俺ならできる世にも簡単なドラゴン狩り
つまんね、つまんね、つまんね。
魔物はいる。いるけど、オークジェネラルをぶち殺した。俺たちに恐れをなして、魔物が逃げていく。
「どうすんの、これ」
「オークジェネラルだけでも十分な気もするけれど……」
「豚の頭を持って行って自慢げに戦果を語るのなんか嫌だぜ」
それなら、養豚所で豚を一匹さらってきたって変わんねぇだろ。
ダサいのは嫌だぜ、俺はさ。
「他にこの森に凶悪な魔物いないの?」
斥候役がボソボソと
「ダスクフォックス、エルダートレント、噂だけならアースドラゴンもいる」
いいね、ドラゴン。キツネは微妙。トレントは俺と相性が良くないからパス。
「ドラゴン狙いで行こうか」
──と言った瞬間、妙な気配が辺りを覆う。
幻術だな。話に出ていたダスクフォックスってやつか?
キツネは惑わすってよくあるしな。
「全員伏せて、なにもすんな」
俺の命令に従ってシュレイドたちは言われたとおりに一斉に動く。
俺は気配の方に向かって歩き出すとそこは一面に彼岸花が咲き乱れる広場だった。
その中心に堂々と巨大なキツネが座している。
それに対して、俺は一言──
「俺は人間以外が使った幻術は効かないから」
だから、完全に無駄。俺の言葉を聞いて気付いたようだが、もう遅い。
俺は駆け出し懐に踏み込んでいた。
──サイズがでかい。普通に殴ったんじゃ効きが甘いな。となれば──
俺はキツネの胴体を内力を込めて殴る。ただのパンチじゃない一撃必殺の技だ。
直後、キツネは巨大な体をのたうち回らせながら、口からペースト状になった内臓を吐き出して死んだ。
さて──後始末があるな。
俺は近くの木のうろなどを探してみると、そこには子ぎつねがいた。
もふもふとして可愛いっていうのが世間の評価なんだろうけど、俺は躊躇なく蹴っ飛ばして殺した。
だって、俺、動物嫌いだもん。好きな動物は人間だけ。それ以外は利用価値があるのは生きてていいよって感じ、牛、羊、豚、鶏とか。
「終わったよー」
声をかけるとシュレイドたちがやってくる。
「うわ、ダスクフォックスまで狩った」
割と引いているがそこまで俺に恐怖は感じていない様子だった。
話しているうちに俺が人類に意地悪はするけど、致命的な暴力に及ばないことは分かってくれたようだ。
「そろそろ夕方ですし、野営の準備をしませんか」
俺は不眠不休で動けるけどシュレイドたちはそうじゃないからね。
ほとんど魔物退治に絡んでないシュレイドたちはせめてこれくらいはという気持ちでてきぱきと準備をしてくれたので、俺は座っているだけでよかった。
「夕飯は魔物の肉のシチューですけどいいですか」
OKと合図すると料理もてきぱきと進めてくれる。
前に俺に火の玉をぶつけてきた魔術師の女の子も文句は言いたそうだが、俺にエールを持ってきてくれた。水よりもエールの方が衛生的ってのはあるしね。
「どうもね」
とお礼を言うと、プイっとその場を去ってしまう。
そういうのも人間の可愛いところなんだよね。
魔物にこういう機微を求めるのは無理だから、俺は魔物が嫌い。
つーか、嫌いなものしかねーわ、その中で人間だけは唯一好き。
だって、無限の可能性があるし、種としてぶっ壊れてるからね。そういう色んな要素を含めて、俺は人間が好きなのさ。
「できました」
シチューはごった煮って感じだが悪くない。仲のいい奴がこれを出して来たら5分くらい嫌味を言うけど、そこまでの仲じゃないので美味しいってことにしておこう。
飯を食い終わったら、なんか流れでシュレイドが内力の操法を身に着けたいって言ったから見てやった。魔法剣士だから覚えは早い方だろう。
「闘気と魔力を別のものと考えてるうちは一生身につかねぇよ」
「闘気を出すときに、魔力も出す。まずはその練習」
「出せるようになったら、腹の中で混ぜる感じ、色分けしてるイメージを消せ。体の中から出てくるなら全部同じだ」
とりあえずアドバイスして寝た。まぁ、寝なくてもいいんだけど、人間らしい生活をしないと感覚がどんどん人間離れしてくるからね。
──さて翌日
「じゃあ、ドラゴン退治をしようか」
「すでにギルドマスターの要求以上の評価だと思いますが」
「だめだねぇ、そんなんじゃ上にいけないよ。予想以上の評価を常に出す。これがトップに立つ奴の生き方なのさ」
無敵とも言っていい、俺の力に惹かれたこいつらはいいなりに近い。
でも、俺もドラゴンをわざわざ探したいかっていうと、なんか面倒くさい。
あ、マズイ。飽きてきた。だって、どいつもゲロ弱いんだもん。みんなワンパンで沈むのに気合なんか入れられるかっての。
「とりあえず、もう少し森の奥へ」
シュレイドはそういうけど、そろそろ森の端だぞ。
ほとんどの魔物が俺をビビって出てこない。生存欲求が強すぎるのがクソ。
功名心とか一旗揚げてやろうぜ気概が魔物にはねぇんだよなぁ。
「もう帰ってもよくね」
森歩きにウンザリしてきた俺がシュレイドたちに提案する。
めぼしい魔物は狩ったし、ギルマスも文句は言わんだろう。
そう思った矢先だった──
「シュレイド、遅い奴を引っ張ってどっか行け」
嫌なタイミングだった。俺たちが集まった時を狙って真上から巨大な影が降ってきた。
「何が」
「どうでもいい、敵だけ確認して失せろ」
シュレイドたち邪魔だなぁ。俺一人なら降ってきた段階で何とでもできたのに。
「あ、アースドラゴン!?」
「いいから、いけ。そのまま帰っていいぞ」
ドラゴンはなぁブレスもあるし、魔術を使う奴もいるし、雑魚の面倒を見ながらだと大変だったりするんだよなぁ。
「なに、縄張りを荒らされて怒ったの? せこい奴だなぁ」
俺は巨体に緑色の鱗をしたドラゴンに尋ねる。
翼は小さいがドラゴンの翼はその力で飛ぶわけではないので油断はできない。
……はっ、なにが油断はできねぇだ。秒殺だこんなデカトカゲ。
ドラゴンが首を振り上げブレスを吐く構えを取る。もうおしまいだ──お前がな。
俺は踏み込み内力を込めた拳を叩き込んだ。
『砲牙』
一撃必殺の打撃。
内力を込めた拳を相手の体に叩き込むと同時に体内に内力の弾丸を打ち込む。その内力は当然、破壊力を持っており、そのうえで相手の体内で無限に跳弾をする。するとどうなるか、内力の弾が相手の体内をグチャグチャにかき回し、最終的にはペースト状になった内臓を口から吐くという始末だ。
まぁ、つまり俺相手に一発でもパンチが当たる状況を作ったら終わりってこと。
アースドラゴンとかいう大層な名前のドラゴンも口から内臓全てが混ざったペーストを吐いて死に腐った。
「弱すぎィ、全て内臓を内力でガードしなきゃだめだぜ。そんなこともできないゴミカスとかウンザリぃ」
危険な魔物なのにこんなものかと俺は一仕事終えた気分になっていた。
それでも油断はない。だから、これは正当な相手の実力だ。認めるしかない、俺のこんな結末も──
「殺ったぞ、アスラカーズ」
聞き覚えのある声と同時に俺の首が刎ねとばされた──




