世界はそれをテロリストという
領都から脱出した俺は以前に冒険者ギルドの依頼でドラゴン討伐をした森に駆け込んだ。とりあえず、森に入った俺は綺麗な泉にダイブし、体の汚れを落とす。
別に潔癖症ってわけじゃないんだけどさ。牢屋の中は汚かったからね。そのままってのはなんか嫌だった。
俺は服も脱いで洗い、素っ裸で森の中に立つ。
ウーム、ミケランジェロとかダビンチがいたら、必死こいてデッサンする肉体美だぜ。と自画自賛していると、物音が聞こえてきた。
「なぜ、一人で森の中、ポージングをしているのだ」
「もしかしたらどっかの芸術家が俺の肉体美を目に焼き付けたいかと思って」
声をかけてきたのはゼティだった。
ゼティは袋に入った荷物を俺に投げ渡してきた。
「服屋からの品だ。他に紋章がついた袋が入っているが何に使うんだ?」
俺を背中からぶっ刺した野郎なわけだが、まぁ俺の味方なので、甲斐甲斐しく俺の世話もやいてくれるわけ。助かるね。
「食い物ない? ちょっと人間性が減ってる」
それも予想していたのか、ゼティはハムとチーズを挟んだパンをくれた。
メシと睡眠は人間らしさ──人間性を維持する上での最低限必要なものだ。
人間性なくなると、なんか色々どうでもよくなってくるんだよね。
俺はパンを貪り食い。新しい服に袖を通す。
「グッド! いい仕上がりだ」
黒いブルゾンに白いシャツ、サンドブラウンのズボン。地味だが、まぁこんなもんだろ。着ている俺が派手だから何でもOKさ。
「さて、やる気が出てきたところで、俺の手下のゼティ君にご朗報」
「手下はやめろ」
手下呼ばわりは嫌? じゃあ、続けるね。
「どうやら、俺らはみんなで嵌められてるらしいってことがデストラとの念話で分かった」
「デストラと繋がったのか」
いちいち反応しないでね手下君。
「この世界の座標は観測できないから、他の世界への移動もできない。それに加えて俺と俺の使徒を狙ったようにこの世界に召喚している。普通は無理な筈だが、なんか裏技使ってるんだと思うね」
「なぜ、この世界の座標がわからないと転移できないんだ?」
おまえ、お勉強してる?
自分も異世界転移をしょっちゅうしてるくせにその仕組みも知らんのかい。
「世界ってのは銀河系を超えたより上位の場所にあって、世界を渡る際には転移元の世界のある座標と転移先の世界がある座標が正確にわかってないと、二点間の距離を正確に測れずに異世界へ飛べないんだよ。この世界は座標が観測できないから本来は別の世界から飛ばせないはずなんだが、俺もゼティも飛ばされてきている。そこに何か裏技があるとおもうんだけどね」
「ほぉ、そうか」
テメェ、わかってんの。
いや、わかってなくてもいいや。キミは適当にチャンバラしててください。
「でもって、狙ったように俺やゼティ、ついでにマー君もおそらくはいるだろう。俺の使徒ばかりを狙って飛ばしてきてるってことはそこになんらかの意図があるのは明白だろ」
「まて、マクベインもこの世界にいるのか」
「おそらくってだけ。可能性は結構高いと思うけどね」
ふむとゼティが考えたふりをしている。
馬鹿の考え休むに似たりというし、ちょっと休ませてやろう。
「──で、結局どういうことなんだ?」
「つまり、俺らが喧嘩を売られているってこと」
狙って仕掛けられてるってことはその通りだろ。
馬鹿にも伝わるように言ってやったが、さてどうか。
「なるほどな。とにかく俺は俺たちをこの世界に召喚した奴を斬ればいいわけか」
OK、それだけ分かってれば充分だよ。
「とりあえず最初の標的だが、狙いは辺境伯代理になるだろうな」
「なぜ?」
「俺を召喚する儀式をモレー男爵にやらせたから。つまり、どうすれば俺を呼び出せるか知ってるやつなんて怪しいだろ?」
「確かに」
「ついでにどうやって、座標不確定なこの世界に俺を呼び込めたのかも聞けるかもしれん」
「確かに」
かにかにかにかに、テメェは蟹かこの野郎。少し黙ってろ蟹侍。
「ま、他にも色々と話を聞きたい奴が殺到しているだろうが、そいつらはどうでもよくて、俺らはどうやって俺を召喚したかを聞けばいいだけだ」
話は簡単、辺境伯の所に行って、辺境伯をぶちのめして、辺境伯の口を割らせればいいだけのこと。つまりは俺らの得意分野ってことだ。




