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電波が悪い

 俺は牢屋の中の粗末なベッドの上で座禅を組み、意識を集中する。静かな場所じゃないと集中できないので、ここはうってつけだ。


(聞こえるか、デストラ)


 意識を集中し念を送る。送る先はかなりか細い気配だ。


(!? 聞こえました、我が主よ)


 電波がめっちゃ悪い感じだなぁ。相当に集中してないと意識が通じ合わない。


(一体、今どちらにおられるのですか? 何日も連絡が取れず)


(分からん。ちょっとしくじって、全く知らん異世界に飛ばされた。俺の座標は追えるか?)


(現状は無理です。どうやら、登録されてる世界ではないようで。追跡をかけないと座標の探知は難しいかも。しかし、手掛かりとなるのが、この思念のやり取りだけですので……)


(はっ、誰も知らない異世界を誰にも気づかれずシコシコと作ってた変態神でもいたってことかよ。で、俺はそこに放り込まれたと)


 あまりにも作為を感じるよなぁ。

 俺は偶然、この世界に召喚されたわけではない?

 俺が逃げられないように、この世界が作られていた?

 全てどっかの誰かの狙い通り?


(いいね。楽しくなってきた。どこの誰が俺を嵌めたのか知らねぇが、俺に喧嘩を売ってるってことだろ。じゃあ、買ってやらなきゃな)


(主よ、あまり興奮されては思念が……)


 おっと危ない。


(そっちから、誰か使徒を送り込む。もしくは、こっちから使徒を召喚することは可能そうか?)


(送る世界、呼ばれる世界が分からない以上。それは難しいかと……)


 魔術系に詳しい奴とか術式が得意なやつとか呼べると状況の改善ができそうだとおもったんだけどなぁ……ってアレ?


(ゼティはこの世界にいるぞ)


 使徒の召喚なんかは不可能なんじゃなかったか?


(ゼルティウス殿がですか? まさか……主にはお伝えしていなかったのですが、ここ数か月全く連絡の取れない使徒がおりまして、その中にもゼルティウスどのも入っているのです)


 つまり、あれか。ゼティも俺と同じで誰かに嵌められて、この世界に呼び出されたパターンってことで、そういう使徒が何人もいるってこと?


(別に俺の使徒に連絡が取れないのは珍しいことじゃねぇからいいけど、連絡が取れなかった奴がこの世界にいるってのは作為を感じるな)


 狙いは俺だけじゃなく、俺と俺の使徒のグループ全体か?

 一瞬、ゼティが俺を嵌めた側なんじゃないかって考えもよぎるが、それは絶対ありえねぇ。首を刎ねたり、後ろから刺したりしてくるが、本気でアイツが俺を裏切ることはあり得ない。つーか、俺の使徒は俺と敵対することには全く躊躇いはないけど、自分の自由を狭めてまで裏切ってくるほどの奴は誰一人としていない。これは確信だ。


(とりあえず、そっちはいない使徒の気配を追いながら、この世界の座標を観測してくれ。でもって、観測が完了したら連絡をくれ)


 俺一人の気配を探すのは難しくても俺の使徒の気配ってくくりならだいぶ探しやすくなるはず。まぁ、いなくなった俺の使徒の大半がこの世界にいるとしたらの話だけどさ。


(承知いたしました。……少々お待ちいただけますか……)


 何? って思ってると段々と俺の中に力が流れ込んでくるのを感じる。


(お借りしている術式をお返しいたしました。制御担当の私がいないので扱いはむずかしくなると思いますが、あって困らないかと)


 ありがたいね。でも、デストラに預けておいた俺の術ってそこまで汎用性ないから使わない可能性が高いんだよね。あ、そうだ。


(システラにも俺との回線をつないでおいて、アイツの武器庫から俺の持ち物を出せるようにしておいて)


 システラは俺が嫌いだから直接話したがらないだろうけど、デストラ経由なら何とかなるだろう。


(承知いたしました。システラには必ず伝えておきます)


 さて、そろそろ本格的に電波が悪くなってきたぞ。

 どこぞの異世界との交信もなかなか気づい感じだ。


(じゃ、あとはなんとか上手くやっておいてくれ。困ったことがあったら、プロメテウスかマー君に相談。シロには絶対内緒。別に隠すまでしなくてもいいけど、伝える相手は選んでね、じゃ、よろしく)


 名前を挙げた三人は全員俺の使徒。

 プロメテウスはサイバルト・プロメテウスって名前で何百って世界で神の敵認定され、文明設定崩壊をやらかしてる超級の異世界犯罪者だが思考はまともなので頼りにできる。

 マー君はエルジン・マクベイン。魔術関係の専門家で使徒としても俺と付き合いが長い。悪い癖はあるけど、信用できる相手だ。

 シロはヴァイス・ホワイト、神官の皮を被った極悪人。少しでも俺に油断があると俺の座にとって代わろうと悪事を繰り返すので面倒。ただ、持ってる能力はこの状況を一番打破しやすかったりする。


(……マクベイン殿もここ最近連絡の取れない使徒に含まれております)


 じゃあ、マー君もこの世界にいるかもしれないってことか。

 そりゃ助かる。マー君探しも結構大事だね。


(……申し訳ありません。思念の維持がそろそろ難しく……)


(いいよ、じゃあ後は指示通りに)


 そこで俺とデストラのやり取りは終わった。


 さて、分かったことはいくつかある。

 まぁ、整理なんかしなくてもいいけど、とにかく俺はこの世界から出られない。俺の使徒も含めているから、俺のグループそのものを狙った犯行。充分前から準備をしていた気配。それに嵌められた俺ら。


「つまりアレだ。俺と本気で喧嘩をしたいってことだろ。この状況──この世界を作った奴はさ」


 いいね。ワクワクしてきちまうよ。

 じゃあ、戦《や》ろうぜ。どこにいるとも知れねぇクソ野郎。

 俺たちと本気の喧嘩を戦《や》ろうじゃねぇか。



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