ゼルティウスの剣
「ひでぇなぁ、いきなり何すんの」
俺は落ちた首を拾ってくっつけた。
そもそも俺らは尋常な生き物じゃないので普通の方法じゃ殺せないし、くっつけただけで元に戻る理不尽な存在だ。
「いきなり殺しにかかるとはひどいんじゃない、ゼティ」
俺は自分を斬った相手を見据える。
刃色の髪に紅いメッシュが入った中肉中背の目つきが刀のような男。
名前はゼルティウス。
邪神としての俺の使徒で使徒の中での序列は七位。剣魔なんて異名を持っているが、実際は剣と剣術オタクの陰キャ野郎だ。
「問答無用……とはいかんな。聞きたいことは山ほどある」
このカスは馬鹿だから話が通じないんだよなぁ。
俺は両手と両足に内力を限界まで込めた。同様にゼティも剣に内力を込めている。
首を落とされたのも油断していたからではない、純粋に反応しきれなかったからだ。それだけ剣の技量はずば抜けている。一瞬でも油断したら、次は達磨にされるだろう。
「鷹墜斬」
鷹を墜とすというわけ分からんことを言って身に着けた技。
魔剣技といっていい技はほぼ同時に三つの刃が襲い掛かってくる。
Fuck、内力を全身に込め迫りくる二つの刃を叩き落しながらバックステップで一太刀だけを躱すと、そこを狙い済ましたかのように──
「射突」
剣の柄頭を内力を込めた掌打で押し出し撃ちだす剣技。
俺は咄嗟に両腕を交差してガードを固め、刃を防ぐ。
衝撃で後ずさった俺は、守勢から攻勢へと転ずるために必殺の一撃を放つ。
対して突き放った剣を回収したゼティも必殺の構えを取る。
『砲牙・流星』
対するゼティも──
『閃牙・流星』
拳で放つ砲牙に対して、刃で放つ閃牙。名前が変わるだけで基本は同じ技。
そして遠距離に向けて放つ際には『流星』の名がつく。
放たれた二つの技はぶつかり合い相殺する。だが、俺たちの攻めはまだ終わらない。相殺されるのを見届けるよりも早く俺たちは相手に向かって突進し──
『砲牙』
『閃牙』
必殺の一撃を至近距離で相手に向かって叩き込んだ。
俺の拳は間合いが近すぎ最大限の威力が発揮できず、ゼティの剣も至近距離故振り抜けない。だが、お互いに技は入った。
即座に体内を内力でガード。体内に打ち込まれた内力が内臓をミンチに切り刻むのを防ぐ。同様にゼティも内力を体内に回し、内臓がペースト状になるのを防ぐ。
「っがは──」
「ぐふっ──」
お互い、少なくない量の血を口からぶちまけつつ、飛びのいて相手との距離をとる。
「聞きたいことがあるはずなのに、なんで斬り殺しにくんだよ」
「達磨にしなければ何も吐かんと思った」
「血反吐ぶちまけたから、俺も今は素直だぜ」
「俺もだ頭に上った血が静まった」
まぁ、そこで一息ついたようで二人はだらだらと話し始める。
「貴様、また勝手に俺を異世界に呼んだだろう」
剣の切っ先を突き付けながら尋問してくるゼティ。
そりゃあね、前科があるからね。疑いたくもなるよ。よく気分でゼティを適当な異世界に飛ばしてるからさ。でも、今回はマジで違うんだよね。
「いやいや、今回は俺も召喚された側なんだよ。でもって、この世界から出られないし、他の使徒も召喚できねぇんだって」
ゼティには自分の世界を滅ぼしたのち様々な世界を彷徨っている仇を討つという目的がある。俺の気まぐれで様々な世界に飛ばされたが未だに仇のヒントには辿りつけていない。だから、今回も俺の気まぐれと疑い、その疑いは晴れてなさそうだった。
「本当か?」
「マジで」
まだ納得してない様子だったが、ゼティはとりあえず剣を納めた。
あんまり頭が良くない奴だから扱いやすくて楽だぜ。
──と思った矢先、直剣での居合抜き。刃が俺の眼前を掠めるが俺は瞬き一つしなかった。
「邪な気を感じたぞ」
「だって邪神だし、邪なのが常なのさ」
遠くからシュレイドたちの声が聞こえてきた。
俺の無事を確認しに来たんだろう。
「適当に口裏あわせてね」
「努力する」
別にむっつり黙ってりゃいいんだよ。
昔馴染みとか適当に俺がごまかすからよ。
さて、思いもがけず身内に遭遇。
これが吉と出るか凶とでるか。
まぁ、俺としては俺の使徒が偶然、同じ世界にいたってところに作為を感じるんだけどね。
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