手慣れたやり方
「き、貴様は、あの時のニセ邪神!?」
ニセとはひどいなぁ。これでも本物の邪神なんだぜ?
「な、なにをしに来た、召喚した私へのふ、復讐か」
怯えて声が上ずってて面白いなぁ。ビビりすぎだろ。心配すんなって。
「大丈夫大丈夫、俺って復讐とかしない性質だしさ。そもそも、俺は自分が被害者だなんて思ってないから大丈夫だよ」
安心させるように男爵の頬をぺちぺちと叩き、そして思いっきりビンタした。
「俺は常に自分が加害者の側に立ってると思ってっからさ。だから復讐はされても復讐はしないよ」
できれば、キミにも後で復讐しに来てほしいんだけどね。
復讐しに来る相手が増えるってことは敵が増えるってことで、俺が戦う機会が増えるわけじゃん? だから、よろしくね。
「復讐ではないなら、いったい何の用だ」
お、頑張って強がってるね。いいよ、いいよ。男の子はそれくらいじゃなきゃ。
「いやさぁ、キミから情報を引き出せって頼まれちゃってさ。それと俺個人として一つ聞きたいことがあるかな」
「素直に話すとでも?」
俺はワインの入っていた瓶を叩き割った。
ちょうどいい持ち手は残ったまま、底がわれて無数のガラスの刃が現れた。
「俺って結構こういうこと慣れてるからさ。素直になれない奴を素直にする方法は結構得意なのよ」
割れたガラス瓶の先を男爵に向ける。
「これを口の中に突っ込むとか。テーブルナイフで肉をこそぎ落としていくとか、詰めの間にフォークをぶっさすとか、目玉をスプーンでくりぬくとか。まぁ、いろいろできるよ」
全部やったことあるしさ。
心配しなくてもミスはしないぜ。殺すようなミスはせず、生き地獄を味わわせてやるよ。
「おっと、顔色が変わったね。どうする素直に話す?」
「……何が聞きたい」
お、素直になったね。素直な奴は時と場合によって好きだぜ。
「魔増薬の密輸の仕切りを誰がやってんのか聞きたいねぇ。領内を通る物資の管理はキミがやってんだろ。どこから魔増薬が入ってきてんのか、キミなら知ってるんじゃない?」
男爵の顔色が青くなる。
まぁ、それは本人の問題なので知ったことじゃない。
「それは──」
言い淀んだので真紅の縄を首に巻き付け、強く締め上げる。
ぶっちゃけ、これは尋問だから使えてるだけなんだよね。俺は戦闘になったら、相手に合わせて弱くなるから、この神器は使えなくなるし。
「話しなよ。苦しいのは嫌だろ?」
俺は縄をほどく。すると、男爵は堰を切ったかのように俺の問いに答えるのだった。
「魔増薬は白神教国から送られてきている。全て辺境伯いや辺境伯代理からの指示だ。街に流す指示も辺境伯代理からで──」
「それがわかればいいよ」
俺は縄をほどいてやる。
その瞬間逃げようとしたので、足を引っかけて転ばせた。
足が長いってのはいいね。羨ましいだろ?
「俺の質問に答えてねぇでしょうが」
首根っこを掴み、もういちど男爵を椅子に座らせ、尋ねる。
「俺を召喚する儀式だけど、アレってキミが全部考えてやったの?」
「いや、違う。それも辺境伯代理の指示で。私は市内に邪教なるものを流行らせるように命令され、あの儀式をやるように言われただけだ。儀式の手順も辺境伯代理が──」
ああそう、辺境伯? 辺境伯代理? そいつが色々と鍵を握っているってわけね。
「ありがとね。聞きたいことはないから、もう開放するけど。キミはどっかに身を隠していた方が良いかもなぁ。多分だけど、そのうち口封じされるだろうからさ」
「貴様のせいだろ!」
「いやいや、最初から多分口封じ前提だと思うよ。だから、色々と無茶なことをやらせていたんだしさ」
男爵の顔は真っ青だ。
俺の言葉に危機感を覚えたのか、屋敷の中の金目の物を漁りだした。
なるべく強盗が入ったような感じにするのが良いと思うよとアドバイスしようかと思ったがやめておいた。
もう、関係ないしね。
「さて、辺境伯代理ね。狙うべき相手は見えてきたって感じかな」
敵の正体が少しわかった俺は慌てる男爵をそのままに男爵の屋敷を後にするのだった。
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