処刑台オンステージ
「出ろ、貴様を処刑する」
快適な獄中ライフから数日。
メシ抜きにされたり、眠れないように夜中に目いっぱい音を鳴らされたりしたけど、俺はメシも睡眠も必要ない体なので、何も問題はなし。ただ、人間らしい生活をしないと精神がどんどん人間から遠ざかっていくからそこが心配ちゃん。
処刑とはなんぞやと思い、衛兵たちの後についていくと、お外へ出ることになった。俺は陽キャだから太陽の光がないとダメなんだよねって今思い出した。
「サンキューベリーマッチ」
余計なことをしゃべったので衛兵が棒で叩いてくるけどノーダメージ。
俺の体は硬いだろ。アッチの方もカッチカチだぜ。
「貴様、我々を舐めているな!」
「気にすんなよ。キミらだけじゃなく俺は世界全体を舐めてるからさ」
俺の口はビッグマウスしたがって舌もでかいから、世界を舐めるなんて余裕さ。
あ、やばい。精神が人間離れしつつある。
「もういい放っておけ、こういう奴ほど処刑台に上がれば、震えあがるものだ」
キャー怖いってか、馬鹿言ってんじゃないよ。俺が人間時代になんど死刑台に登ったことがあると思ってんだ。その度に死刑を乗り越えてんだぜ。舐めんなよ。
衛兵に連れていかれると、そこは街の広場で。どうやら俺のために処刑台を用意してくれていたようだ。俺はせっつかれるまま、処刑台に登る。
処刑の方法は絞首刑のようだ。
「見よ、この者の名はアスラカーズ!」
おっと衛兵隊長のギースレイン君だっけ? かが演説をしている。
「この者はこれよりモレー男爵を殺害した罪によって処刑される!」
ふーん、そうなんだ。
みんながギースレインの方を見ている中で俺は手に括りつけられた縄をほどいた。縄抜けは基本技術よ。みんなも身に着けよう。
「さらに、恐ろしいことにこの者は男爵の死体を隠し、罪を隠蔽しようとした」
男爵の死体は見つかったのかしら。そしたら俺にもご一報をくださいな。
「よって、この男には死刑が相応しい」
さて、足の縄抜けも完了。俺はどうどうと完全開放された姿で観衆に向かってダブルピースをしてみせた。縄抜け成功ドヤ顔ダブルピース!
「え?」
自分の思ったタイミングでない歓声にキョトンとするギースレイン。
コイツの予定では俺の首が吊られるのと同時に歓声が上がると思っていたんだろうけど残念でした。
俺の方がパフォーマンス力が上だったね。
「な、貴様!?」
ギースレインの演説を聞いていた処刑担当の衛兵が俺のダブルピースに気づいたのか、慌てて俺を抑えにかかるが、まぁ相手にならずワンパンで沈める。
「なぜ、自由に!?」
ギースレインが剣を抜こうとするがそれより早く俺の拳がギースレインの顔面を捉える。
「また歯を折ってごめんね」
俺の拳を受けて吹っ飛ぶギースレインの口から白いものが何本か飛び出ていくのが見えた。
「まぁ、これも実践と経験の違いってヤツ?」
処刑台の上で無事に立っているのは俺一人。
おかしいね、俺を処刑する台のはずなのにね。
「イエーイ!」
今日は俺のオンステージ。一曲歌いたい気分だが、残念ながら状況はそれを許さない。
「奴を捉えろ!」
衛兵隊たちが集まっていく。
俺は絞首台の縄を掴み、振り子の要領で反動をつけ、縄の勢いで空高く飛び上がった。そして宙で身を翻しながら、衛兵隊の奴らに対して中指を立てる。
「あはははは」
わらけてくるぜ。どいつもこいつもマヌケばかり。
全部みんな焼き払いたくなってくるぜ。
宙を舞い、群衆からの脱出を果たした俺はその勢いのまま、近くの建物の屋根の上に着地し、脱出に向けて走り出す。屋根の上を駆け抜けて目指すのは城壁。
足の速さでも誰も俺に追いつけない。俺は街を守る城壁にとりつくと、その壁に指をかけてひたすらに登っていく。
ほどなくして城壁の上にたどり着いた俺はそこから飛び降り、地面に着地。
何十メートルくらいの高さがあろうが、俺が落下しするわけないじゃん。
こうして、市内からの脱出に成功した俺はその勢いのまま近くの森まで逃げ込んだ。




