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悪の道はワルに聞く

「ちわちわー」


 俺は宴会の最中にラスティーナの馬車に呼び出された。

 ラスティーナは複雑な表情で俺を見ている。


「お渡しした報酬をこんなことに使って、貴方は何を考えているのですか」


 町の奴らを巻き込んで大宴会をやっているのが気に食わないらしい。


「俺は楽しく過ごそうと思っただけだよ。喧嘩以外には酒飲むしか楽しみねぇんだもん。ついでに大騒ぎもしてりゃ気分も晴れるってもんさ」


 顔をしかめながらラスティーナは俺に紙を渡してくる。


「次にあなたに襲撃してほしい場所です」


 はぁ? 俺は馬鹿らしくて紙を破り捨てた。

 そんな真似をされたことは人生で一度もなかったんだろう。目を丸くするラスティーナ。


「違うんだよなぁ。いちいち卸業者つぶしてどうすんの?」


 分かってんだろ? 製造元がこの街にない以上、この街で中間業者を潰してもテメェの望みには届かねぇことをさぁ。


「製造元は市外。市外からクスリを仕入れてるやつがいて、そいつがいろんな奴にばらまき、小売りの売人がそこらを歩き回ってんだろ? なのになんで、細々と枝葉を叩かなきゃならんのかね」


 つまらねぇ真似させるなよ。この俺様にさぁ。


「落ち着いてください。この件の大本はそう簡単な相手ではなく──」


 知らねぇよ。簡単じゃない?

 そりゃテメェの物差しだろ。俺の物差しなら、こんなもんは簡単な部類さ。


「やるべきは、根元に近いのを叩くこと。街の中に製造所が無いのなら、

 どこから仕入れているのかを調べる。それが第一だろ?」


「では、その調査をやっていただけますか?」


「無理。伝手がないもん。そういうのを調べるのはキミの方が得意なんじゃない、お嬢様?」


 わざとらしく肩を竦めて見せると、ラスティーナお嬢様の眉がピクリと動いた。

 お、舐められるってわかった? 人生であんまりない経験だろ。まぁ、優しいから俺がヒントを出してやるか。


「ここは辺境伯の領都だし、国境をまたいで色んな物資が届く。貴族の中にはそれを管理してるやつもいるだろうから、そいつから当たるのが良いんじゃない?」


「でしたら、モレー男爵が領都における物流の管理をしています」


 いいね、ポンと答えが出るの。俺はそういうの好きだぜ。

 そのモレーってのが魔増薬を密輸しているのか、密輸を見逃しているのか、どっちかは分からねぇが、まぁ本人に聞けばわかることだな。


「……俺、カッコいズボンとシャツが欲しいんだけど。ついでに上着も」


 俺はラスティーナに向けて手を差し出した。

 意味はわかるだろ? と視線を送るとうんざりした様子で金の入った袋を渡してきた。前金貰っちゃって悪いね、どれどれ……


「……俺って生地にもこだわる派なんだよね」


 俺はもう一回てのひらをさしだした。

 ラスティーナの眉毛が吊り上がり、こんどはドサッという感じで袋を渡してきた。

 その袋には紋章が刻まれており、袋自体もきちんとした刺繡がされたものであった。


「ラッキー。おねだりしてみるもんだね。じゃ、モレー男爵のことは俺に任せておいてよ。なんとかしといてやるからさ」


 貰うもんは貰ったし、さっさと宴会に戻ろう。

 ──と、言うの忘れてたわ。


「魔増薬の密売に関しては衛兵隊も承知のことみたいだぜ? 結構、根っこが深い問題かもね。気をつけなよ」


 一応、心配しておくが、この女ならそうそうへまはしないだろうとも俺は思った。


 ──さて、モレーって男爵の所に行くのは確実として、この後はどうしようかな。宴会で通りは真昼間から大騒ぎ、服屋が開いてりゃいいけどなぁ。

 そんなことを思いながら、俺は結局宴会に戻ることもせず、町の陰の方へと進んでいった。金の袋が重いが心地よい重さだ。


 服屋は開いていたので、採寸してもらってオーダーメイドでシャツとズボンをお願いする。上着はブルゾンとジャケットのどちらにしようか悩んだが、薄手のフード付きブルゾンをお願いした。ブルゾンは袖口をゴムやベルトで止めるタイプの上着で、俺は袖口を広めにしてもらうように注文した。

 色はどうしようかとも思ったけど、ちょうどいい黒の生地があったので、無難に黒にしてもらった。黒も生地の色味によってはいやらしい感じなるから気をつけないとね。ズボンに関しては足を上げても余裕があるように太もも周りに余裕を持たせてもらった。シャツは白かグレー、襟付きじゃなきゃ俺は嫌なんだよね。ティーシャツとかそんなに好きじゃない。ボタンダウンの形式もいいなぁと思ったんだけど、この世界ではボタンダウンのシャツは内容で諦めた。シャツの裾はズボンから出してもだらしなく見えない程度の長さにしてもらった。暑い日は袖をまくったシャツをズボンから出していくスタイルだ。他にも服に関しては色々と注文をつけたので完成には少し時間がかかるらしい。

 それはまぁいい。俺はとりあえず、ラスティーナからもらった金のほとんどを服に使うことにした。そういえば、スカーフとかネクタイも欲しいよなぁ。それは次にしよう。

 あと、ラスティーナからもらった袋は取っておくことにした。特に紋章がついている方は大事に取っておく。暇があればどこからか冶金道具を仕入れてこよう。


 さて、時間も良い頃合いだろう。モレー男爵の所にでも行くとしようかね。




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