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ろくでなしライフ

「じゃっじゃーん!」


 俺は金貨が入った袋を中身が見えるように冒険者ギルド内の酒場のテーブルに置いた。どうよ、貧乏人共、大金だぜ。


「おい、とうとうなんかやらかしたか?」


「捕まえるときは俺がやってやる」


 駄犬のジョンとジャックがキャンキャンうるせぇなぁ。

 真っ当に働いて稼いだ金だぜ。


「謎の女にカチコミかけるの依頼されてもらった金だぜ」


 俺の周りに集まっていた冒険者たちが一斉に後退する。


「絶対やばい金じゃねぇか」


「やばくねぇよ。本当にやばい金はポケットの中。そこらの売人ぶちのめして巻き上げた金だからな」


 まぁまぁ、金の出どころなんていいじゃない。

 大事なのは金があること。そして俺は太っ腹。つまりはパーティーナイトだ。


「金はある! 全部俺の奢りだ! 今日はみんなで飲み明かそうぜ!」


 ある金は使うに限る。どうせ墓場まではもってけねぇんだからさ。


「さぁ、ウェイトレスの嬢ちゃん──「お断りです」


 おや、客商売をやってのにそんなことを言っていいのかな?

 俺はギルドの受付嬢の方を見る。酒場はギルド内にあるので、受付嬢の姿は良く見えるが、見える受付嬢はみんなして俺をゴミを見る目で見てくる。


「あんたたち、うっさいのよ!」


 おやおや、羽目を外しすぎたか。どうやらみんなに嫌われてしまったようだ。


「しゃあねぇ、河岸《かし》を変えるか。良い店知ってるやつ?」


 何人か手が上がった中で俺はジョンの提案した『黄金の杯亭』に行くことにした。


「よっしゃ、野郎ども。飲み行くぞ!」


 オーッ! という叫びと共に冒険者たちが立ち上がり、俺の後について歩き出す。

 ここまでくりゃ怖いものなしだ。


 俺は冒険者を引き連れ街中を歩く。でもって、目が合った通りすがりの人の肩を抱き──


「これから飲みに行くんだけど一緒に行かねぇ? 全部俺の奢りだからさ」


 とりあえず目につく奴らみんなに絡んで飲みに誘う。

 すると冒険者だけじゃなく。よくわからん連中も集団の中に入ってきた。

 これが人生。旅は道連れ、余は情け。酒は人と人との潤滑油。


「たのもー!」


 俺は開店してるんだかしてないんだから分からないけれど、とりあえず、黄金の盃亭の扉を蹴破った。何事かと目を白黒させる店主に金貨の入った袋を投げ渡し──


「今日は俺の奢りだ。来る奴全員に好きなだけ、飲んで食わせてやれ!」


 もはやこの世は俺の独壇場。俺は目だったりチヤホヤされるのが大好きなんでな。最高に羽振り良く振舞うぜ。

 禿げ頭の店主が慌ててエールの入ったジョッキを俺に渡してくる。


 俺は店の中央のテーブルの上に飛び乗り、エールを一息で飲み干し、叫ぶ。


「じゃんじゃん騒げ、ゴミども。今日は自由の日だ!」


 湧き上がる歓声。俺はテーブルの上にどっかりと座り、宴の開始を眺める。

 それぞれが酒を頼み、食事を頼みで混沌の極み。いやー最高だぜ。


 ──それから数十分後、黄金の盃亭は地獄のような有様になった。

 タダ酒にありつけると聞いた連中がこぞって集まり、店の中に入りきらなくなった。

 酒と食材が尽きて禿げ頭の店主が泣きそうな顔になっている。客を捌ききれないのも問題だ。


「入れねぇ奴は外で飲ませろ! 酒とメシは他の酒場から買ってこい! 人が足りねぇ。ちょっと待ってろ──おーい! 道行く素敵なお年を召されたおねぇさまがた、金やっから臨時で酒場の従業員やって頂戴! OK? サンキュー! 愛してるぜ」


 あはははは、駄目だぜ店主よぉ。もっと飲まなきゃ。キミが狂わなきゃ、店も回んねぇぜ! あはははは。


 そういえば気になったことがあったんだった。俺はカチコミの際にくすねた魔増薬を酔っぱらった冒険者に見せる。


「お前ら、これ知ってる?」


「うわ、魔増薬じゃねぇか。おまえ、やってんの」


「俺のじゃねぇよ。カチコミかけた事務所からくすねた奴」


「冒険者ギルドじゃ全面禁止だぜ、それ」


「街では禁止じゃねぇの?」


「あー、やべぇ薬だけど、新しい薬だから取り締まる法律がないって衛兵隊は見逃してんなぁ」


 ふーん、そう。こりゃ、またお仕事が来そうだぜ。

 そんなことを思いながら酒を飲んでいると、混沌とした酒場には相応しくない美人メイドが姿を現した。確かラスティーナと同じ馬車に乗っていて、俺が腹をけった女だ。


「よう、お元気?」


「お嬢様から、貴方に仕事の依頼です」


「前払いなら受けるよ。ここの支払い足りなくなりそうだから、支払ってくれれば受ける」


 メイドは俺をゴミを見るような目で見てくる。

 嫌だなぁ、俺だって傷つくんだぜ。


「言われたとおりの仕事だけでよければ、ここの代金。俺に真面目に仕事してほしけりゃ、それにちょっと上乗せかな」


「条件をつけられる立場だと?」


「つけられるさ。使える駒が見つからねぇから、俺に声をかけたんだろ。犬なら犬らしく、自分の脳味噌で考えるんじゃなく、ご主人様にお伺いを立てて来いよ。それまで酒飲んで待っててやるからさ」


 ま、確実に俺に真面目な働きを要求するだろう。

 さて、代金の心配が完全になくなったことだし、俺ももっと飲もうかな。



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