズヴァルトの懐に入ると、急所である鳩尾に拳を叩き込んだ。だが──
「効かん!」
冒険者連中にやった以上の威力で殴ったのにノーダメージでイズヴァルトは反撃してきた。俺はバックステップで距離を取りながら攻撃を躱すが、逃げる俺をイズヴァルトが追って前に出る。
横薙ぎに払われた剣。俺は内力を腕に集中させガードするが、衝撃を殺しきれずに吹っ飛ばされる。
「どうだ!」
吹っ飛ばされた俺は床を転がるがすぐさま起き上がり、体勢を整える。
完全に防ぎきれなかったのか、腕には切り傷が残っていた。
「いいんじゃない」
舐めた貴族の坊ちゃんをぶっ飛ばして終わりかと思ってたら思いもがけず強くてうれしくなっちゃうよ。
さて、キミは俺をどれだけ楽しませてくれるんだい?




